第12話 赤髪のソイツ
「宿泊研修?」
宿泊研修一緒の班になろうよ。
カフェに行った次の日そんな心当たりのない発言を平川から聞いた俺は、一体なんの話だと首を傾げた。
「いや、来週からあるじゃないか」
「いや、知らんけど」
そもそも宿泊研修ってのは1年生が仲を深めるためにするもんじゃなかった?(俺調べ)
「さすがだな颯人は。まぁそこでいろんな体験をしてみんなの仲を深めようって話らしい」
「あー、そういやこの高校やたらと人が多いもんな」
「あぁ、1学年600人以上いるからね」
俺が通う私立北影高校はマンモス校としても有名だ。全校生徒は約1300人と、どの高校と比べても多い。それ故のオリエンテーションということだろう。
「ちなみに1年と3年もこの宿泊オリエンテーションがあるんだけど、学年毎にバラバラだね。ちなみに去年は北海道へ行ったよ」
「うわ、羨ましいなそりゃ」
「だろう?そして今回はなんと……」
「お、おう。どこなんだ」
「デデン!白馬村さ!」
こいつキャラ崩れてんぞ。
「……白馬村?長野の?」
「そう!自然溢れる長野の大地でとっておきのアクティビティ体験ということなんだ」
北海道行きたかったぜぇ……。
「ふーん。まぁ楽しみだな」
「……本当にそう思っているのかい?」
「んなわけねぇだろ」
「……はは、だよな」
そんな力無く笑う平川を余所目に、こちらに近づいてくる新川へと目を向けた。
「やっほー。もしかして宿泊オリエンテーションの話?」
「そうだよ新川さん!ただ颯人のやつが興味が無いと言い張ってね」
「もう。相田くんはもっと行事に積極的になろうよ!最近編入してきたんだし、みんなと仲良くなるチャンスだよ!」
「いや、別に仲良くなんか……」
「なんか言った?」
新川はニコニコと笑ったままだが目が怖い。いやマジで怖い。
「……仲良くなりたいなぁ」
「うんうん!そうだよね!」
解せん。
「ところで、新川さんは班のグループ決まったのかい?」
「とりあえず女子の方はね。遥と
ちなみにこの校外学習では、男女3人ずつ組むこととなっている。
「るりり?誰だそれ」
「もう。橘るりりだよ!あのちっちゃくて可愛い」
「あー、居たな。あの子るりりって名前だったのか」
ちっちゃくて小学生みたいに可愛いと男子達が噂してたのを耳にした気がする。
「……るりりのことは覚えてたんだ」
何故か新川はちょっとむすっとした顔でこちらを睨んでくる。
え、なにかした?
「……別に男子達が噂してたのを聞いただけだぞ?」
「……ふーん」
「と、ところで僕達はまだ僕と颯人しか決まってなくてね。色々誘われてはいるんだけど、あと1人男子を誘って新川さん達のグループに入れてくれないか?」
さすが平川。空気の読める男だ。
「うん、もちろんいいよ!ところであと1人は誰を誘うの?」
「いんや、まだ決めてない」
確かに来週に校外学習となってくると殆どのグループが出来上がっているだろう。
そもそもなんで新川達はまだ決まってなかったんだ?男子の中で新川はダントツで人気だし引くて数多だと思ったんだが。
「……小鳥遊君はどうだろうか」
小鳥遊伊織。
入学式の日に上級生と揉め事になり、1人で8人をボコボコにしたらしい。それ以降このクラスでは腫れ物のような扱いとなり、誰も近づこうとはしなかった。
今も1番後ろの席で腕を組みながら寝ている。髪の毛襟足の方だけ赤いし、貫禄半端ねぇ。
「いいんじゃない?小鳥遊君って結構いい人だよ?この間ロッカーの上にあった掃除用具が取れなくて困ってたんだけど、何も言わずに取ってくれたし」
「そういや俺もこの前「消しゴム落ちてるぞ」って拾ってくれたな」
「少し近づきづらい雰囲気はあるけど、案外いい人なのかもね。それじゃ、早速誘ってくるよ」
そう言って小鳥遊に近づく。すると小鳥遊はその気配に気づいたかのように目を覚ました。
なに?気でも感知できるの?俺は怒ったぞーとか言って髪の毛のその赤が金に変わる感じ?
「すまない小鳥遊君。少しいいかい?」
「……なんだ」
「来週の校外学習なんだが、男子が1人足りなくてね、よかったら僕らの班に入らないかい?」
「……好きにしろ」
「ありがとう。それじゃあ」
そのまま戻ってくると、平川がほっと一息ついた。あの平川でも緊張したのか。
「うまくいったよ」
「よかったね!遥達に伝えてくる!」
そう言ってパタパタと自分の席へと戻っていく。忙しいやつだ。
「……なんか、すごかったな」
「あぁ、オーラというか、雰囲気が尋常じゃなかったよ」
校外学習、何もなければいいんだが……。
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