第27話 発見

(※西宮寺香恋視点)


 私、西宮寺香恋は、今日掃除当番だったため、教室で出たゴミが入っているゴミ袋を右手に持って、ゴミ捨て場に足を運んでいる。


 私は、現在、昇降口で上履きから靴に履きかえたばかりである。


 そして、昇降口から歩いて20秒ほどで、ゴミ捨て場に到着した。


 ゴミ捨て場に到着するなり、施錠されたロックを開けて、トビラを開く。そして、中に入り先ほどまで、右手に持っていたゴミ袋を放り込むように置く。


 ゴミを置いた後、トビラを閉めてカギを閉める。


 仕事が終わったので、部活に向かうとした矢先。


「あいつ、まだ倒れているんかなー」


 そのような声が私の耳の中に飛び込んでくる。


 声が聞こえた方向に目を向けると、この学校では有名なヤンキーが何やら会話をしている。


 だが、別に私には関係のない話だと思うし、そもそも興味もないため、気にせず部活が行われている体育館に行くために、体育館が存在する方向に足を向ける。


「だがよー、あいつ、最近特に目立ってたよな」


「それな。まあ、最近、学年でもトップクラスの人気者と良く一緒にいるんだもんな」


 最近、人気者と良く一緒にいる?


 その言葉に引っ掛かりを私は覚えた。


「なんか、うざいんだよな。身長も低くて、顔も良いわけではなく、陰キャっぽい奴が目立っているのって」


「「それはわかる」」


「まあ、また今日みたいなことしようぜ。ストレスも発散できるしよ」


 盛り上がりながら話をしているヤンキー3人組が私の背後を通り過ぎてゆく。


身長が低い、顔が良いわけではない、最近目立っている。


 ヤンキー3人組の会話の中で出てきた言葉が引っ掛かる。それに、倒れている。

嫌な予感がする。


 私は体育館に向かうのをやめ、ヤンキー3人組が歩いてきた方向に足を向け、小走りで前に進む。


 まっすぐ進むと、野球部やサッカー部、ハンドボール部が利用する大きなグラウンドが一面に広がる。


 私は、グラウンドの中には入らず、人気がほとんどない道が存在する左の方向に足を運ぶ。


 そして、しばらく小走りで進んでいくと、誰も人がいないであろう裏路地みたいな場所があった。


 直感的にここに何かあるなと思い、そこに入った瞬間。


「えっ」


 誰かがうつ伏せになって倒れていた。また、その背中は見覚えのある背中だった。


「敦宏!!」


 私は急いで、倒れている敦宏のもとに駆け寄る。嫌な予感は当たったみたいだ。


「・・ううっ・・。その声は・・香恋・・」


 敦宏は私の声に反応し、言葉を返す。その声は、いつもとはうってかわり苦しそうだ。


「大丈夫!!私、先生呼んでくるから」


 私は内心焦っており、先生をこの場に連れてくるために、踵を返して、全力で歩を前に、進めようとした。


「大丈夫だから!」


 後方からそのような言葉が鼓膜を刺激した。


 声がした方向に視線を向ける。


 すると、敦宏は苦しそうな顔をしながらも、ゆっくり歯を食いしばって体を起こしていた。


「でも、傷だらけじゃ・・」


 敦宏の体は、ぱっと見では汚れているようにしか見えない。しかし、衣服で隠れた部分が痛めつけれていることは、敦宏の現在の表情を見れば、嫌でも察することができる。


「大丈夫だよ、これくらい」


 そう言って、笑顔を作る敦宏。その笑顔は無理して創っている笑顔だろう。しかし、私は何も言えなかった。なぜなら、敦宏が何も言うなと顔で訴えかけていることが理解できたからだ。


 そうして、私は何もできず、何も言えず、敦宏は重い体を無理やりにも動かしながら、私の横を通り過ぎていく。


敦宏が視界に見えなくなって1分は経っただろうか。


「なによそれ」


 私は、思わずそんな言葉を口にしていた。


敦宏が何をやったっていうのよ。何も悪いことはしていない。ただ、むかつくから暴力を振るわれた。


 ふざけている。


 許さない。犯人はわかっている。さっきの3人組だ。


 私の心の中で怒りの感情が爆発するようにどんどん溢れ出てくる。


 許さない。

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