残り45日
「次は空門アゲハ……よくやったな。今回は上出来だ」
週が明けて運命のジャッジメント……テスト返しの日がやってきた。今回は夏休み明けのテストということで、科目の量は少ない。よって返ってくるまでの日数も短いわけだ。このテスト返しの日ほどドキドキする学校行事は無いんじゃないかってくらいだ。俺は普段、たいして勉強していないので結果にドキドキすることもなく、この日を迎えている。しかし今回はそれなりに勉強しているので、いつもよりソワソワしていた。遠足前の子供が夜を寝られない現象が起きている状態だ。
そんな状態で名前が呼ばれ、心臓がハネながら用紙を受け取った後、満点ではないが大きな失敗をしていたわけでなかったので安堵と笑顔が訪れた。
「まじか、史上最高得点じゃないか」
「おお、凄いじゃん、アゲハ」
その俺の顔を見て結果が良いと察した健人が、後ろの席から俺の用紙を覗き込んで褒めた。別に人に見られて恥ずかしい点数でもないし、そもそも気にするタイプでもないから素直に用紙を見せた。
「まぁな。今回は健人に勝てたんじゃないか?」
ちょっと調子にのって後ろを振り返ってみたが、そこで目にしたのは、高得点を叩き出している用紙をドヤ顔で持って口角を上げている健人が待っていた。
「残念でした、僕に勝つにはもう少し努力が必要だね」
くそッ、なんだコイツ。完璧人間すぎてキレそうだ。
とはいえ、この点数は素直し嬉しかった。これも全て協力してくれた皆んなの……そして花蓮のお陰だ。感謝のお礼でもいいたいが、まずは勝負の結果を見てからだ。
そんな花蓮は一体、テストの点数はどうだったのだろうと気になった。先に男子から返され、後から女子が呼ばれるので、テスト用紙を貰ったときの反応を見ておこう。
「次、柏木花蓮さん。……素晴らしい。次回も頑張ってくれたまえ」
「はい、ありがとうございます」と棒読みで受け取る。おそらく凄い点数だろうが、感情は無い。まるで貰い慣れたかのような素振りだ。もうあのレベルになったら満点だろうが嬉しいと思わないのか。
すると何かを思い出したかのように辺りを見渡し、俺と目が合うと静かに口を開いた。
「アゲハ、今回は私の勝ちね。満点だもの」
そう言って100点とかかれた用紙を上空でヒラヒラさせる。もしかしたらと期待していたが……俺が甘かったようだ。なんだこれ、めっちゃ悔しい……っ!!
「どうやら、また負けたみたいだね、アゲハ」
「たぶんな。でもこの調子で10月下旬の中間テストでは追い抜いてやるさ」
そういえば……勝負して負けたら何をするんだっけか。勝ち負けに拘りすぎて報酬のことを忘れている。
「でもなんだ、嫌な予感しかしねぇ」
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