第11話 否定
(今までのあらすじ)
「 私は鈴木桃子。建築学部の建築工学科。19歳。父が小さい頃に病気で亡くなり、タイムマシンを作って過去へタイムスリップして、父を救(すく)うことができないか考えている。」
第11話 否定
母とのひさしぶりの外食。私は母と夕食を食べている。話は私の予想外の話になった。母がとんでもないことを言い出したのだった。私は思わず、素直(すなお)に思っていることを言ってしまった。これは子供っぽい意見だと自分でもわかっている。母の気持ちも本当はそこまでわからなくもない。それでも言ってしまったのだった。
「私のお父さんは1人だけだもん。お父さんが亡くなったからって、新しい人と付き合って結婚しようとしないで!」
母は私が言うことをあらかじめ予想していたのかそこまで表情を変えずに言った。
「そんなこと言わないで。優しい人よ。きっとあなたとも仲良くなれるわ。」
「そうかもしれないけど・・・。私は嫌だよ。急に新しいお父さんがあらわれて、その人と仲良くなんて絶対できない・・・。」
今日の私はどうかしていたのかもしれない。普段、こんな自分勝手なことばかり言うことはない人だと自分では思っている。普段は、もっと冷静で大人っぽい考えをもっている人だ。でも、この日の私はなぜか感情的になっていて、母の言うことを否定することしかできなかった。「亡くなった父さんをどうにかして生き返らせることができるかもしれない」とかそんな妄想をしていたからかもしれない。母はとっくにそんなことはできないとあきらめていて、気持ちの切り替えもとっくにできていたのかもしれない。母から告白して付き合い始めたのか相手から言われて付き合い始めたのか知らないけど、母はとっくに前に進もうとしている。
私はまだお父さんが亡くなったという事実を受け止められていないのかもしれない。私はお父さんが亡くなった地点から一歩も前に進めていない。
私と母のひさしぶりの外食はこれで終わった。母はそれ以上、その話は何も言わなかった。私が何と言おうと母の意思は既に決まっていたようだ。私はどうしたら良いのかわからない。父をタイムマシンか何かを使って、生き返らせるから、それまで結婚するのは待ってほしいとか、そんなむちゃくちゃなことは当然言えない。私も頭ではそんなこと、不可能だとわかっていたからだ。
(続く)
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