ゴミ捨て場

エリー.ファー

ゴミ捨て場

 私はそこに住んでいた。

 自分の時間すら捨てられていくような感覚の中を生きていた。いつもそこは夜であり日の光などない。たまに、そこには月光がさしこむものでその下に生えてくる花たちを集めては、冠を作って遊んでいた。

 ここには何もかもない。

 しかし。

 何もかもある。

 すべては考えようだ。

 自分の立場を幸せであるとか、不幸せであるとかそのようなもので考えるのではなく、ゴミ捨て場という場所にいるだけだと考える。そうすればそこに自分の感情を持ち込むことは一切しなくてもよい。

 人によるのかもしれない。

 そんなものは。

 私は仲間を持っていない、当然、ライバルもいない。

 生まれたからこのゴミ捨て場で十何年間と生きてきた。このように正確な数字を出すことができないのは、私が興味を持っていないからだ。ここにあるもののすべてがそうだが、時間から置き去りにされている。

 もちろん、時間が止まっているとか、戻っているとか、進んでいるとか、ファンタジー的なことを話している訳ではない。

 とても単純なことだ。

 もう、ここにあるものたちに時間という概念が必要ないのである。

 誰かの捨てた言葉もあるし、誰かになろうとした生き物の死骸もある。それらは誰にも期待されておらず、必要ともされていない。

 だからこそ、このゴミ捨て場にずっとい続けているし、どこにも行けない。

 時間にすら見捨てられても、ここにいる資格を持っている。

 昔、生きた人間。

 つまりはまだゴミ捨て場に来るべきではない人間が来たことがあった。

 私はそれと二三話した訳だが、残念なことに直ぐに亡くなってしまった。しかも不思議なことに、ただの死体としてこのゴミ捨て場で残り続けることもなく、月光に包まれて蒸発したのである。

 あれは不思議な光景だった。

 まるで天に召されるような感じであった。

 まぁ、別に天に召されるという現象を何度か見てきたわけでもないので、この表現は余り正確ではないのだが。

 とにかく。

 私はそのようにして消えていくものに出会った。

 それから何度も何度もそのことについて考える様になった。何せ、いつか自分もあのようになる可能性だってある訳なのだ。

 苦痛というものはあるのか。

 気持ちよいのか。

 それとも。

 感覚というものでとらえられるものなのか。

 はたまた、私のただの幻想だったのか。

 最早何一つ分からない。

 しかし、私はいつかああなる可能性を秘めていることに少しばかり嬉しさのようなものを持っている。

 まだ、私は変化できるのだ、ということだ。

 私の人生にはまだ何かが起きるのだ。

 ある時、遠くから声が聞こえた。

 初めてのことだった。

「羨ましいです。」

 そう聞こえた。

 私は返事をする。

「何故、羨ましいと思うのですか。」

「心からそこにある可能性を感じています。だって、別にここもあそこもどこだって、ただのゴミ捨て場ですよ。でも、貴方だけはそこにいることを全く感じさせない。どこか遠くにいるような気さえする。あっちに行きたいと思っていたのに、気が付けばそのあっちにいて、自分が求めていた場所に到着したのに納得いかない。その繰り返しなのですから。」

 私は少し考えたが、その発言の内容の真意が分からなかった。

 ただ一つ言えることは、この場所にはすべてがあって、しかもそれは私の才能によって磨かれる未来の導ということである。

 そして。

 そんなことはどこにいたところで同じということも知っていたし。

 どこもかしこもゴミ捨て場であることを知っていた。

「最初から、生まれた時から、人としての出来が違かったという事ではありませんか。」

 どこの誰かもわからない相手からの返事はない。

 嫉妬していることはよく分かった。


 私はそのすぐ後にゴミ捨て場から姿を消した。

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