幼馴染の聖女と関係を持ったということで勇者パーティーから追放された、【黒騎士】の俺と【聖女】のクリスタ 〜女の子としては見ていない幼馴染に俺が手を出すなんてありえないだろー! 最強の力で復讐します〜
水篠ナズナ
パーティー追放編
第1話 追放の日
「……アルベルト、クリスタ。お前達は今日でクビだ」
俺は……いや、俺達は勇者ケンジに、和やかな雰囲気で、少し遅めの昼食を囲んでいる中、突然クビを宣告された。
一体、俺達が何したっていうんだ。
「ケ、ケンジ様、どうして俺達を追放するんですか?」
勇者ケンジ……、この世界の住人ではなく、異世界から送られてきた神の使者だ。俺達は勇者様の旅をサポートする為に、国中から集められ、選び抜かれた者たちだ。
魔王を討伐した後は、国王となるケンジの側近になる筈だった……だったのだ。
今は、俺達の事をメンバー全員が冷たい目で見つめている。
異世界勇者のケンジ。
大魔導士のジュドー。
聖騎士のフィリックス。
賢者のユカナ。
暗殺者のリュカ。
聖女のクリスタ。
黒騎士のアルベルト。
七人の中では、俺とクリスタの二人が、元平民な為、立場が一番低かった。
だから言動には特に気を付けていた。
そんな俺達に、度々突っかかってきていたのが、勇者の最側近であるジュドーとフィリックスの二人だ。
そんな彼らが、俺達に口々と言う。
「お前達は、そんな事も分からないのか。これだから卑しい身分の者は……」
「そんなに、カッカするなよ、フィリックス。この田舎者の黒騎士さんは、聖女がどういうものか知らなかったんだからさ」
俺を嘲笑うかの様にジュドーがフィリックスを嗜める。
「俺でも知っていますよ、ジュドーさん。聖女は純潔を失った時に癒しの力を失うと」
俺の答えにフィリックスが噛みつく。
「知っていたのなら、何故手を出した? お前のせいでパーティーの……大事な回復役がいなくなったんだぞ」
事の発端は、幼馴染みであり聖女のクリスタが癒しの力が使えなくなった事にある。
だが、それは初めてではなく、数ヶ月前から度々起きていて、今日、完全に使えなくなったのだ。
彼女は前々から身体の不調を訴えていた。それを旅路が遅くなるからと無視したのはお前達三人だろう。
「俺のせいじゃない、彼女は前々から身体の不調を訴えていた。その時に取り合わなかったのは、お前達の方じゃないか」
「貴様は勇者様が悪いと言うのか! これだから黒騎士は……」
フィリックスが感情的になるのをケンジが制す。
「やめるんだ、フィリックス。アルベルト、さっきは言い方が悪かったな。パーティーを乱したお前と、力を失ったクリスタは、連れて行く事は出来ない。お前はともかく、力が使えないクリスタは命に関わるからな」
口調は幾分かマシになったが、結局言ってる事は変わらない、俺達をパーティーから追放したいだけだ。
「クリスタが……力を失った原因は、俺だと言いたいんですか?」
「君しかいないだろう? 彼女と幼馴染みであり、パーティーメンバーの中でも、一番仲がよかったんだから」
何を言ってるんだコイツ。とケンジが目で訴えてきている。
「俺が彼女の事を大切に思ってる事は確かです……ですが異性として彼女を見た事はありません」
俺は隣でガクガク震えてる、クリスタの肩を抱き寄せ、勇者にきっぱりと断言した。これは俺が心から思っている事だ。
だが、返ってきた返答は冷たいものだった。
「それが、なんの証拠になるんだ? 口だけならなんとでも言えるだろう。 どっちにしろ、これは皆で相談した結果だ。覆らないと思ってくれ」
みんな……みんなか。俺達には、相談の一つ無かったくせによく言うよ。
「分かった、俺達はパーティーを去る。だがこれだけは理解してくれ、彼女の尊厳にも関わるんだ。俺とクリスタは、幼馴染みの親友で、それ以上の関係ではない。それだけ分かってくれれば十分なんだ」
その時、今まで傍観の姿勢をみせていた、暗殺者で、露出の激しい服を着ているリュカが険しい表情で口を開いた。
「あーしはさ。アル君とクリスちゃんが関係を持ってようが、持ってなかろうが、どうでもいいんだけどさ。二人が仲良くて、よく一緒に行動してたのは事実っしょ。街を巻き込んだ戦闘の時とか、勝手に行動してパーティーを危険にさせたりとか、命令違反をしてたのは、事実なんだしケジメはつけた方がいいっしょ」
普段はあまり、とやかく言わないリュカにまで言われてしまったら、返す言葉もない。実際に勝手に行動したのは、逃げ遅れた子供を助ける為だったが……その行動によりパーティーを危険にさせた事は否定出来ない。
「そうだな……誠心誠意、謝罪しよう」
フィリックスはクリスタにも視線を当てると、容赦のない言葉を吐いた。
「お前も謝れよ、売女!」
「フィリックス!! お前……」
フィリックスの心無い言葉に、クリスタがえぐえぐと、泣き出してしまった。
俺は泣き崩れる、クリスタを支え、フィリックスを睨み付ける。
「おおー怖い怖い。折角だから、お前のさっき言ってた事を実践してもらおうか」
さっきの事? 俺にはなんのことを指しているのか分からなかった。
「どういう事だ?」
「こういう事だよ!!」
フィリックスはクリスタの修道服を手でビリビリに破りさき、彼女の綺麗な肌が露になった。
「きゃあぁぁ!」
クリスタは悲鳴をあげ、両手で胸を隠ししゃがみ込む。
俺はサッと横を向き、視線を変える。
一瞬だけだったが、彼女の綺麗な形をした乳房を目に焼き付けてしまった。
「お前は、この状況でも興奮しないのか? いやするよな。しない方がおかしいもんな、こんな美人の身体を間近で見る事が出来るんだから」
今のを見てしまうと流石に意識してしまい、視線が自然と彼女に引き寄せられてしまう。
「痛い痛い、離して!」
フィリックスは、彼女の髪を乱暴に掴み俺の元まで引きずってくる。
「ほら、よーく見ろよ」
彼女の顔がよく見える、よく整った顔立ち、目鼻立ちがくっきりしていて、少し童顔だが、くしゃと笑った顔が好印象な16歳の少女だ。
だが、それよりも彼が彼女の青銀色の髪を掴んでいる事が許せなかった。
「フィリックス、その手を離せ!!」
俺は、彼女の髪を掴んでいる手を引き離すと、クリスタに上着をかけ、彼女とフィリックスの間に立ちはだかった。
「お前がクリスタに謝るまで、俺も絶対に謝らないからな」
「はっ、貴様こそ先に謝れよ。勇者様の旅路を邪魔した罪は重いぞ」
こいつは、俺たちが悪いと本気で思っているのか? クリスタは先程から震え続けている。これ以上ここに話を続けるのは彼女に酷だろう。
「話にならないな。いくぞクリスタ」
「う、うん」
クリスタはしっかりと返事をしてくれた。俺はクリスタの体を支えながら、パーティーから去った。
その後ろ姿を、賢者のユカナだけが、心配そうに見つめていた。
この日勇者パーティは、七人から五人となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます