シェルター・スケルター

迫峰 茉芙歌

I

あの日から世界は変わってしまった。世界が「コロナ禍」とか「COVID-19」と呼ばれる災厄に見舞われてから。特定の1日を境に変わったわけではないし、各国政府が様々な対策を講じるのもまちまちのタイミングだったから、「あの日から」というよりは「あの頃から」というべきだとは思うけど。

人々が長の巣ごもりを終え、穴蔵から這い出してきた時に外界の景色が何か違っているよう感じた時から。確かに世界は変わったんだと思う。

巣ごもりといっても、完全に他との接触を断って密室に閉じこもったわけではないし、屋外と自由に出入りできて散歩もしたし、近所に買い物だって行けた。インターネットを介して友達や親戚、パパは会社の同僚とも連絡を取り合えたしリアルタイムにネット会議だってできた。もちろんテレビという媒体もしぶとく生き残ってそれまで通りに放送を続けていた。

でも、「自粛解禁」のお達しが出てから、価値観というのか、これまで当然と思ってきたことを考え直すよう余儀なくされた感じはある。「もう外出も外食も外泊もご自由に」と言われて初めて家の外に出た時の隣近所の人の顔も目も怪訝そうに、それでも晴ればれだったように見えたけど、久々に見る太陽をやはりこれまでより眩しそうに眼をすがめて外の景色をきょろきょろ見回していたけど、「本当に昔と変わりはありませんか?」と問いかけながら家の外ににじり出てきた、というのが外出規制解除の時の僕のイメージだ。

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