エピローグ


 『私の心には嵐が吹き荒れていた。

 【腫れ物扱いの先輩が、私には優しい】 ⑧ 終わり』


 俺は蛍の描いた漫画の単行本を読み……


 「……なぁ、蛍。俺は記憶喪失になっちゃうのか?」と聞いたら


 「……編集の人がその方が面白いからって……」と蛍は申し訳なさそうに答える。


 まぁ、フィクションだし……途中まで蛍に二人の馴れ初めを世間に大々的に暴露されてるのかと心配していたのだが……これなら大丈夫か?


 蛍も一年後に俺の後を追うようにこの街に進学してきた。そして趣味だった漫画を新人賞に送ったらなんと少女漫画の月刊誌に連載することになってしまい……こんなことになっている。

 

 単行本が発売されたときに叔父さんから「お嬢ちゃんにおめでとうと伝えてくれ」とメールがあった。あの強面な叔父が少女漫画を読んだのか?と腹を抱えて笑った。


 当初、蛍は漫画のことを俺にも隠していたが新人賞をとって連載が決まったらもう隠しきれないと思ったのか話してくれた。


 「……このヒロインの相手役はなんで背景にいつも花が咲いているんだろう……」


 矢鱈とイケメンに描かれているのを蛍にそれとなく指摘したら


 「……すみません、先輩の格好良さを表現しきれなくて……」


 そんなことを悔しそうに言っていた。蛍は眼鏡の度が合ってないんじゃないかな……まぁ俺も蛍は世界で一番可愛いと思っているから一緒なのかもしれないけど。

 

 それにしても付き合ってしばらく経ったのに『先輩』って今でも呼ぶのはどうなんだ?って蛍に聞いたら


 「……『先輩』って呼ぶと不思議と安心して元気が貰える気がするんです……駄目ですか?」


 って上目遣いで言われたら駄目なんて言えないよな……なんて考えていたら


 「……先輩、お待たせしました。原稿終わりました」


 蛍の下宿に遊びに来た俺を相手できなかった蛍は申し訳なさそうに言った。


 「大丈夫だよ、お疲れ様」


 蛍の進路が決まり、この街の下宿を探すとき当初は俺と同棲したいと思っていたみたいだが


 「……蛍、俺は一緒に住んだら爛れた生活(性活)を送らない自信がない……」


 そう言ったら蛍も「……そうですね」と納得してくれた。でも蛍の大学卒業と同時くらいに籍を入れ一緒に暮らしたいとは話している。


 「……さぁ、原稿も終わったなら!」


 そう言って蛍をお姫様抱っこしてベッドに運ぼうとしたら


 「せ、先輩?ちょっと待ってください!原稿やっててお風呂もまだ入ってないんです!」


 「……なるほど……それじゃ一緒にお風呂に入ろう、一石二鳥だな!」


 「……あぅぅ、今は先輩にお見せできるような下着じゃないんでちょっとお時間をください!」


 「俺は蛍の色気の無いパンツも、背伸びした透け透けパンツも好きだぞ、問題はない!」


 「もう!先輩のエッチ!」


 「そんなことは蛍が一番知ってるだろ?……なぁ、蛍」


 「……なんですか?エッチな先輩」


 「……愛してるぞ」


 「そう言えばなんでも許されるとでも思ってるんですか!………………私も世界で一番愛してます……」


 俺の首に手を回す蛍を抱えて浴室に行く、そこから先は曇りガラスと湯煙が二人を隠してしまった。


 



 


 


 

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