星の降る丘で、また会おう。

Mary.Sue

東雲奈月の章 -起-

-1-

  東雲奈月はどこにでも居るような、普通の女の子だった。

  人口が五万人を割って久しい神内市にある、一軒家で両親と一緒に暮らしている。

  スマートフォンのアラーム音が、そんな彼女の意識を夢の世界から現実へと呼び戻した。

  画面を開いてみると、それは確かに、昨夜自分がセットした時間である。

  高校三年生についこの間進級したと思えば、時間はあっという間に過ぎ去り六月の半ばにまでなっていた。

  春の陽気など、既にどこかに消え、暑ささえ感じる頃合いだ。

  カーテンの間から差す光が、今日もまた一段と暑くなることを教えてくれているように感じた。

  そんな季節であるから、寝ている間に汗が滲んでしまった。今すぐにでも着替えたい、そんな気分ではあるのだが。


「どんな季節でも、眠気には勝てないんだよね。」


  そう言ってアラームを解除ではなく、スヌーズに切り替えようとした時である。


「奈月ー、起きる時間でしょ、遅刻する前に起きなさい」


  母親が一階から大きな声で呼ぶ声が聞こえたのだ。

  こうなってしまっては、いくら眠気に負けそうになっていたとしても起きていかざるを得ない。母親に逆らえる子どもは、きっとごく少数だけなのだ。

  着替えることもせず、寝間着のまま一階へと降りる。

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