モフ★クマ ~怪獣戦闘記~
功野 涼し
プロローグ
1時間目
2285年人類は未だに地球で生命を営んでいた。
空飛ぶ車や人が乗って操縦する大型の建設用ロボットなんて物こそあれど、2000年初期と比べそこまで大きな進歩はしておらず、宇宙へ飛び立ち他の星へ移住などまだまだ現実的ではない世界。昔映画で見た未来は中々実現しないのだった。
そしてここ日本においては法律や利権によって車が空を飛んだりする事も出来ず、人工知能搭載アンドロイドなども広まらない、世界からも遅れをとっているの状況だった。
2285年 7月15日 PM18:47
東京湾から約385km離れた青ヶ島の近くで海底火山が起きる。予兆などなく突然の噴火だった。その噴火により島を取込み大きな島を形成する。
噴火が収まり島に上陸出来るようになった2286年 6月8日 日本は島の調査を開始する。
その際、全長5メートルの表面がゴツゴツしている岩の様な球体を発見する。
岩はずっと昔からそこにあった様に、そっと島の地面に佇んでいた。
日本を中心とした調査団が派遣され岩の調査が開始される。
2286年 8月5日 AM10:36
調査中突然岩に縦のヒビが入りパックリと割れる。
中から体長3メートルのワニの様な生物が現れる。
外観からワニと称するが足は体の真下に付いており、まるで獣の様に歩行し活動を開始する。
同日 AM11:25
岩から現れたワニに対話等を試みるが知性は無いと判断。自衛隊が主体となっての捕獲作戦が開始されるが、後にその時の様子を現場の人間は地獄の様だったと語る惨劇となる。
捕獲用ネットを突き破って補食行為により隊員の一人を頭ごと粉砕。その後も攻撃的行為を繰り返す。
この行為を現場で生命の危機と判断し射殺。
死者1名、重傷者5名、軽傷者11名の被害をもたらす。
これを『
この記念日から2年後再び地震と共に島に全長8メートルの岩が出現する。
前回と同じく岩から体長5メートルの2足歩行のワニが現れる。
これを地上戦力を用いて島内で討伐。
この5メートル級が1年に1体、5年間出現し続けた。
ここで一旦出現が無くなるが5年後、10メートル級が出現し1年毎に1体、計5体出現する。
そしてこの10メートル級は海を渡り日本の静岡県の駒河湾と横浜県相模湾の間に位置する静岡県下田市、弓ヶ浜に上陸する。
その3年後、20メートル級が1年に1体の計4体。
そこから7年の間が空き30メートル級が5体、5年間出現。これらを多大な犠牲と被害を持って討伐してきた。
この生物を青ヶ島にて発見したこと外見が特撮の怪獣に似ている事を踏まえて、チェコ語で『青』を意味する『モドラー』と命名。
人間も指を咥えこの現状を見ていたわけではない。5メートル出現級登場辺りから 対兵器の開発に着手する。
死体の体を調べ効率よく貫く弾丸の開発、それを発射できる専用車両、戦闘機を開発。
ただモドラーも体長が大きくなるだけでなく外皮、肉質の変化が確認され弾が効きにくくなる。
映像の解析からも骨格や筋肉にも進化が見られ可動域や力などの上昇が確認出来た。
そしてなにより20メートル級の2体目から口から熱線を吐くようになり上空の戦闘機に攻撃を仕掛けようとしてきた。
ただこれは射程距離が短かった為、驚異とまではなり得なかったが、遠距離攻撃を仕掛けようとする行為は人間側を驚愕させるには十分であった。
そして30メートル級が遂に熱線で戦闘機を打ち落とす。
ただこのとき日本が建設用ロボットを軍用に改造し人間が乗って操縦するロボットが投入され、この戦闘ロボがかなり優秀な戦果をあげる。
この戦果を持って日本政府は急ピッチでモドラーに対抗するロボットの開発が進めさせる。
建設ロボの角のあるボディーは耐久性と強度、敵の攻撃に対応する為丸いボディに変更。丸い顔に丸い体、丸い肩から団子の様に丸い腕が2つ伸び丸いボディから丸い足が2つ重なり最後に平べったい足が付く。
指は繊細なものを付けると故障が多く整備面も悪くなる事から爪が3本装着され、摘まむ・刺すが出来る。
高い戦闘力と耐久性を追求した結果全体が丸い可愛らしい外見となる。
この丸い戦闘用ロボットが30メートル級の2、3体目を撃破する際大きな戦果をあげる。この結果に人々が安堵し喜ぶ。
だが次に現れた4体目のモドラーと操縦者の目が合った瞬間、操縦者は発狂する。これは戦闘機、地上の部隊も同じく発狂する者多数出たことにより作戦続行不能に陥る。
これにより地域住民、軍関係者を含み多大な被害を被り、多くの死者、行方不明者を出すことになる。
やむ無く海上からの遠距離ミサイル攻撃を決行し弓ヶ浜から下田の地形を変えるほどの被害をもって討伐に成功する。
この現象はモドラーが何らかの精神的攻撃を人間にしているものと推測された。
これを『眼力』と呼び、目を直接合わせての戦闘を避ける必要性が出てきた。
このモドラーの眼力に対抗すべく研究が……
「おい!
「ほい?」
教壇に立ち後ろのプロジェクターを背に男が、机にうつ伏せになりヨダレをたらし爆睡する茶髪の少女を見て呆れた顔をする。
「何が ほい? だ。もういい、アネット対抗する手段はなんだ?」
アネットと呼ばれた赤髪の少女が元気よく立ち上がり手をあげる。
「へい、へーーい!
怪しい日本語で元気よく答えるアネットは諸星と呼ばれた男の話も聞かず両手で大きな丸を頭上に作って正解をアピールしてくる。
諸星は顔を手で押さえ諦めたような表情しながらプロジェクターに映るページを進める。
「ああ、正解だ。ただ完全に眼力に対抗出来る者で頭脳、運動神経、操縦技術、精神的強さを全て備えた者はお前ら3人だけだ。
それで
東内と呼ばれた少年が少し困ったように諸星を見る。
「教官、あれはどう考えても強引すぎだと思います。あいうえお作文じゃないですか」
諸星は咳払いをして頷く。
「俺もそうは思うが、そのなんだお偉いさん達はああ言った言葉遊びが好きなんだ。覚えてるなら言ってみろ」
「はぁそんなものなんですか。それじゃあ言いますけど──
です。これらの頭文字を略して──」
「モフクマでーーす!」
東内が答える途中で筑城と呼ばれた少女が答える。
「イエーーい!!」
「さすガデーース!!」
筑城とアネットがハイタッチをする。
そんな2人を諸星と東内は呆れた表情で見る。
「お前らな……もういい。次だモドラー達は何処を目指していると推測されている?」
「富士ヤマデ~ス!
「ピンポーーン、アネット正解! しかも何気に高さまで答えちゃう」
再びハイタッチをする2人に諸星は死にそうな顔をすると一言だけ発する。
「筑城、お前寝てろ」
「え~もう睡眠バッチリなんで寝れませんよ~」
悪びる様子もない筑城に諸星は講義終了の鐘が早く鳴って欲しいと祈るのだった。
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