Villainy Brats!

ニョロニョロニョロ太

エピソード1 児童刑務所 リーダー:フレア

「新入りだ。面倒事起こすなよ。」

 バタンと背後で音を立てて扉が閉まった。

 目の前には、三人の少年少女。

全員目つきが悪く、気が弱い新入りは視線を向けられただけで涙目になった。

そんな新入りに、少年が嘲笑を浮かべて近づく。

「おい、お前、名前は?」

 すると、幼い少女が、ツインテールを震わせて

「まってまって!

リーダーはフーちゃんだから、フーちゃんがいう!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねて抗議した。

 少女はえへんと胸を張って、

「じゅんばんに、じこしょうかい!します!」

 ようやく宣言した。

「じゃあ、フーちゃんからね!

 フーちゃんは、フレアっていうの!

 すきなことは、火をつけてあそぶこと!

 ありとか、ねずみとか、いえに火をつけるの!」

 どや、とフレアは分かりやすくドヤ顔をする。

「つぎは、メゾットね」

「ド」

 不機嫌そうな少女が即座に訂正した。

「おい、オレサマじゃねーのかよ」

 少年が不服そうに声を上げる。

「アーサーはさいごだよ」

 それでも文句を言おうとするが、

「アーサー、“リーダーのいうことは”?」

 フレアが得意げに言うと、

「……“ぜったい”だろ」

 不服そうなままだが、それ以上文句はなかった。

 話を振られたメゾッドは、口を開こうとしなかったが、自分が言わないと何も進まないことを察し、

「メゾッド。“ト”じゃなくて、“ド”」

と言って、ムスッとした顔でまた黙ってしまった。

「あのね、メゾットはね」

「ド」

「たいせつなものを、ショクインにとられたから、ずっとおこってるの。

ぜんぶ、ほかのひとからとったものだけど。」

フレアは「それでね」と続けようとしたが、

「次はオレサマだな!」

 待ちきれなかったアーサーがしゃしゃり出た。

「オレサマは、アーサー!

 いちばんケンカがつよいんだぜ!

 オトナを3にんも殴って殺したんだ!」

 ふふんと、自慢げに胸を張る。

 3人が話したことは、明らかに犯罪だが、悪びれる様子もなく、反省しているようにも見えない。

 むしろ、悪いことをしたのが誇らしいようだ。

「最後はお前だな」

 アーサーに促されて、怯えていた新入りがぼそりと

「ぼ、ぼくは、癸です……」

 委縮して続きはなかった。

 メゾッドはそれを鼻で笑って、聞いた。

「で、お前は、何してここに来たの?」

 ミズノトは何のことかわからず、首をかしげる。

「ここは、悪いことしたクソガキしか来ないんだよ。」

「ぼくは、なにも……」

 心当たりがないミズノトは言いよどむが、

「あ。わるいことじゃないけどおこられたことある。」

 思い出して呟くと、3人が興味津々で寄ってきた。

「何したの?」

「ええっとね」

 ミズノトは、トワちゃん、ミヤコせんせい、と名前を上げながら指を折る。それから折った指を数えて、

「7人、殺した」

 ミズノトの言葉に、部屋の空気が止まった。

「でもね、ぼくはわるくないよ。

 ショウトくんは男の子だから女の子が好きだけど、ぼくは男だから、好きになれないって。

 だから、女の子をみんな殺すしかなかったの。」

当然のように、そう言った。

 この部屋にいる子供は、自分のしたことを全く反省していないような犯罪者ばかりだが、ミズノトのことを理解出来るものはいなかった。

「あ、あたしのことも殺すのかよ。」

 メゾッドが睨むと、ミズノトは驚いた顔で、

「そ、そんなことしないよ。

 だってここにショウトくんはいないし、殺すのはかわいい女の子じゃないと意味ないでしょ?」

 言い終わった次の瞬間、メゾッドとフレアが怒りに任せてミズノトにとびかかった。

 新しい、牢獄生活のはじまりはじまり。

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