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一(にのまえ)

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「ごめんなさい」


 彼女に私の言葉は届かない。感謝も、賛美も、愛の言葉も。伝えても受け入れて貰えないのか、それとも小っ恥ずかしいのか。清潔感のある部屋で、一定数の人と関わって、来る人全てが彼女を支えている。私も、その中の一人であると同時に多くの言葉を彼女に送った。


 そんな数年間の最中で、彼女に言葉は届くと直向きに信じていた私であったが、たった数日前。


 彼女に裏切られた。


 彼女に言葉が届いていたのか、それを確認する術を失ったのだ。残酷な話だ、私の数年間を精算するのに足り得る言葉が、いつか届くと期待していたのに。


 あれから数年後、あの時以来使っていなかった携帯を解約しようと思った。充電しながら携帯の電源を入れたその時、振動が鼓動を早めた。


 来るはずのない、届くはずの無い、諦めていた、そんな彼女から一通の文が届く。


 一通、それで想像出来る文量は遥かに超えた彼女の声は、一文を何回も何十回もなぞって読んだ。

 そして、私は、誰もいない広い空間で一人呟く。


「愛してます」

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