鈍色と淡色

白櫻詩子

浮かぶその人

「雨の音を一緒に聞きたいです。」


たった一言、深夜のsnsに投稿した。我ながら25歳の独身女の痛々しい投稿だとは思うが、本当にそう思ってしまったのだ。


6月に入り、気づけば雨が3日続いているが、こんなに不意に寂しくなったのは久しぶりで、居もしない恋人との穏やかな日を思い浮かべてしまった。


あの人はもう眠っているだろうか。心の片隅に、なるべく意識の届かない角の方に仕舞い込んであるあの人は、雨の日は出歩かずに家で読書を楽しむような人なのだ。


こんな痛々しい独り言を、不特定多数の大海原にぽちゃりと投げ込んだ。


しかし、確かに狙い通りに、あの人が見つめる先に小石は落ちたらしい。私のもとに届いた通知はその確固たる証拠だ。


同じ音を同じ時に聞いている。それがただ嬉しい。

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