大学編 第35話
「蛍、可愛いよ」
ベッドの上で恋人の先輩がとても優しく、でもどこかエッチな手つきで私の身体に触れる。
「あっ、先輩っ!そこは駄目っ」
「ふふっ、蛍、可愛いよ。そしてこの蛍の大きな胸は俺だけのものだ」
そう言って、先輩は私の巨乳に顔を埋める、ぱふぱふ。
「もう、先輩のエッチ」
「そんな事は蛍が一番知っているだろう?それじゃ、もう蛍の準備は良いか?」
「もう、聞かないで……」
先輩の逞しい身体が覆い被さるように私を……
☆☆☆☆☆
ジリリリリ……
……ぼんやりと頭が覚醒していく、枕元の目覚まし時計が鳴っているので手を伸ばして止める。
身体を起こし、ベッドを見回す。うん、私一人だ。昨日は先輩はお仕事があったので泊まりには来ていない。つまり、さっきのは夢だったんだな……
夢の中でも先輩はエッチだった。こんな夢を見てしまうなんて……先輩がエッチだから私の夢にまで訪ねてきたのだろう、本当に困った人だ。
本当にもう……いいところだったのに……
ふと、思いついて私は自分の両手を胸に当てる、モミモミ。
「……うん、いつもの胸だ」
やっぱり、あの巨乳は夢だったのか……はぁ、残念。
……夢の中の私を巨乳にしてしまうなんて、先輩はやっぱり巨乳好きなんじゃないだろうか?
一度きちんとあんなものはただの脂肪の塊だと言い含めなければならないかもしれない。
本当なら二度寝して先ほどの夢の続きを見たいのだが、今日は学校があるので「うーん……」と伸びをして身体を起こす。
「さて、準備しますか」
声に出して自分に気合いを入れる。先ずはお風呂かな、夢の中でも先輩がエッチなせいで少し汗をかいてしまった。まったく、もう。
湯上がりの私は首にタオルをかけ、ショーツ一枚で部屋の中を歩く。当然、外からは見えないようになっているし、先輩や、つばめちゃんがお泊まりした時にはそんなみっともない格好はしない。勿論、実家でもそんな格好でうろうろなんかしない、もしそんな格好でうろうろしたらお母さんに鬼のように説教されるだろう。
一人暮らしの今だけ、湯上がりの少し火照った身体が冷めるまでのちょっとだけだから見逃してほしい。
もし、こんなみっともない姿を先輩に見られたら嫌われ……ないかな?むしろ喜びそう。うん、やっぱり先輩はエッチだ。
朝御飯は軽く食べる、元々、そんなに食べられないし、作るのが面倒だから。勿論、先輩や、つばめちゃんがいればきちんと作るが、自分の為だけに朝からは頑張れない。でも、お昼のお弁当は作る、外で食べるより安上がりだから。もし、先輩と同棲していたら先輩のお弁当も一緒に作るんだけどなぁ、残念。
「いってきます」
誰もいない部屋に何故か声をかけてから出かける、どうやら癖になっているようだ。大学に向かい、教室にて講義が始まるまで待っていたら友人の水無瀬つばめちゃんが現れた。
「おはよう」
「ふふっ、おはよう。蛍ちゃん、朝からご機嫌だねぇ、もしかして睦月君がお泊まりしたの?」
「先輩はお仕事で来てないですよ。もう、つばめちゃんたらすぐにそんな事考えて……」
「ん?そんな事って?何かなぁ、蛍ちゃん?」
ニヤニヤと笑うつばめちゃんに「知りませんっ」と言って顔を背ける。そうしたら「ごめんごめん」とつばめちゃんは謝ってくる、いつもの私達のやり取りだ。
……危なかった、そんなに私はご機嫌だったのだろうか?先輩に夢の中で会えたから?勿論、夢の話は内緒だ、そんな夢を見たなんて知られたら何を言われるかわからない。
講義を終えたらつばめちゃんとお出かけする、あまりお金がかからない所でお茶をしながらお話したり、私の家まで一緒に帰って家の中で遊んだりする。今日もいつもと同じように女の子同士でたわいもないお話をして
「それじゃ、またね。蛍ちゃん!」
そう言って、つばめちゃんは夕方には帰っていった。最近のつばめちゃんはあまり食べないし、お泊まりもしなくなった。やっぱりダイエットしてるのかなぁ。
一人になったらちょっと寂しくなって先輩にメールをする。仕事や学校で忙しい先輩にいきなり電話をするのはちょっと憚られるのだ。
『もう、講義が始まるから、後で電話してよいか?』
そんな先輩からの返信に「待ってます」とこちらもメールを返す。
家事をしたり、漫画を描いたりしてたら、学校が終わったのか先輩からの電話が鳴ったので慌てて出る。
「先輩、お疲れ様です」
電話に出るときは不思議とちょっとお澄ましな声になる。そんな私の声を聞いた先輩は少し可笑しそうな安心したような声で『蛍もお疲れ』と返してくれる。
ちょっと一日の報告をお互いにして
『……それじゃきちんと戸締まりするんだぞ。おやすみ、蛍』
仕事と学校が明日もある先輩、今夜は私の家に訪れることがない。会いたい気持ちを我慢して
「はい、先輩もおやすみなさい」
そんな挨拶をして電話を切る。週末までの我慢我慢。先輩との電話を終えた私はベッドに横たわり
「……また、夢で逢えますように」
昨夜の夢の続きを願うのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます