第6話 皇帝暗殺指令 6

 ヤハゥエとルシフェルがルシファーと戦っている間、フェイゲンバウムはアゼザルの軍勢を次々と突き殺していった。

 その強さは正に一騎当千の猛者。

 そして、それを見ていたアゼザルはその姿に見覚えがあった。

 今は亡きルシフェルの侍女だった、レインの面影が、そして皇帝ルシフェルの面影があった。

 レインはヤハゥエの今は亡き妻だった。

 二人が結婚した時、既に彼女はそのお腹にルシフェルとの子を身ごもっていた。

 アゼザルが一歩前に出て、剣を納めた。

 そしてフェイゲンバウムに言う。


「皆の者、戦闘を中止せよ! そこの者、お前の師の妻の名は?」


「???レインさまだが」


「間違いない。やはりそうか。あなたは自分が何をしているのかわかっているのか? ヤハゥエが妻にした女レインはかつてのルシフェルの侍女。お前はヤハゥエに利用されているのだ!」


「何を……バカな……でたらめを言うな!」


 激高してレイピアをアゼザルに向けるフェイゲンバウムを見て、アゼザルは剣を鞘ごと捨てた。


「ヤハゥエに聞いてみるがよい。だが、ハハルビコフ帝国の命運これまで。おそらく陛下は討ち取られていよう。わたしはあなたに降伏する」


 衝撃の事実を突きつけられたフェイゲンバウムは荒ぶり、そのままアゼザルの心臓をレイピアで突いた。


「フェイゲンバウム殿下、皇帝位を引き継ぎ……なされ……あなたが……」


 そう言うとアゼザルはこと切れた。

 フェイゲンバウムの心臓が激しさを増してビートを刻み、フェイゲンバウムは激しく動揺して狂乱しながら、自分に襲い掛かるでもないアゼザル配下の兵も含め、虐殺していった。


 ガブリエルは親衛隊を討ち取りながら、「ルシフェル既に死せり! 降伏せよ! 最早ハハルビコフ帝国に勝ち目なし! 降伏するなら命までは取らぬ!」と降伏を促して言った。


 次々と抵抗を辞める帝国兵。

 ハハルビコフ中央から遠く、大してハハルビコフ帝国に忠誠心のないイエルシャルム公国軍は、次々と降伏を受け入れだす。


 激しくサタネルと争っていたぺイモンの元にもルシフェル戦死の一報が届き、ぺイモンは涙を流しながらサタネルに言った。


「皇帝陛下が……我が命運も尽きた。殺せ!」


そう言って武装解除したぺイモンはその場に泣き崩れ落ちた。

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