第6場 汝の傍に在わす、汝が下に坐す
何が自分の心をこれほどまでに熱くするのか。
彼は、その答えを、よく知っていた。ただ、それをどう進めていくのかに、まだ迷いがある。
彼女に出逢ったのは、偶然だったのだろうか?
世紀の悲劇の舞台に現れたのは、ジューリエットか。はたまた、時と国を越えて現れた、オフェリアか、コーデリアか?
この三人は、皆、愛する者と永遠の幸福を得ることが出来なかった。では、彼女は?
彼女自身は、どんな愛を掴むのだろう。
彼が彼女の声を聴いたとき。その頭には懐かしさしか浮かばなかった。けれども、すべての言葉をこの瞬間に凝縮は出来ない。その結果、身の置きざまに困って、逃げようとした。
彼は困惑したのだ。
あまりにも深い、懐旧の念に。
説明の出来ない、感情の発起に。
ところが、逃げようとした彼は、彼女に完全に捕まってしまったのだった。
神の
そう。
そこに
運命に引きずられ、二人はあの日、あの場所で、出逢ったのかもしれない。
しかし、彼には、そんなことはどうでもよかった。
彼が彼女を愛するためにか。それとも、彼女が彼を愛するためにか。
二人は愛し合うために、ただ、それだけのために、あの日、あの場所に呼び寄せられたというのか。
目が合った瞬間に、彼は悟った。
──この
運命に導かれて二人が出逢ったのは、天空の恋人たちの庇護を受けている日。地上の恋人たちが守護する場所だった。
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