第102話
目の前に座る神宮寺を俺は睨み付ける。神宮寺はただ俯いて神妙にしている。
「……なぁ、神宮寺……男らしくないぞ?」
俺は神宮寺に強くそう言ったら神宮寺は「……わかってる」とだけ呟く。
「……落ち着いて考えたら石井さんのことが好きじゃなかったとかならそう本人に言え、最低と罵られても仕方ないが……逃げるよりマシだ」
「……そんなことはない石井さんは美人だし、性格も良いし……」
「……年齢か?俺らより十歳年上だしな」
「……そんなの関係ない……」
「……それじゃ、なんでだよ……」
困って目の前の飲み物に手を伸ばす。
何故こんなことになったか遡ると……
石井女史のストーカーの相談を受けた俺は……神宮寺を巻き込んだ。俺が一人で対処したら……何故か石井女史と深い仲になってしまう予感がしてしまったからだ、これは勘としか言えないがそんなことになったら蛍を泣かしてしまうと……神宮寺に手伝って貰った。
石井女史は最初は部外者に手伝ってもらうのは……と気にしていたが
「神宮寺は武術の達人で俺より強いです、誰かを守るということに関しては専門家です」
と説得して二人を引き合わせた。神宮寺は最初は美人の石井女史に緊張して話すこともできなかったが、大人の石井女史は優しく神宮寺のペースに合わせて会話してくれ……段々と神宮寺も石井女史と会話することができるようになった。
事件として、実はストーカーは二人いた、一人目が石井女史の隣を歩く神宮寺に嫉妬して襲いかかってきたので隠れて二人を見ていた俺が対処した。そこいらの奴に負けるわけはないので対処に関しては問題ない。
「神宮寺、石井さんを無事に送り届けろ」
と石井さんのことを任せたら……隠れていたもう一人が神宮寺と石井女史に襲いかかったらしい。既に解決したと油断していた神宮寺は手に怪我をしながらも撃退して……警察に突き出したとのことだ。
携帯電話で「神宮寺、大丈夫か?」と聞いたら
『……こっちは大丈夫だ。また後日、会おう』
と言うし石井女史からも
『……神宮寺君が身を挺して守ってくれたの……私は大丈夫だから……あなたも休んで……』
と言うので一人で帰ったら……
あの予感はある意味当たっていたのだろう。まさか、その夜に神宮寺が童貞を捨てていたとは思いもよらなかった。
身を挺して守ってくれた神宮寺に男らしさを感じだ石井さんは手当てをさせて欲しいと神宮寺を部屋に招き入れ……そういうことになったらしい。
独身でお互いに恋人もいない二人なので何の問題もないはずなのだが……
……関係のあった日から三日経つのに……神宮寺は石井女史に何の連絡もしてないらしい。
「……石井さん、『やっぱり私みたいなオバサンじゃ……よく考えたら嫌だって思ったのね、仕方ないよね……』って悲しそうに言ってたぞ……」
三日経ってから石井さんからあの夜、二人に何があったか教えてくれた。
「……生でしたんだろ?」
「……彼女が大丈夫な日だって言うから……」
……俺だって蛍と生でしたことなんてないのに!!という心の叫びは置いといて
「……何をそんなに迷うんだ?彼女欲しいって言ってたろ?」
と神宮寺に尋ねたら
「……俺は武術の為にこの身を捧げなくちゃいけないんだ……」
そんなことを言い出した。
「……それは裏の仕事を避けられないってことなのか?それに石井さんを巻き込みたくないとか?」
俺が『裏稼業』の事を口にしたら神宮寺は俺を睨み付け
「何で知ってる」
と言うので妹さんから聞いたとは言わず
「……実は、俺の叔父さんは堅気じゃないんだ、だから裏の仕事のこともある程度は知識がある」
と、この街で誰にも言ってないことを神宮寺ならと話した。
「……なるほどな、似た者同士か」
……似た者同士かはわからないが……一応は納得したようだ。
「……別に裏の仕事は受けなくても良いんだ、それは祖父の代の話だ……ただ、俺は……自分の武術がどこまで通じるか知りたいんだ、表でも裏でも……そんな俺が石井さんの傍にいたら迷惑をかける……」
それは神宮寺の欲求、神宮寺の中の獣性がそう言わせるのだろう。
「……神宮寺、裏の仕事では相手は銃や刃物を所持しているんだぞ?」
「……銃ごときで俺は殺れない、相手の銃口の向きやらで弾道が読めるので引き金を引く前に動いて避けられる」
こいつそんなことが出来るのか?ということを言い出した。
……仕方ない、こうなったのも神宮寺を巻き込んだ俺のせいか……一肌脱ぐしかないか。
「……神宮寺、自分がどれ程のものか知りたいと言ったな……お前なんかたいしたことないと俺が証明してやる、俺と勝負だ」
と神宮寺を挑発した。
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