第28話 敦宏と香恋が疎遠になった原因

(引き続き、西宮寺香恋視点)


 唐突だけど、私と敦宏は幼稚園からお互いに知っている、いわゆる幼馴染というやつだ。


 しかし、幼馴染といっても、漫画やアニメに出てくるザ・幼馴染といった関係ではない。家が近くで、幼稚園でも通学路が同じだったためである。


 そのため、特別、仲が良かったわけではなかった。一緒に学校とかはなぜか一緒に登校していたけど。なんでだろう。まぁ、家が近かったからじゃない。


 だから、私と敦宏はいつも一緒にベタベタいる幼馴染ではなく、一緒にいるときには会話をするといった関係性の幼馴染だった。


 このような関係性だったのは理由がある。私が敦宏に話しかけることが極端に少なかったから。


 私は、幼稚園、小学校とともに、敦宏に話しかけるのは、必要なときだけで、雑談や趣味の話をするために、自分から話を振った記憶は思い出す限り、頭の中に沸いてこない。


 それは、敦宏から私に話しかけることが圧倒的に多かったことを意味している。


 当時、現在もほとんど変わらないが、私は誰かと仲良くするために集団に属するといったことを幼稚園、小学校としていなかった。いや、現在もしていないか。


 でも、現在は、一緒にいる友達はいる。幼稚園、小学校のときは、本当に1人でちょこんとイスに座った生徒だった。いいように言えば、一匹狼だろうか。


 そんな当時の私に対して、幼稚園、小学校のときの敦宏は、今では創造できないが、積極的に色々な人に話しかけにいく生徒だった。純粋で笑顔が堪えない男の子だった。まぁ、明るかったけど、人気者ではなかった。陽キャでも陰キャでもない中間に位置する人間だった。


 さて、私の話に戻ろう。先ほど言ったように、当時の私は、学校で基本的に1人でいた。でも、小学生は中学生や高校生に比べて純粋だから、私が1人で座っていたら、それが珍しくて、興味を持ったのか、何人かの特定の女子が私に毎日、話しかけてきていた。


 めんどくさいと思いながらも、無視することはせず、話しかけられたら会話のキャッチボールして、会話をしていた。


 しかし、私がどこの集団にも属さずに、特定の女子に話しかけられているのが、気に入らなかったのだろう。私が、小学校6年生のときに、所属していたクラスのリーダー格で権力のあった女子が、私を孤立させようと“私に話しかけるな”と圧力をかけた。


 その結果、以前まで私に話しかけてきていた特定の女子たちは一切私に声をかけてこなくなった。それだけでなく、目も合わせない。多分、リーダー格の女子に脅されていたのだろう。


 私に話しかけたら、どうなるかわからないよ。といった感じでね。


 当時、小学校6年生の私は、この状況が私を孤立させるために生まれたものだと、小学生ながら理解した。


 でも、そのようないじめを受けている状況だったとしても、当時の私はいじめをあまり気にしていなかった。


 なぜかというと、私は孤立させられても大丈夫だという自信があった。


 しかし、その自信も1週間で木っ端微塵に砕け散った。


 私は1週間の間、学校で誰からも話しかけられるなかった結果、それが寂しい、いや、その孤独感に耐えられくなってしまった。


 ここで、私はひとりぼっちの孤独に耐えられないことを身に染みて感じた。


 誰からも、話しかけられない日々が、10日間続いて、私の心が限界になっていたとき。


 私に話しかけてくれたのが、敦宏だった。


 敦宏は、当時同じクラスで、誰も私に話しかけなかった10日間以前は、私に話しかけてくれていた数少ない人間の1人だった。でも、10日間は、敦宏も私に話かけてはいなかった。敦宏も圧力をかけられたのと周囲の空気を敏感に感じていたのだろう。


 それは、仕方がない。大体の人間は周囲を気にして行動するから。


 でも、敦宏は話しかけてくれた。こんなクラスの状況の中でも。


 そのとき、私は敦宏に救われた。敦宏に話しかけられたことで、私の心の孤独感はみるみるうちに無くなっていった。


 敦宏はそれから周囲の視線を無視するように毎日話しかけてきてくれるようになった。


 しかし、そのような状況は、長く続かなかった。


 1週間後。


 私が登校して、学校に行くなり(このときは敦宏と一緒に投稿はしていない)、以前に私に良く話しかけてきていた女子が私に話しかけにきたのだ。


 その女子が話しかけてきたとき、私は驚いた後、その女子に対して、怒りの感情を抱いた。


 しかし、その女子が懸命に謝ってきたため、怒ることはしなかった。


 あの女子が話しかけてきて、1週間が経った。


 クラス内の状況は、大きく変化していた。


 私は何も害は存在しない。しかし、私に話しかけにきてくれた敦宏が孤立させられていた。クラス内では、誰も敦宏に話しかける人はいない。敦宏の行動がリーダー格の女子の癪に障ったのだろう。そのため、敦宏は孤立していた。


 本当は、そのとき私が敦宏に積極的に話しかけに行く、または、私が1人で座って、話しかけやすい環境を作ればよかったのだと、いまさらながら思う。しかし、当時の私は、当時感じた自分がこなごなになるような感覚である孤独感を2度と味わいたくなかった。


 そのため、私は敦宏を助けもせず、自分を守るために、知らないふりをしたのだ。


 本当に情けない。自分が可愛いがために、何もしなかったのだ。


 それから、私と敦宏は誰も話していない。罪悪感があって自分から話しかけられなかった。


 敦宏が孤立したのは、11月ほどで、敦宏は11月、12月、1月、2月、3月の5カ月の間、クラスの誰とも話していない。

 

 私と敦宏が中学生になっても、1回も話をしなかった。敦宏と目が合うことは何度かあったが、それだけだった。


 中学校の中で敦宏を見かけたとき、敦宏は毎回誰かと一緒にいた。多分、あのいじめが原因だと思う。


 そして、時は経ち私たちは高校生になった。運命というべきか、私と敦宏は同ジ高校に入学した。1年生のときは1回も話さなかった。


 しかし、高校2年生の春、新学期になったとき、体育館や体育館の近くで男子バスケ部に所属していた敦宏を見かけなくなった。その上、常に誰かといた敦宏が1人で行動しているのを新学期になって良く見かけるようになった。


 そして、私は勇気を振り絞って敦宏に話しかけた。


「1人で帰るって、ボッチは寂しいわね」と。


 何様だよと思う。でも、優しい言葉がかけられなかった。これは、私の性格の問題だ。本当に心が子供だと思う。あのとき、助けてもらったのに。


 今日、敦宏がボコボコにされた。何も悪いこともしていない。


 今回は見ないふりはしない。


 あいつらは、また同じことをするはずだ。絶対に潰す。今度こそ私が敦宏を助けるんだ!!

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