EP00-7
眠りについていた意識が、何の前触れもなく強制的に引き起こされた。
「な、なに?……ご……ぐふぇ……」
カプセル内の水が抜かれ、この世界で生まれて初めて空気が肺に流れ込んでくる。
肺から吐き出しきれなかった水分にえづき、液体の中で浮かんでいた体はカプセルの下部に叩きつけられる。今まで使われていなかった体の全ての神経が強制的に叩き起こされて悲鳴を上げている。全身を刺すようで殴られたかのような、筆舌に尽くしがたい痛みが襲ってくる。
だが、そこから更に状況は悪化する。
ガラスケースの上部から二つの機械が降りてきて、そこから金属に爪を立てて勢いよく引っかいた時にする音が鳴り響く。
余りの不快音に誰でも耳を塞ぐであろう音が、耳元などと生易しいものではなく称したが体のすべて。五感を認識する為の重要な器官、脳に直接響いているのだと理解する。
(これぇ……内容が……わ、分からないけど……何かを強制しようとしてる!?)
言葉ではなく、脳に直接干渉してくる『何か』が現状把握能力のすべてを奪おうとしてくる。
自分としては抗っているつもりでも抗えているのか自信が持てない。『俺』という自意識すら確固たるものに出来てない自分にはあまりにも強すぎる干渉だった。
自分が意識を保っているのか、気絶しているのか。
それとも、交互して襲ってくる覚醒と気絶から、自己防衛で一定の感覚を遮断しているのか。わからない。何もわからない。
あ……あぁ、ダメだ。これ以上は頭が割れる!!
痛い!
いたいイタイ!
あぁぁぁぁぁぁ、イタイイタイイタイイタイイタイ!!!
その後のことで『俺』が覚えていることは非常に少ない。
もう一度、肉体に物理的な衝撃が襲い、ガラスケースの中から外へと叩きだされたのだと気づく。
ダメージから立ち直る暇など一切なく、視界の全て赤く染まり、目に映る全てを排除しないと気が済まない衝動に駆られ、衝動のままに動いていた。自分の手が侵入してきたと思われる何体ものロボットのようなものを破壊し、その奥にいた幾多の人間を引き裂いた感触が今も生々しい。
今になって冷静に考えると、実験体を捨てる覚悟で攻撃行動に使ったのだろう。施設が敵対組織に見つかり攻め込まれたので、証拠隠滅も兼ねて襲撃者達にけしかけたといったあたりだと思う。
そして、最後は立派な蒼の鎧に半透明の刃を持った緑色の髪の男性、それに襲い掛かった所で意識が途絶えた。
その青年の瞳が印象的だった。
先に突入して『俺』に仲間を殺されたことで怒りに染まった瞳……ではなく、何か可哀そうなものを見る瞳をしてこちらを見つめていた。
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