飛翔怪獣ヴォルコン 地底怪獣グロルヴルフ
休暇から一転、管制室に集合した瑠璃達を含め管制室の中にいるメンバーの誰一人口を開こうとしない。
モニターに映る映像について話してしまうと認めてしまうことになりそうだからだ。
そんな沈黙を破る三滝の口元はどこか嬉しそうにも見える。
「2体同時か……MOFU KUMAは4体、2体ずつ別れていけば討伐も可能じゃないかね」
港がモニターに映る文字を見て恐る恐る報告をする。
「モドラーの卵1つは孵化が始まっているそうです。明日の朝にも孵化しこちらへ向かって来る可能性 あり だそうです」
「そうかね、それじゃあ君達は仮眠を取った後、すぐに出撃だ。それが君らの役目だからね」
港の報告を受け三滝が瑠璃達に言うその感じが軽く、瑠璃には感に触る。
イラッとしながらも態度に出さないように短い返事をして逃げるように管制室を出ていく。
「なにイライラしてるデス?」
出てすぐにアネットに聞かれるので歩みを止めると寧音と穂花は立ち止まらず去っていく。
「俺の仕事だから仕方ないのは分かってるけど、命かけて戦ってるのに戦い方に品がないとか、勝ってこいとか簡単に言うのにイラッとしただけだ」
アネットが胸の内を語る瑠璃の頭を引き寄せ抱き締めると頭を撫でる。
胸に押し付けられもがく瑠璃に優しく語りかける。
「ワタシもお気楽に見えてあの言い方にイラッとしてマスし、本当は怖いんデス。モドラーの眼力が効かないからって目が合えば怖いデス。
銃弾撃つときも早く終わって欲しい、死んで欲しいって祈りながらやってるんデス」
アネットが瑠璃の頬に優しく触れると見つめるその瞳は潤んで弱々しく感じてしまう。
「ワタシは弱い人間なんデス。本当は誰かの後ろについてないと怖くて前にも出れないんデス。こんなワタシデスけどルリの力になりたいんデス、だから……」
言葉に詰まるアネットを抱き寄せる。
「わるい、俺ばっか感情出してさ、俺だけイライラして。アネットのこと考えてなかった」
瑠璃の胸に顔を埋めるアネットが首を横に振る。そのまま瑠璃の頬を再び掴んで引っ張ると唇を重ね離すといつもの笑顔をみせる。
「これでやれマス! 明日の討伐スパーっと終わらせてやりまショウ!」
「ああ」
瑠璃がアネットを引き寄せ抱き締めるとアネットは嬉しそうに笑う。
「やっと瑠璃がデレてくれましたヨ」
しばらくの間抱き合った後名残惜しそうに別れた2人は明日に備え眠りにつく。
***
生まれたモドラーが大きな羽を広げる。羽ばたくだけで暴風が吹き荒れ人間や兵器を吹き飛ばしていく。
鷹を大きくした見た目のモドラーは飛ぶためだろうか今までのモドラーに比べると小さい。といっても20メートルはある怪獣に変わりはない。
力強く羽ばたくと瑠莉達の方へ向かって飛んでいく。
***
管制室ではなく指令室に座ってその様子を見る三滝が諸星に話しかける。
「これはどういう事かね? 下田に入り我々と戦った後に天城山を越えて富士山に入る。それがルールーだろう?」
「はい……途中でルールーが変更する事はありません。それが約束ですから」
機械のように答える諸星の瞳に光はない。
「このルールーブックでは話にならんな。まあ律儀に子供達の方へ向かっているようだから大丈夫なのだろうが、まさか2体同時とは、数の制限も決めれば良かったか」
三武は忌々しそうにモニターを見る。
***
「今日は私が名前発表しますね。フランス語の『飛ぶ』と『鷹』を文字って『ヴォルコン』です。ご意見待ってます」
翠の明るい声が操縦席に響くなか上空に狙いをつける瑠璃のレーダーが反応する。
「くそ、早いな」
レダーが射程内に入った事を知らせると狙いを素早くつけ銃弾を放つ。
放たれた弾丸をヴォルコンはひらりとかわす。そこから数発撃たれる弾丸をかわして徐々に降下していくとファイターグマを掴むみ少しだけ浮かして投げ飛ばす。
砂浜を転がるファイターグマの横をファンキーグマが両手に握ったマシンガンを放つとヴォルコンの羽から小さな緑色の血が飛び散る。
羽を大きく羽ばたき後ろに下がりながら上空へ逃げると口を大きく広げ炎の弾を吐き出す。
ボトボトと空を飛び回りながら火の玉を投下し、その爆撃に2匹のクマが被弾する。
「なんデスこのやろうは」
「ああーーもう全然届かない!」
愚痴る2人の上で瑠璃の銃弾を避けていくヴォルコン。それでも構わず撃たれる銃弾に瑠璃らしさが感じられず不安を感じる2人とは別にバールを構えて走ってくるラダルグマ。
「2人とも~ ぼーーーーとしてる暇はありませんよ~」
ヴォルコンの高度が下がったタイミングに合わせジャンプするラダルグマがバールを振り下ろすと翼に突き刺さしそのまま地面に叩きつける。
バールの先端を踏みつけ地面に突き刺すとナイフを振り下ろす。
ヴォルコンが火の玉を吐き出したせいで起動がズレてナイフを直撃させれなかったラダルグマの隙をみて翼の一部を千切りながら無理矢理バールから引き抜くと立ち上がる。
「くらえーー!!」
寧音の叫び声と共にファイターグマのコルグイスの爪がついた拳が顔面を殴りヴォルコンが横に倒れる。
ファンキーグマが追い討ちにマシンガンから銃弾を撃ち込む。
バールを拾いラダルグマが横に振るうのをくちばしを削りながら反って避け反りを戻すのと同時に火の玉を吐きラダルグマに直撃させる。装甲で耐えるラダルグマ。
ヴォルコンが羽を広げその場で一回転し3匹のクマを引き離すとそのまま上空へ上がる。
瑠璃の狙撃を期待するが一向に気配がしないのことに疑問を感じたとき港の緊迫した通信が入る。
〈瑠璃くんもう1匹のモドラーと交戦中! 1人応援にいってください!〉
「なんで!? 卵の孵化は始まってもないはずでしょ!」
寧音が叫ぶ時には既にファンキーグマが瑠璃の元へ向かい始めていた。
モニターに映るその姿を見て穂花は呟く。
「精々頑張って下さい。彼女さん」
***
銃弾を込めスコープを覗き狙いをつける瑠璃の操縦席に突然アラートが鳴り始める。
「熱感知!? 下!?」
スナイパーライフルを手放し転がる様に避けると地中からドリルが突き出してくる。
周囲に設置してある武器からダガーナイフを手に取り構える。
地面から突き出してくるドリルに向かって小銃で射撃を行うが弾かれる。
「ちっ、固いな。結局、刃物や銃よりこっちの方が効果的なんじゃねえかよ」
ダガーナイフを投げながら滑るように武器を格納している箱を強引に開けると長い棒にゴツゴツと重そうな突起物がついている武器メイスを手に取ると銃で牽制しドリルが出てきたタイミングを狙って横から叩きつける。
鈍い音が響きドリルが横を向くと地面が揺れ本体が姿を現す。平たい体に平たい尻尾、丸く細長い顔の先端に大きなドリルがついている。
ドリルを赤く光らせると突進してくる。
「以外に素早い!?」
避けながら銃弾を打ち込んでみるが平たい体にびっしり生える鱗に弾かれる。
モドラーはドリルの先端を赤く光らせたまま前足を軸に後ろの尻尾を横に大きく振ると3回転位しながら突っ込んでくる。
避け損ねて大きく裂けるスナイパーグマの胸元。
「なんだ、なんでドリルの先端でこんなに深く切れる……」
モニターに映るそのモドラーのドリルは鱗がびっしり生えてその鱗が逆立っているのが見えた。
メイスを握り構える瑠璃の操縦席に遠慮がちに翠から通信が入る。
〈緊急事態なんで手短にモドラーの名前はグロルヴルフです〉
「そうか、感想は後で言う」
グロルヴルフの顔面の横にメイスを叩き込もうとするが伏せるような姿勢で避けられ身を屈めバネの様に弾けドリルを突き出してくる攻撃をもろに受けてしまう。
スナイパーグマの右肩辺りに大きな穴を空ける。
メイスを左手に持ち変えるスナイパーグマの操縦席にいる瑠璃の耳にアネットから通信が入る。
「ルリ! 大丈夫デスカ?」
その声に安堵を感じる瑠璃の表情は明るい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます