大学編 第47話


 今日は恋人の蛍とその友人の水無瀬さんと遊園地に遊びに行く約束をしている。

 この前、蛍が珍しく連絡をくれなかった日から仕事と学校で蛍の顔を見れていない。俺は気になったので蛍の家に行こうかと迷っていたのだが、蛍が「今日は──」などと理由をつけて断ってくるし、なんだかんだで俺も忙しかったので電話をかけるだけで週末を迎えた。


 俺は一人、電車に揺られながら現地にきちんと待ち合わせの時間の前に着いた。何故、一人で来たかと言えば、この前の蛍との電話で


 『先輩、今週末に行く遊園地は現地集合にしましょう』


 「現地集合?本当にそれで良いのか?」


 『はい、そうしましょう』


 「俺は構わないが水無瀬さんはそれで良いのか?」


 『つばめちゃんにはその様に伝えておきます。一緒に行くより待ち合わせした方が良いと思います。その方がデートっぽいですし』


 「ははは、俺と蛍はデートだけど水無瀬さんがいるからあまりイチャイチャできないな」


 『……大丈夫ですよ。ちゃんとデートできます』


 「そうかな?それじゃ、きちんと戸締まりしてゆっくり休むんだぞ」


 『はい。それじゃ、先輩。おやすみなさい』


 この様なやり取りがあって現地集合ということになった。現地集合というのには少し引っかかったが蛍がいうのだからと深く考えずに遊園地に向かった。


 「……早く来すぎたかな?」


 どうやら俺が一番乗りのようだ。蛍に着いたとメールを送ったが返事がない、蛍はまだ移動中なのかな。


 ぼんやりと一人で缶コーヒーを飲みながら待っていたら次に水無瀬さんがやって来た。


 「おはよう、睦月君」


 「おはよう、水無瀬さん。久しぶりだな」


 「ふふっ、そうかな?」


 水無瀬さんは相変わらずのお洒落な格好でやって来た。水無瀬さんはキョロキョロと辺りを見回して


 「……睦月君、蛍ちゃんは?」


 と尋ねてきた。


 「まだ、着いてないようだな」


 俺がそう返事したら


 「……睦月君、何で蛍ちゃんと一緒に来てないの?」


 水無瀬さんは訝しげにそう聞いてくるが


 「現地集合って話じゃなかったのか?水無瀬さんにもそう伝えるって蛍が……」


 俺はそう答えるしかなかった。蛍がそうしようと言い出したのだから。


 「……私は蛍ちゃんから『先輩と私は駅で待ち合わせて行きますから、つばめちゃんは直接、遊園地に向かってください』って言われたの!」


 どういうことだ?話が違うぞ。


 「……とりあえず蛍ちゃんに連絡してみたら?」


 「あぁ……」


 電話を何度もかけるが……繋がらない。


 「繋がらないぞ……」


 俺と水無瀬さんが二人で顔を曇らせていたら蛍から俺と水無瀬さんの二人にメールが同時送信されてきた。


 『すみません、急用ができてしまいました。申し訳ないですが、遊園地はお二人で楽しんできてください』


 「何だ、これは……」と俺には蛍の意図が全く理解できなかった。

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