鎧怪獣 アーマーモドラー

 MOFU KUMAの操縦席にあるモニターで見る青ヶ島の攻防の様子。前回と違いモドラーから緑色の血が吹き出すのが確認できない。


〈たった今、政府の方から正式に今回のモドラーの名前が決定しました。『鎧怪獣 アーマーモドラー』です〉


 瑠璃達に通信が入る。


「そんなのどうでもいいよーーーー」

「お偉いさんはそんなことを真剣に話し合ってるのデスカ」


 寧音とアネットの不満の通信が入ってくる。


「諸星さん今回のモドラーの弱点とかそんな情報はないんですか?」

〈残念だがない。前回と同じく目と口を狙うしかない〉


 瑠璃の質問に対して有益な答えは返ってこない。


「結局現場でどうにかしろってことか」


 瑠璃が愚痴りながらモニターに視線を戻すと既にモドラーは海に飛び込み海中を進んでいた。

 移動速度は前回と変わらないようで約3時間で到達する見込みらしい。

 前回と同じく自分が初撃を担う。目を狙って少しでもダメージを与えないといけない。今回の相手の堅さがどれくらいかは分からないが寧音にとってはかなりきつい相手になりそうだ。


〈瑠璃さん! 頑張ってください! 応援してます〉


 突然、翠から通信が入ってくると瑠璃が答える間もなく港さんの声が割り込んでくる。


〈ちょっとこれ記録に残って後から他の人が確認するんだから、そういう個人的なこと喋らないの!〉

〈ごめんなさい、ごめんなさい〉


「なんデスカこの子は、仕事は真面目にするもんデスヨ! デスよねルリリ♪」

「ほんとにもーー公私混同とか一番やっちゃいけないことだっていうのに! ね~え、るり♪」


 この2人に他人に聞かれる恥ずかしさとかはないんだろうかとか思いながらもいつものやり取りに少しだけ心が軽くなるのを感じる。


「お前らが言うな」


 そういつも通りの一言を告げると、何やら文句を言っている2人の通信を切ると遠い海の果てを睨む。



 ***



 海からゆっくりと上がってくるアーマーモドラーは両腕で顔面をガードしながら進んでくる。


「顔を守ってるのか? だけど」


 スナイパーグマが放つ弾丸がアーマーモドラーの腕に食い込むが貫通しない。

 顔面を守ったまま走るアーマーモドラーに向かってファイターグマが飛び蹴りで攻撃を行うが敢えなく吹き飛ばされる。


「あいたぁ~まずいよこれ。このままだと私役立たずじゃん」


 ファイターグマの体制を整えると爪を出し引っ掻くが表面に傷が入る程度でダメージはあまり無さそうだった。


「シズズ、一旦下がるデス。こっちで武器の換装を繰り返しながらダメージを稼ぐんデス」


 アネットの指示で攻撃しながら下がっていく寧音。


「一応やってみるデス。アンカー射出!」


 アーマーモドラーに当たるアンカーは刺さることなく地上に落ちる。


「これならどうだ!!」


 背後から迫っていたドリルを装備したファイターグマが背中にドリルを突き立てる。

 少し食い込み緑色の血が垂れてくる。


「ちょびっとだけ、尖った先っぽだけ刺さった」

「いや寧音十分だ!」


 ダメージが入らず落ち込む寧音に瑠璃の通信が入ったことで元気を取り戻す。


 ファイターグマがアーマーモドラーの背中からドリルを抜くと瑠璃のいる方向に背を向けるように蹴る。よろけるアーマーモドラーの背中に空いた穴から連続で血飛沫が上がる。


 痛がるアーマーモドラーが背中に気をとられた隙にファンキーグマが左目にナイフを突き立てる。


「ぐぬぬぬぬ、もっと刺さりやがれデス~!!」


 ファンキーグマを振り払おうと暴れるアーマーモドラーにファイターグマが再びドリルを突き立て穴を空ける。

 すかさずそこへ銃弾が撃ち込まれ血飛沫が上がる。


「じ、地味だけどこれでじわじわ弱らせるしかないのかな」

「ワタシも何も思い付きませんデス」


 寧音が穴を開けそこに瑠璃とアネットが銃弾を打ち込んでいく。アーマーモドラーの右目を必要に狙うが狙撃を警戒してか瑠璃に背中を向けて戦い更にガードされてナイフが通らない。

 寧音とアネットが間接技に持ち込もうとしても警戒してか掴ませてくれない。


 それから2時間もの間ドリルで突いて銃弾を打ち込む作業の様な攻撃が繰り返される。

 この間に自衛隊による攻撃も行われたが効果はなかった。


「あぁぁ! ドリルの先端が折れた!?」


 ファイターグマが焦る動きをしている。


「シズズ器用デスネ……それにしてもこのままでは倒せませんネ」

「さっきから殴ってるけどこっちの拳が壊れそう。こいつ攻撃あんまりしてこないのが救いだけど」


 寧音の言う通りガードに専念して攻撃をあまり仕掛けてこないアーマーモドラーはタックルか尻尾を振り回すしかしてこない。


「アネット俺も前に出る。こっちも弾切れだ。中、近距離射撃に切り替える」

「了解デス」


 ファンキーグマがナイフを手にするとアーマーモドラーに向かって走っていく。


「まったく、まだ装備の修復も終わっていないのに出てきやがるからナイフで刺すしか無いじゃないデスカ」


 目の前にはファイターグマが殴る蹴るを繰り返している。視界を奪うため右目を狙おうとファンキーグマが回り込んだときアーマーモドラーが腰を屈め足に力を入れるような動作を見せる。

 膝を伸ばしバネの様に跳ねたアーマーモドラーが大きく口を開けファイターグマに飛びかかる。


 ガシャーーーーン!!!


 金属のぶつかる激しい音が周囲に鳴り響く。バキバキと割れる音が響き続けファンキーグマの左腕がゆっくりと潰れていく。


「ア、アネット!?」

「今はこいつを倒す方が先デス!! ワタシの左手がそんなに好きですかあ!! でもこっちの方がもっと美味しいデスヨ!!!」


 ファイターグマが右腕を振り上げアーマーモドラーの右目に爪を突き刺しそのまま背中から倒し爪を深く深く刺していく。


「シズズ5番にソードがあるデス持ってこれるだけ持ってきて欲しいデス。ルリリそのままいけば7番にナパーム弾があるはずデス。それと管制室、ナパーム系の武器と燃料を持ってきて欲しいデス。でワタシは」


 アネットがパネルを操作し始めるとアーマーモドラーと自分の周囲に防御用の障壁が地面から上がってくる。一ヶ所を残しすべて周囲を囲む。

 その間にも右目に刺した爪を進めていく。


「持ってきたよアネット。どうすればいい?」

「1本残して傷口から刺して地面に縫い付けれないかやってみて欲しいデス」


 ファイターグマが何ヵ所か刺してはアーマーモドラーを地面に縫い付けていく。


「じゃあ最後にワタシの左腕を切り離して欲しいデス」


 ファイターグマがファンキーグマの噛みつかれている左腕を肩から切り離すと障壁の外まで転がる様に逃げると最後の障壁が上がる。


「ルリリ! ナパーム弾を撃つデス!!」

「了解!!」


 スナイパーグマが障壁の中にナパーム弾を撃ち込んでいく。自衛隊の戦闘機も障壁の中にナパーム弾を落とすと同時に燃料も投下される。

 障壁の中でアーマーモドラーの苦しそうな唸り声が止まるのは約1時間後となる。

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