僕らが魔法使いに復讐する5つの理由
中谷キョウ
プロローグ
非常に険しい山の奥深く。
その朱色に染められた鉄扉は固く閉ざされていた。
まだ、夜の帳が降りたばかりの午後7時。4人組の男が現れた。
彼らは鉄扉の前に立つと静かに何かを待つ。
反応はすぐにあった。
【何用だ】
低い男の声。そこには何も感情が
機械的で淡々とした音だった。
その声を聴いて、彼らの中の一人が歩み出た。
「俺は東山悠介。貴様を殺す男だ」
その青年には深い感情があった。暗くて重い黒い感情が。
中肉中背なのにその威圧感だけで人が死にそうなほどの迫力。
青年……悠介は黒いロングコートを着て腰に小さなポシェットを付けていた。
その長く黒いロングコートの下には直角三角形の袋をぶら下げており何か物騒な物を
【ほう、我が赤色の魔法使いだということを知った上での挑戦か?】
感情のない男の声はただ淡々とそう言い放った。
悠介は答えなかった……いや、答えなどとうに出ていた。
スゥと静かに鉄扉を差し向けた右手には直角三角形の袋から出てきた物騒な物だった。
【なるほど……よかろう。お前たちの力、試させてもらう】
男の声が終わると共に鉄扉が静かに動き開いた。
鉄扉の先は暗闇が広がっている。まるで闇の淵に誘い込んでいるかのようだ。
ふと、その暗闇に光がともった。橙色の光は炎の色。道の先にある大きなロウソクに火が灯ったのだ。
悠介は物騒なものである拳銃をしまいふぅと息をついた。
悠介の隣にいた青年、深山鬼灯は悠介と同じような黒いロングコートと腰に小さなポシェットを付けていた。
鬼灯は小さなポシェットから小さなフラスコに蓋をした物を取り出した。
そのフラスコの中には液体状のものが詰められており鬼灯は勢いよく地面に叩きつけた。
『巡れ、巡れ、巡れ……』
地面に腰を下ろし同じ言葉を繰り返し呟いた。
後ろにいる渡坂孝太郎は黒いロングコートと小さなポシェットまではまったく同じ格好だったが背中に背丈ほどの巨大な剣を担いでいた。
鬼灯が言葉を呟いている間に背中から両の手へと大きな剣を構えた。
3人の横でただ棒立ちになっているのが佐戸莉央だ。
彼は3人の行動を冷めた目つきでただただ見守っていた。
やがて、鬼灯がつぶやくのをやめた。
「どうだ、鬼灯」
悠介が立ち上がった鬼灯へ質問する。
「……罠はなさそうだが人ではないものがいる」
「そうか……では、行くか」
そうして、4人は魔法使いを殺すために鉄扉を潜っていった。
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