第66話 黒幕発覚

(※3人称視点)


 時刻は19時半。太陽が沈み、辺りは薄暗い。住宅街からは無数の黄色の光が鮮やかに存在感を出す。


 それら同様に、1つの高校でも限定された部屋からのみ光が放射されている。


 1人の男が、電気が存在しない廊下を歩く。暗闇が要因で顔や髪色は窺えない。ただ、ある教室に向かうことは歩調から推測可能だ。


 床に対して履き物が直接的にぶつかる音が廊下にわずかながら木霊する。そして、ある場所に辿り着いたところでその音は途絶える。その場所は家庭科室だ。


 男は、あらかじめ職員室に足を運び、目の前に存在する教室の鍵を借りてきた。「家庭科室に忘れ物をした」といった嘘を吐いて。


 鍵が差し込まれ、ドアが開放される。


 男はためらうことなく部屋に入ると、まず設けられた電気のスイッチをすべて押す。


 輝かしい光が部屋全体に拡大する。


 男は、その情景を他所に、1つのイスを机から取り出し、黒板の付近に置かれる掃除用具入れの目の前まで歩を進める。


 5秒ほどすると、持ち上げたイスを床に下ろし、それに足を載せる。その結果、目線が誰から見たとしても明示的に高くなる。


 男は、イスの力を借りた上で、掃除用具入れの頭頂部を確認する。そこに彼の目的の物があるのだろう。


 しかし、そこには男が予想だにしない光景が醸成されていた。なんと、掃除用具入れの頭頂部には、渦を巻いたほこりやごみしか見受けられない。


 男は動揺を露にし、イスから降りると、次は黒板へと行く。


 また、男は、もしかしてと思い、イスを利用し、目線を変化させると、黒板の上方を確かめる。そこには、薄い物を載せるスペースが存在するのだ。


 しかし、目的の物はなかった。今現在、男に対して予想外の事態が発生している。


「こんな時間に探し物?もしかして、探しているのはこれじゃないかな?」


 後方のドアが勢いよくスライドされ、スマートフォンを手で掲げた赤森敦宏は室内に差し掛かる。


 先ほどまで家庭科室に身を置いていた男が、音を辿り震源に目線を変更する。


 赤森敦宏の視界にその人物の容姿や背丈、髪色などの特徴が捉えられる。


 紺色の長い髪、身長170センチぐらいの背丈をした高青年の姿が。


「やっぱり君だったんだね」


 赤森敦宏は悲しげな表情を惜しみなく顔に出現させる。


 それもそのはずだ。なぜなら、彼の目に映ったのは、中学校時代に同じ部活に所属していて、少なからず尊敬の念を抱いていた人物だったからだ。


 野水大和。それがその人物の名称。

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