2時間目
「これは基本中の基本だが岩の状態、いわゆる『卵状態』これを攻撃、撃破することは可能だが行うことは禁止されている。なぜだ? ……筑城」
「おぉ、この流れで私に当てるなんて勇者ですかな諸星さんは」
筑城にそう言われるが、引きつった笑顔で耐える諸星。
「それは、スポーツマンシップに乗っ取ってないからです!」
「違う! 真面目なトーンでサラッと嘘つくな」
「てへへへ、卵を壊すと数ヵ月後に全然関係ない場所に卵が出現しちゃうからです! ですよねファイナルアンサー!」
渋い表情の諸星が講義を淡々と進める。
「そうだ、付け足すと。過去に一度破壊した際、鹿児島県の獅子島に出現し3日で孵化、甚大な被害をもたらしている。
次に卵を破壊したら次も獅子島に現れるのか分からない、それにもし他の国に出現してしまった場合、日本の責任を追求される可能性もある。
この事から青ヶ島に出現し孵化したものを叩くのがセオリーとなっている」
「難儀デスなぁーー」
アネットの呟きは無視され諸星が講義を続ける。
「じゃあ次だ。俺らが今いる静岡だが、ここは敵を迎え撃つ最終防衛ラインとなっている。そしてここはお前らの乗るMOFU KUMAにも関係する。この事について答えろ、東内」
筑城とアネットが諸星にブーイングをするが無視して東内が答える。
「はい、この駒河湾と相模湾の間に突き出すように飛び出ている弓ケ浜から敵を向かい入れ天城山を自然の要塞としモドラーの進行を阻害します。
この辺り一帯に住民は住んでおらず軍の関係者のみとなっています。これにより前回の襲撃から国民の被害はゼロになりました。
後、MOFU KUMAが有利に戦い易いように土地の改良や施設が設置されています」
筑城とアネットがヒューーヒューーと東内を称えるが無視して講義は続けられる。
「流石東内だ。そう、モドラーに天城越えをさせない事が重要となる訳だ。この自然の要塞に加え人工の特殊合金の壁で完全に進路を防いでる。
そして元々人が住んでいた場所はモドラーを迎え撃つため迎撃システムが配備されている」
「そしてだ──」
諸星が講義を続けようとしたときチャイムが終わりを告げる。それと同時に2人の女子は勢いよく立ち上がる。
「よーーし! ごはんだぁ!!」
「いくデス! 今日の御日替りゴハンはなんデショな?」
筑城とアネットが小躍りしながら教室を出ていく。残された男2人は目が合うと大きなため息をつく。
***
「メンチカツ美味しぃーー♪」
「シズズこのハンバーグもうまいゾ! ホレあーーん」
大きく口を開ける筑城にハンバーグがインされる。
「うみゃーーい! ほれアネットもメンチカツお食べ」
東内は騒ぐ2人から少し離れたテーブルにしょうが焼き定食の載ったお盆を置くと冷めた目で女子2人を見る。
「ったくなんであんなにテンション高いんだあいつらは。もっと真面目にやれっての」
「るーーり♪」
不貞腐れる東内がミニトマトを口に放り込もうとしたとき突然後ろから抱きつかれる。
「ほらぁ瑠璃、1人で食べないよ。私達と食べようよぉ」
「なっ、ちょっと離せって」
筑城に後ろから抱きつかれ慌てる東内。
「オヤーー? ルリリ顔赤くないデスかあ?」
アネットの言葉に筑城が東内の顔を覗き込む。
「ちょっ、近いって、離れろよ」
焦る東内を見てアネットがニヤリと笑う。
「ハハーーン、ルリリさてはシズズに抱きつかれて胸の感触を堪能シテマスな。ズバリ欲情中! デスッ」
アネットが名探偵が「お前が犯人だ!」と言うときみたいなポーズで東内に人差し指をつきだす。
「な訳ねえって!」
「ほほーん、瑠璃くんはお姉さんの色気に欲情中ですかぁ」
筑城が更に強めに抱きしめると東内は恥ずかしそうにもがく。
「アネット! 合体技ですぜ!」
「おぉ! デス!」
筑城が左からアネットが右から東内を挟む様に抱きしめる。
両肩にあたる感触と2人の顔が近いことと、女の子の香りで実は嬉しい東内だが、悟られまいと意識を手放し無心でこの天国の様な苦行を乗り越えるのだった。
***
諸星がドアをノックすると中から「入りたまえ」と声がする。
「失礼します」
諸星が部屋に入ると椅子に座る恰幅のいい初老の男に軽くお辞儀をする。
「
「ご苦労、どうだね彼女達は? 使えそうかね」
「はい、報告を兼ねて評価をお伝えします」
諸星がタブレットを取り出すとデーターを三滝のパソコンに送る。
三滝が内容を呟くように読み始める。
────
『
性別 女 年齢18歳 身長157cm 髪は茶色 他は略
3人の中で1番運動神経が良い。成績もトップ、性格は明るく自分勝手な性格に見えるが、よく他人を見ていて的確な行動がとれる。
MOFU KUMA 1号こと『ファイターグマ』に搭乗。近接戦に長けボタン配置の記憶力と的確な操作には定評がある。
ただし遠距離武器の扱いは苦手である。
* *
『アネット・アダムソン・ルコント』
性別 女 年齢19歳 身長168cm 髪は赤 他は略
日本人とフランス人の血が混ざっているハーフ。3人の中で1番全てをそつなくこなす器用な子。手先も器用で物を作るのが得意。機械にも詳しくMOFU KUMAの構造にも一番精通している。
MOFU KUMA2号こと『デェクスタァラァスクマ』器用なと言う意味だが本人は納得しておらず『ファンキーグマ』と称し黒のボディベースの2号の目の周りに星のペイントを施す。
これが国民へのデザインお披露目会にて思わぬ好評価を得たため急遽、国民からデザインを募集しアネット監修の元MOFU KUMA3体にペイントが施されることになる。
アネットは操縦でも器用さを発揮。
遠・中・近すべてにおいて優秀な成績をあげる。戦闘では中盤を守りあらゆる敵に対応する。
* *
『
性別 男 16歳 身長170cm 髪は黒 他は略
唯一の男。性格は真面目で少し頭が固いところがあるが、観察眼に長けており周囲の状況を的確に判断するのが得意。
視力、動体視力が抜群に良くそれを生かしMOFU KUMA3号こと『スナイパーグマ』に搭乗する。
遠距離からの狙撃が得意で尚かつ周囲の索敵を行い2人に戦場の情報を伝える役割を持っている。
────
「なるほど。バランス良いチームじゃないか。不謹慎だけどこれはモドラー襲撃が楽しみになるね」
三滝の言葉に諸星の眉がピクッと動く。そんな諸星を見て三滝が薄い笑いを浮かべる。
「この3人ならやれるだろう。完璧な防衛をね」
「はいそう信じてます」
まっすぐな目で返事をする諸星に背を向ける様に三滝が大きなお腹を抱え立ち上がると、窓へ歩きカーテンの隙間から外を見る。
「そう本当の防衛……いや我々の勝利、今度こそ終止符を」
諸星に聞こえない声で三滝が呟く。
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