Dice-02:数字割り振りは/無作為に


<ゼ、『0から9』までの数字をどれでもいくつでも使ってよく!! 六面の数字の合計が『21』となるように振り分ける組み合わせの数はどのくらいになると思いますか? みみみなさんッ!!>


 ちょっと興に乗ってきたみたいだ。主催者の言葉も若干滑らかに、声量のボリュームも心なしか上がってきたようだが、その内容は未だに如何せん掴めない。


 そもそもそんな事を考えたことも無いから見当もつかない。「合計」が制限されていることから、単純な組み合わせでも算出するのは出来なさそうだ。


 が、少し考えてみる。「0から9」……こういう場合は極端な例から考えた方が良さそうだ。まずは最大の数字……「9」を極限まで盛り込んだ組み合わせ……とそこまで来て、「合計21」なら、「9」は2つまでしか組み込めないことを悟る。9が2つなら、残りは「3」。つまり「9・9・3・0・0・0」というのがいちばん偏った組み合わせだろう。


 逆にいちばん「平坦」な組み合わせは……「4・4・4・3・3・3」か。うん……まあそれが分かったところで総数にはたどり着け無さそうだが。それよりも、その中の「最強の布陣」がどうとか言ってなかったか? その組み合わせの中の強さを……どう決めるっていうんだ?


<総数はなんと『174種類』ッ!! 奇しくもいまこのホールにいる皆さまと同数なのでございます>


 説明は続くものの、いやいや。奇しくもも何も、お前の匙加減じゃあないか。しかし「174種類」と聞いて、そして今、頭の中で「六桁の数字」を並べたことで、何となくこの胸の「プレート」に刻まれた数値の意味が分かったような気がした。


【068:855300】


 「068」は、174通りのうちの通し番号だろう。その後の六桁の数字は……そう、「目」の数を表している……ということになるはず。


<ウフフフフ……気付かれた方もいるようですね……そぉあうッ!! 胸のプレート……実はもう既に、あなた方に『出目』は割り振られているというわけですな……あくまでこちら側で『ランダム』に振り分けさせていただきましたよ……そこに作為性は無いと、そのことをまず把握いただきたい……>


 段々と主催者が流暢になってきている気がするが、その分、正体/得体が掴みづらくなってきた気もする。いや、そこは置いておこう。「これ」を使っての「ゲーム」? 「勝負」? そのことに何の意味が?


<もちろんッ!! そんなことはコンピュータにでもやらせればものの三分ほどで膨大なシミュレートをしてくれることは百も承知!! ですがそれに人間の運やら思考やらが絡み合ったら? とんでもなく面白いことが起こりそうな気配を感じたのですよこの私はッ!!>


 流暢はいいが、だいぶ陶酔も入ってきたな。そんな独りよがりなコトのために、この「174人」の人間が……どんな手段を使ったか分からないし、分からないところがまた怖ろしいのだが……集められたというわけか? どんな酔狂だよ、と思う以上に、それを遂行できているということに、この主催者なる人物の、外面からでは計り知れないほどの底深さを感じる。


 場にはいつの間にか静寂が降り落ちて来ていた。何となく、この場の雰囲気に呑まれてきた感が、ある。しかしてまだ底は見えないだけに、ただただ傍観の構えの僕がいるだけであって。


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