天の王〈そらのおう〉
エマンセ
プロローグ
ザァー!!!
ノイズのようになり続ける雨音
「止まない雨はない、なんて嘘だよね、、、」
異能を持つ者が弱者を蹂躙する世界。雨の王がこの国を支配し、雨を降らせて40年。降り続ける雨は作物を腐らせ、洪水を起こし、人々の生活を脅かしていた
ーーー
ここは山奥にある、小さな村。
「お母さーん!少し出かけてくるね!」
「日が暮れるまでには帰ってくるんだよ」
「うん!」
雨以外の天気を知らない16歳の少女は雨が嫌いだった。降り続ける雨により、緩くなった地盤が起こした土砂崩れに父親が巻き込まれ亡くしている。それでも元気に振る舞うのは、母親に心配をかけない為である
ーーー
「王都には降ってないんだよね、こんな雨。止まない雨はない、なんて嘘だよね、、、」
傘をさし、とぼとぼ歩く少女。1人ぶつぶつ呟いている時くらいしか雨の音を気にしなくていい。そんな散歩が好きだった
「!!!、誰か倒れてる?!」
駆け寄る少女。山奥にあるこの村に人が来るなんて珍しい事で、しかもそれが倒れている。心の優しい少女が放って置けるわけもなかった
ずいぶんぐったりとした男の人だった。年は同じくらいだろうか、痩せたその体は雨に濡れ、体温もかなり下がっている
「大丈夫ですか!!!」
少女は男の人をおぶり、雨風のしのげる近くの洞穴まで運んだ。山での生活は力のいる事が多い。痩せた男を運ぶくらいなんともなかった
ーーー
「う、うぅ、、、」
「目を覚めしましたか?すぐ温かい飲み物用意しますね!」
男性の目に映るのは、顔立ちの綺麗な少女と焚き火。
「君がここまで運んでくれたのか?綺麗だな、、、」
「き、綺麗なんて!!!旅の人は恥ずかしいことを言いますね」
頬を赤らめた少女はにやける顔を隠しながら言う。
「村の名物のお茶を入れました。冷めないうちにどうぞ」
「ありがとう」
ーーー
温かいお茶を飲み少し元気になったようだ。この村では珍しい来客に質問をしていく事にした
「どこから来たの?」
「こことそんなに変わらない山奥から出てきた。それにしても、すごい雨だな。降り続いてるのか?」
少女は驚きが隠せないからだ。雨が降り続いていることを知らないということは、この人は違う国から来た事になる
「旅の人は違う国から来たの?!」
「旅の人じゃ呼びにくいだろう、俺はソラ。どうだろうよく覚えてないんだよな、山から出てきたのは覚えてるだけど、なんでここにいるかとかもよく覚えてない」
「記憶喪失ってこと!それも問題だけど、どうやってこの国に入ったんだろう、、、」
「うん?どういうこと?」
「この国は雨の王っていう、酷い王様に支配されてて、、、」
ーーー
少女はこの国が雨の王に支配されていること。降り続ける雨のこと。父親のこと、全てを話した
「そうか、そんな酷い奴がいるのか」
「うん、そうなの。雨の王はこの国を取り囲むように見えない壁を作って、中から出ることも外から入ることもできないようにしてるんだけど、ソラは入ってきたんだよね違う国から」
「不思議なこともあるもんだな」
「めっちゃ他人事!」
鋭いツッコミを入れる少女。
「サーン!どこにいるのー!」
「あ、お母さんだ。日も暮れてきたし、そろそろ行かなきゃ。ソラもおいで、お母さん優しいから今日は泊めてくれると思うよ!」
「急展開だな」
「めっちゃ他人事!」
ーーー
この出会いが、止まない雨を止ませる2人の始まりである
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