第12話 バチバチ?


「敦宏(あつひろ)、その女の子なに?」


 香恋は俺の悪口を言っていたバスケ部の2人を追い払った?後に、俺にそのような質問をしてくる。


 え、なんでそんなこと聞くの?


 俺は内心そのようなことを考えてしまう。


 少し考えた末に答えは出なかったので香恋の質問に答えることにする。


「香恋、この人は朝本さん。俺と同じクラス・・」


「そんなことはどうでもいい!」


 香恋はやや怒気が籠った声で俺の言葉を遮り一蹴する。


 えー。違ったのか?じゃあ、どう答えればいいんだよ。それに、機嫌が悪いのか?目つきは普段より鋭い。


「香恋?それに敦宏。・・・お互いに名前よび・・なんで?」


 それに、朝本さんはボソボソと何かをつぶやいている。内容は聞き取れないので分からない。まあ、朝本さんが何をつぶやいたのかは気にしないようにしよう。聞いたらなんか面倒くさいことになりそうな予感がするから。


「なんでその朝本さんが敦宏と一緒にいるかということを聞いてんの?」


 その一方で、香恋は再度、言葉を変えて俺に質問をしてくる。


 あー。そういうことね。


 俺は香恋の再度の質問で先ほどの質問の意味を理解した。


 それでどう答えるか。やはり、順に話した方がいいよな。


「私が赤森君と一緒にいたいから一緒にいるの」


 俺がどう伝えようか考えを巡らせていると朝本さんが不意にそのようなことを香蓮に対して言う。俺に対しての質問なのになんで朝本さんが答えてるの?それに、それ言った後に、少しでも俺が動いたら肩が触れそうなぐらい体を近づけてきてるし。てか、距離ちかっ。


「はっ?」


 香恋はあからさまに不機嫌な顔をして低い声を出す。


 なんで香恋は不機嫌そうなんだよ。それに、俺を見て睨まないでくれよ。


「逆にこっちも聞くけど、あなたは赤森君とどういう関係なの?」


 香恋に臆することなく朝本さんはそう質問する。


「こ、こいつとは昔から知ってる幼馴染のような関係よ」


 突然の質問に動揺したのか、視線を斜めにそらして歯切れの悪い返答をする香恋。それにしても香恋、幼馴染のことをこいつって。まあ、気にしないからいいけど。


「お、幼馴染!?」


 朝本さんも驚いたような声を出して幼馴染という言葉に反応する。


「てか、あんた敦宏に近づきすぎじゃない?離れなさいよ!」


「なんで?あなた別に赤森君の彼女じゃないでしょ」


 朝本さんと香恋は牽制するように対峙している。2人の間でぶつかっている視線はバチバチと火花が散っているようだ。


 え?なんで、そんなバチバチで仲悪そうなの?しかも、朝本さんと香恋は初対面なはず。こんな風な状況になる理由はないと思うんだけど。



 俺は2人の仲裁に入ることはもちろんできず、内心で疑問を抱くことぐらいしかできなかった。だって、なんか2人とも怖いんだよ。


「西宮寺さん!そろそろ部活始まるよー」


 体育館の中から姿を現したであろう女子生徒が香恋の名前を呼ぶ。その女子生徒は動きやすそうなTシャツに短パンを着ていた。着ているのはバスケットTシャツとバスケットパンツだろう。


「むっ」


 香恋は女子生の声を聞くとそのような声を漏らして朝本さんから視線を外す。


「今度詳しく教えなさいよ」


 香恋は俺に視線を向けてそう言うや、「わかった。着替えてすぐ行く」と女子生徒に返事をする。


「またね。敦宏」


「あ、うん。またね香恋」


 香恋を呼んだ女子生徒が「了解」と返事をして体育館に入ったことを確認した香恋は俺に別れの挨拶をするや部室と思しき場所に足を運ぶ。なぜか知らないが足を運ぶ際に牽制するように再度、朝本さんの方を見ていた。


 俺は安堵する。修羅場?みたいなバチバチした状況に解放されたからだろう。


「赤森君」


 俺が内心で安堵していると朝本さんから声をかけられる。


「なに?朝本さん」


 俺は朝本さんに視線を向ける。


「さっきの女の子について詳しく教えて欲しいなー」


 朝本さんは笑顔でそう言う。


「え、香恋とは幼馴染のような関係なだけだよ」


「より詳しく教えて欲しいなー。香恋ちゃんっていう女の子について」


 朝本さんは笑顔だが目は笑ってない。それは朝本さんの笑顔から伝わってくる。


「お願いね。赤森君」


 この後、俺は朝本さんの香恋についての質問に答えながら帰路の道を歩いた。

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