始まり
束の間の平和
「おつかれデーーーース♪」
「おつかれーーーー」
「おつかれ」
モドラー討伐から2日後、ラウンジでジュースとお菓子で乾杯する3人はようやく疲れも取れ討伐の実感を感じることが出来始めていた。
「ねえねえ瑠璃、私の活躍見た! 見たよね!」
「シズズ、抜け駆けはダメデス。ルリリ、ワタシの活躍も見てくれましたカ?」
瑠璃は2人を見るといつも見せないような笑顔で答える。
「ああ、寧音もアネットも凄かった。俺なんか後ろから撃ってただけでごめんな。危険な事お前達にやらせて」
「お……」
「あ……」
「お、あ?」
瑠璃が2人を見たと同時に寧音とアネットが飛び込んでくる。
「おぉぉぉぉ! るりが、るりが私を労ってくれるうぅぅ」
「あぁぁぁぁ! ルリリがデレたデス! やっとデレたデスヨ!」
「ちょいやめ、やめろ、うわっ……やめて」
2人に押し倒され揉みくちゃにされる瑠璃。一段落したところでようやく2人が離れボロボロの瑠璃がソファーに座る。
「何はともあれこれで1年間は来ないはずだから数ヵ月は休暇取って来年に向けて訓練だな」
「ルリリは休暇中何するデスカ?」
「ああ俺は取り敢えず……」
アネットの顔を見て少し考えた瑠璃が口を開こうとした瞬間に寧音が口を塞いでくる。
「今、アネットに俺の実家に来るか? とか言おうとしたよね。安心して良いよアネットは私の実家に連れて行くから」
「なぬっ! ワタシはルリリの実家が良いのデス」
「長崎良いとこだよ~一緒に坂道上ろうよぉ」
「ワタシはルリリと一緒に東京の方が良いのデス!」
「東京?」
瑠璃がボソッと呟く。その呟きを聞き逃さなかった寧音とアネットが顔を見合わせる。
瑠璃は顔を下に向けて少し考えるような素振りを見せた後すぐに顔をあげると力なく笑う。
「やべえな俺。実家の場所を度忘れしそうになってるとか。相当疲れてるな」
「瑠璃……」
寧音が話すより先にアネットが瑠璃に飛び付いてソファーに押し倒す。
「この間お手紙書いてたのにもう忘れるとかどんだけ忘れんぼさんデスカ! これはもうワタシが一緒に行くしかありませんネ。
ええ、ええもう両親に紹介して結納デスヨ!」
アネットに押し倒された瑠璃がもがいているのを見て寧音が我に帰る。
「アネットどさくさに紛れてなにしてんのよ~ああ!? 顔近いって! ダメーーーーーー!!」
アネットを必死で引き剥がす寧音。その下で潰されながらもちょっぴり嬉しそうな瑠璃。
***
「このタイミングで補充か……信用されてないんだな我々は」
三滝が書類を眺めながらめんどくさそうにぼやく。
「4班の8位……君たち情報局は信用ならんね」
「はははっ、三滝指令はズバッとおっしゃってくれるから私は信用してますよ」
三滝の前に立つ細身で長身の男は心のこもっていない笑みで笑う。
そんな男を面白くなさそうに見る三滝を男は面白そうに見ている。
「使えるのかね、この子は?」
「ええ勿論。当時は8位ですけど最近急成長致しまして2位にも劣らないかと」
ますます面白くなさそうな顔をする三滝。
「2位? 1位の子、常門はどうしたのかね?」
「あの子はうちの秘蔵っ子ですから。それにまだ投入時期ではないでしょう」
「ふん、気に入らんな。お前のところに良いように動かされてる感じがな」
男はわざとらしい仕草で顔を押さえ困った感じで言う。
「動かすだなんてそんな。相変わらずきつい言い方されますね三滝指令は。
お互い仲良くやっていきましょうよ。人類としてモドラーに力を合わせて対抗しましょうよ」
わざとらしく笑う男を
***
港の前に女の子がビシッと敬礼をする。
ただビシッと決まったのは敬礼までだった。
「あの、えっと本日付けで配属になりました。
敬礼を返していた港が翠がシドロモドロで話すその姿を見て脱力する。
「私は港 亜衣。初対面でなんだけど大丈夫? 一応軍な訳だしさ」
「は、はい。がんばります」
両手をグッと握って大丈夫だと体全体で示してくる。それを今だ呆れた顔で見る港に声がかけられる。
「港さんあんまりいじめちゃダメですよ」
「なっ! 佐伯くんは仕事ちゃんと仕事する!」
横から佐伯と呼ばれた港の後輩が茶々を入れるが港に怒られて退散していく。
「ったく。若い子が入るとすぐこれよ。まともな男はいないのかしらね」
ぶつぶつ文句を言っていた港は翠の存在を忘れてたことに気付き前を見ると翠はキラキラした目で港を見ている。
「す、凄いです! 男の人にもビシッと言えるなんて。私がんばります! 港さん目指してがんばります!!」
「そ、そう……まあね。今日は初日だし最初から出来る人間なんていないからね。よし! 一緒に頑張ろうか」
「はい!」
元気よく挨拶する翠をつれて港が施設を案内する。
***
「こっちは操縦者の住むエリアになるんだけど、これだけ広いのに3人しかいないのよね」
「操縦者って今回モドラーを撃破した方々ですよね。アネットさんと瑠璃さんは候補生時代に見たことがあります」
ちょっと興奮した感じで翠が喋り出すとちょうど向こうから瑠璃が歩いて来て、港たちを見付けると近付いてくる。
「こんにちは、港さんこんなとこ来るなんて珍しいですね」
「うん、こんにちは。新人の子に施設を案内してるんだけど瑠璃くんはこの子知ってる?」
瑠璃が港の後ろに隠れて瑠璃を覗いている。
小柄な子でショートの髪とバッテンの髪留めが可愛らしい。
おどおどしながら翠が瑠璃に話しかけようとするが必死な感じが伝わってきて健気さを感じてしまう。
「本日より配属されました天月 翠です。あの、瑠璃さんですよね?」
「ああ、はい。どこかで出会いましたか?」
翠はちょっと残念そうな表情を見せるがすぐにキラキラした目を輝かせる。
「候補生時代に少しだけお会いしたんですけど、その、瑠璃さんは3班の1位で凄い人だなあって声をかけたことがあるんです」
「ああっと……ごめんなさい覚えてない」
「じゃあ、い、今から覚えて貰えますか? 天月 翠のことを!」
「あ、ああ覚えるよ」
パアッと明るい顔、花が咲いたという表現がピッタリな笑顔を見せ喜ぶ翠を見て可愛いと思ってしまう瑠璃。
(なにこの子、意外と大胆と言うか。私に無いものを持ってる!?)
そして港は翠の行動に驚くと共にちょっぴり感心してた。
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