11話 ミルヴァの冒険ギルド
冒険者ギルドに入ってすぐ、正面には受付嬢がいるカウンターがあり、左手には依頼掲示板、右手には地図や探索に必要な各種の道具をを売っている売店がある。
「ようこそ冒険者ギルドへ。ご用件は何ですか?」
「ぼーけんしゃとーろくをおねがいします…………」
「だ、大丈夫ですか……?」
「はーい……」
まずい、落ち込みすぎて知性が消えてた。受付嬢さんにまで心配されてしまったじゃないか。
僕は気合を入れ直し、慌ててキメ顔をつくる。
「それでは、認定試験を受けてもらいますね」
「にんていしけん?」
首をかしげるノルン。
「そう、冒険者になるためには簡単な試験を受ける必要があるんだ」
「あれれ、詳しいんですね。その通り、あなたたちはこれからこの近くにある迷宮『不帰の洞窟』へ行ってもらい、そこで冒険者用ペンダントの材料である、銅鉱石を持ち帰ってきて欲しいんです。銅鉱石の納入をもって、晴れてあなたたちは冒険者として認められます」
受付嬢の説明を聞き、試験の概要を理解した僕とノルン。
「それでは、頑張ってください」
こうして、僕にとっては二回目の冒険者になるための試験が始まった。
「でも……何ももらえなかったよ? この後、どうするの?」
「とりあえず、あっちにある道具やでミルヴァ周辺の地図と、『不帰の洞窟』一階層の地図を買って、ノルンの武器を選んでから出発かな」
基本的に試験に関しては目的地の名前と目的の資材の名前以外はノーヒントである。そう、出発する前から僕たちは試されているのだ。
といっても、近くにいる気の良さそうな冒険者に質問すれば、いろいろ話してくれるだろうけど。僕はそれなりに冒険者としての経験もあるので、そんなことをする必要もない。
道具屋で地図を買い揃え、ついでにランタンと薬草も買って冒険者ギルドを後にする。
後はノルンの武器だけだ。
とりあえず、ギルドに隣接した武器屋へ入ってみる。
「いらっしゃい! …………ガキか?」
「ハーフリング!」
「おっと、こりゃすまねえ」
出迎えてくれたのは、狼の獣人っぽい店主。二足歩行である点を除けばほとんど狼だ。
「まったく、僕はそんなにガキっぽい?」
「エルフのガキと人間の嬢ちゃんに見えるな」
「ノルンはドワーフ!」
「…………すまねえ」
ちょっと無礼だけど、素直に謝るところからして悪い人ではなさそうだ。僕はさっさと本題に入ることにする。
「そんなことより、ノルンが使えそうな武器を買いたいんだけど」
「ドワーフの嬢ちゃんか? そうだな、いくらドワーフは力が強いとはいえ嬢ちゃんだからなぁ……」
悩む店主をよそに、ノルンは近くにあった
「…………ロロ、これは?」
「おいおい、嘘だろ嬢ちゃん……俺でも両手でやっと持ち上がる代物だぜ……?」
舌を出して目を見開く店主。なかなかのあほ面だ。少し可愛い。
「重くないの……?」
「うん、平気。持ちやすい」
「そ、そいつは鉱石の採掘もできちまう便利な
店主の言葉で、僕はうっかり採掘用のツルハシを買い忘れていたことに気が付く。
それなら、これを買っておいた方が良いかな。本人も持ちやすいみたいだし……。
「わかった。これにするよ」
「そ、そうかい。二万ドロンだが、払えるか?」
ノルン二人分……。
僕は複雑な気持ちになりながら、お金を支払った。
「また来てくれよな!」
いよいよ準備が整ったので、武器屋を後にする。
なんだかやたらと通行人の視線を感じるんだけど……。
やっぱりノルンが持ってる武器のせいかな……。
まあ、変な奴に絡まれることはなくなりそうだし、これはこれでいっか。
「それじゃあ、出発しようかノルン」
こうして僕たちはミルヴァを後にして、迷宮へ向かって歩き始めた。かなり近場にあるので、到着までにそれほど時間はかからないだろう。
「ねえ、ロロ?」
「どうしたのノルン」
「ふきの洞窟ってどういう意味なの?」
「ああ。まあ、意味としては二度と帰ってこないってところかな。別名は帰らずの洞窟。洞窟の中に入った人の生還率がとても低かったからこの名がつけられたんだ」
「ふーん……」
納得した様子のノルンは、少し間をおいてから言葉の意味を理解し叫んだ。
「いきなりそんな場所に行くの!?」
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