道具屋の看板娘だけど聖女候補助けました

うにどん

本編

 世界は世界樹によって支えられていると言われている異世界・トネリコ。


 この世界では世界樹は絶対的神として君臨し、世界樹と唯一交信出来る存在である聖女を中心とした政治を展開していた。

 もし聖女が「世継ぎは彼にしろ」と言われれば、本当にその通りになる。聖女の言葉は世界樹の言葉と見なされ、例え、世継ぎが駄目人間でもその通りにするしかないのだ。それほどまでにこの世界の聖女の影響力は凄まじい。

 昨今、その聖女の跡継ぎで騒いでる真っ最中だ。

 聖女護衛騎士団が推奨するのは聖女が養女として育てていた孤児の少女、貴族側が推奨するのは名家中の名家出身のご令嬢。

 特に亡き王の跡継ぎを巡り王都・ユグラシドルでは聖女の跡継ぎ問題は白熱していた。

 亡き王の妹君の息子、甥を推奨する王都護衛騎士団と亡き王の愛人との間に生まれた少年を推奨する貴族の間で争いが起きるのは必然と言うべきか。

 

――聖女が自分達が推奨する候補者を世継ぎと確定させれば・・・・・・。


 当然、流れでこうなるのも必然で。

 騎士団は騎士団と貴族は貴族と手を組みお互いの候補者を支援という形で今でも火花を散らしている。


 でも、そんな事は民衆には余り関係ない事だったりする。

 新たな王が独裁をしなければの話だが。

 バチバチと火花を散らすのは王宮だけで街は平和そのもの。

 皆、日々を過ごしている。


「さてと今日も張り切って素材探ししますか!!」

「にゃ~」


 森の中、道具屋で働く少女・スズネとその相棒のビックキャット・タマもそんな平和を謳歌する平民である。

 彼女は働く道具屋に並ぶ傷薬の為に素材を集めにやってきた。

 手際よく薬草やキノコをタマに乗せている籠に入れていく。

 籠がいっぱいになったのを見てスズネは充実感から微笑み、タマを撫でる。

 タマの毛並みは毎朝ブラッシングしてるからいつもフワフワだ。


 もうすぐ昼の鐘が鳴るかなと穏やかな時間を過ごすスズネの耳に。


「きゃあ!!」


 少女と思わしき声が入った。


「タマ、さっきの聞いた?」

「にゃ」

「…………行ってみようか」


 タマと共に声がした方へと向かい、茂みに隠れ様子を伺う。

 其処に居たのは金髪の美しい少女と騎士と思われる男二人だった。


「わ、私をどうするつもりですか?」


 金髪の少女は怯えきった目で男達を見る。

 男達はそんな少女をどこか馬鹿にした目で見て、嘲笑う。


「そのつもりですが?」

「貴女が居ると困る人が居るのです。だから、死んでもらいます」

「そんな…………」


 絶望する少女に男の一人は剣を向ける。


「苦しまずに殺してあげます」


 そう言って剣を振り上げられ少女は諦めて目をつむる。

  

「ガアッ‼️」


 剣が少女に届く前に男が吹っ飛ばされた。


 少女が何事かと目を開けると一人の少女――スズネが剣を向けていた男を拳一つで沈めていた。


「どんな理由でこの子を殺そうとしてるか解らないけど人殺しはよくないと思うな~。

悪人以外はね」

「キサマッ‼️」


 もう一人がスズネに剣を向けるが其れをひょいとかわすが男は其れを見越していたのか今度は蹴りを入れるが、それをスズネは腕でガードして受け止めた。


「なっ‼️」

「この腕の防具は何と防御する時に自動的に魔法防御壁が発動する優れもの‼️

今ならセールでお安くなってますよ♪」

「ふざけるな‼️‼️ 貴様は何者だ⁉️」

「私? 只の道具屋の看板娘ですが?」

「只の道具屋の娘が我ら騎士に歯向かうものか‼️」


 男は距離を取り体勢を整えると、再びスズネに剣を向けたがスズネは剣を手で受け止めると意地が悪そうな笑みを浮かべた。


「道具屋の看板娘が歯向かっちゃいけないんですか?

それに自分の身は自分で守らなきゃね‼️」


 スズネは剣を手で受け止められ呆気にとられる男に拳を叩き込む。

 拳を叩き込まれた男は思った。


――拳で無双する看板娘が居るか‼️


 男が倒れたのを確認するとスズネは男二人を縛ると紐をタマに咥えさせるとスズネは少女に声をかけた。


「大丈夫? コイツら伸したから平気だと思うけど」

「ありがとうございます。貴女はお強いのですね」

「お父さんとお母さんに鍛えられたからね‼️

とりあえず貴女の家まで送ってあげるよ。ついでにコイツらを騎士団に引き渡そう」


 スズネは未だに座り込んでいる少女の手を握り立たせると手を繋いだまま歩き出す、その後をタマが縛られた男二人を引っ張りながら連れていく。


 スズネは後に語る、あの時、助けてなかったらわたしは只の道具屋の看板娘として過ごしていたと。


 少女の家が聖女護衛騎士団の屯所で。

 彼女が騎士団が推奨している聖女候補で。

 近々、聖女になるための旅に出ることを聞かされ。

 護衛騎士団団長直々に護衛をお願いされて聖女候補と共に旅に出る事になるのだが、聖女の力に興味ある天才魔術師の少年に大剣使いの老人、チャラいが実力者の弓使い、セクシーでミステリアスな槍使い、派遣された幼い暗殺者、貴族側が推奨するご令嬢の実兄の騎士と共に世界を救う戦いをしていくことになるのだから。


完。

 

 

 

 

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