Dice-06:前準備は/簡潔に
<『第一局』は簡易的なそちらの『シューター・ダイスボウル』に、各々の『
なんかもう説明を滞りなくこなしているように見受けられる主催者……初期のガタガタ感は一体何だったんだ……やはり我々をたばかるためとしか……
「……見た感じ、サマ的なものが仕掛けられているとは思えねえな……出目を操作できそうにも見えねえぜ……そこは本当に『運任せ』なのか? わからねえ……」
と傍らからしゃがれ声が。もう完全に二人並んでその何とかという「装置」じみたモノを前に普通に会話しているのだが、黒服らからお咎めが入るということはやはり無い。それに周りを見渡すと結構ツルみ始めている面子が他にもちらほらと。元からの知り合い……というわけでは無さそうだ。気を遣ってるがテンション高いといった初対面的やりとりの感じがそれと思わせる。さらには男女の組み合わせも出来たりしていて、「コレ」そっちのけで盛り上がったりしているのも……大丈夫か?
とは言え「1000万円の負債」との言葉を受けてもまだぴんと来ていないのは僕も同じであるわけで。この現実感の無さ……何か、この「今」も全て例えば配信なんかが為されていて、それを金持ちの好事家らなんかがワイングラスをくゆらせながら豪奢な肘掛椅子に座って睥睨しているかのような、アオナギも言っていたそんな「観察」の気配を、主催者からはもちろん、その外部からも臭うように漂ってくるわけで。それにどのような益があるのかは分からないが。
初っ端の初っ端に「実験室」とのたまった主催者も、何かその……この「サイコロ振り」そのもので無く、それに付随してくる諸々……「人間」をわざわざカラませるということ……に着目したいとかそんなことを言及してたよな……だとしたらこれの「負け」というのは本当はノーリスク?
……いやいや、そう考えてしまうことは早計だ。
「意識」……「自意識」。結構繰り返されていたそれらの言葉も気になる……まあともかくどうともしがたいことばかりだ。であればもうさっさとサイコロを振って委ねるしかないのか……運を天に。もう何かままならない/まとまらない思考に翻弄されっぱなしって感じだが、腹を決めるしかないようでもあり。先ほどより黙考しているアオナギからも色よい言葉は聞け無さそうであり……よし、とりあえず現況把握といくか。
「ボウル」と称されていた直径30cmほどの半球形の「装置」は全てアクリルのような材質のもので構成されていて、その全てが無色の透明。半球直径から相対する二方向へと、筒状のものが伸び出ている。ここから「ダイス」を投げ入れるのだろう……半球内には仕切りも何も無いので、同時に投げ込まれたダイス同士がぶつかり合って干渉する……ということはありえそうだ。まあ狙って出来そうでもないし、ベーゴマのように相手を弾き出せば勝ちということも無いはず。そもそも半球は「筒」からの5cmくらいの投入口以外は密閉されている。チンチロリンでいうところの「ションベン」も無さそうだ。
やはり、運くらいしか乗っけようも無さそうな「対局」形式と思われる……であればもういくしかないのでは? 必死そうに何か考え込んでいるアオナギのテカる長髪の後頭部を見つめながら、僕はそう結論づけてしまうことしか出来ていないが。
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