神宮寺家の双子たち⑧


 神宮寺家のお茶の間にて父親の真一郎と息子の修の二人がなんの会話もなくテレビを見ていた。


 真一郎が息子の修をそれとなく眺めたら、修はバラエティ番組のお笑い芸人を見ながら「ははは」と呑気に笑っている。


 (……まさか温厚な修があんなことをしでかすとはなぁ……)


 こっそりと妹の紅花が後々調べたら、どうやら修は同僚の女性の為にあんなことをしでかしたらしい。


 (ふふ、世間的には暴力行為で物事を解決するなんぞ褒められたことではないのだろうが、俺は褒めてやるぞ)


 口には出さずに息子を褒めると同時に、こっそりと紅花と二人で出掛けた夜の兄妹の会話も思い出す。


 ☆☆☆☆☆


 「ふふ、今回のことで修さんを見直しましたわ」


 「なんだ?見直したって」


 「……修さんは良く言えば温厚ですが、悪く言えばそういうことを見て見ぬふりをするタイプかと思っていましたから」


 「お前なぁ……」


 「それに武術に関してもそれほどの才を秘めていたとは……」


 「まったく、どいつもこいつも……あいつの趣味がどうとか、体型が太っているからとか色眼鏡で見すぎだ。俺は産まれたときからずっと修は天下をとれる武人になると信じて疑っていなかったんだからな」


 「ふふ、そうでしたね」


 「……そんなことより、なぁ、紅花。お前は再婚しないのか?」


 「……ふふ、もう殿方はこりごりですわ」


 「……そうか、まだ若いんだから少し考えたらどうだ?」


 「……本当にご心配なさらず」


 「……もしかしてまだ睦月の奴のことを?」


 「……もう、お兄様、やめてください。そんなはずないじゃないですか」


 妹の紅花は苦笑いで、でもこの話はもう御仕舞いと


 「お兄様、さぁ着きましたよ。ここまでカメラに移らないように来たんですからドジはなさらないでくださいね?」


 「あぁ、わかってるさ」


 そう言って二人は敵の巣窟に消えていった。お互いにかける言葉は不要、あとはいつもの通りの単純な作業だとばかりにここまでの兄妹のような会話もなく無言で駆除は行われた。

 

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