龍門館の慎之介・天空の小柄
近衛源二郎
第1話 天空の小柄伝説
南の空に一際輝く南十字星。
サザンクロスと呼ばれる、その星の下。
海の底に赤く光を放つ小柄。
日本刀の大刀の鍔と鞘を飾る小刀の小柄。
本来、装飾用であるため、武具とは言い難い。
それでも、緻密精巧な装飾が施された珍しい小柄かが、サザンクロスこと南十字星の下の海の底に沈んでいるという伝説に、幾多の英雄が挑んだが、未だにその実物を見た者はいない。
一説には、インファント島に住むと言う巨大な蛾の怪物が守っているというおとぎ話まであるほどの秘宝。
そして、その小柄を手に入れた者には、毘沙門天と不動明王の力が与えられて、天下の覇権を握ることができるという伝説。
まともに考えると、バカバカしい話しだと気づくはずである。
飛行機は、当然無い。
舟と言っても、木製の小さな帆船くらいの物。
サザンクロスの存在すらわかっていない。
地球の南半球がどうのこうのとか、海を南に向かうという選択肢がなかった時代に、どうやって、南海の孤島に向かうという伝説になったのだろう。
インファント島と言っても、それ自体が架空の島ではないか。
挙げ句のはてには、巨大な蛾の怪物。
モスラであろう。
日本の映画会社によって、産み出された架空の島と架空の怪物ではないか。
よしんば、南十字星の下の海底に小柄が沈んでいるという伝説があったとしても、おとぎ話でしかない。
『インファント島は無いということは、どうやって小柄を探そう。』
真面目に悩んでいる馬鹿がいる。
霧隠慎之介、幻の十字手裏剣を手に入れて5年。
次は、天空の小柄を狙っている。
『インファント島が無いのなら、近くの島に行って、情報を集めようか。』
慎之介は大真面目。
『近くの島と言っても。』
月山宗幸と風磨小太郎は困り顔。
『グアムくらいかな。』
月山宗幸は、そのくらいで留まってほしい。
『いや、グアムじゃ、インファントに近いとは予想できないべぇ。』
慎之介、意外に詳しい。
『南海の孤島だべ。
なら、ビキニ環礁くらいま
で行かなきゃだべさ。』
『お前。どこの方言やねん。
ビキニ環礁って、なんでそ
んな島になる。』
小太郎は位置関係がわかっていない。
『だって、モスラが守ってた
んろ。
だったら、ライバルのゴジラ
が水爆実験にあったビキニ
環礁だべさ。』
『冗談じゃねぇぞ。
モスラの次はゴジラかい。』
宗幸と小太郎は、ますます困ってしまった。
『まぁ、どっちゃにしてもグ
アムまで行かんと。
ビキニ環礁って、今はマー
シャル諸島共和国だべ。
首都のマジュロまでの直行
便が飛んでへんのだべさ。』
宗幸と小太郎は、あきれた。
『お前、飛行機で行くつもり
なのか。
飛べるくせに。』
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