42. 来たるべき時1

 朝を迎える。

 夜の間に雪は降り積もり、屋根は厚く雪をかぶっていた。軒下に垂れる氷柱つららが、陽の光を照り返す。


 一晩をラローザ邸の庭園で過ごした人々は、口々に礼を言いながら帰っていった。


 良かった、と。

 そう安堵したのは、ほんの一瞬だった。


「…これは、なんてことだ…」


 パトリスがうめいた。


 ラローザ邸の門から、一歩外に出る。

 すると、そこは昨日までの様子とは一変していた。


 左右を見渡せば、両隣の屋敷の門が破られている。生垣はめちゃくちゃにされ、庭園は踏み荒らされ、外に繋いでいた馬が縄を解かれ、好き好きにあたりを歩き回っている。

 目抜き通りに出てみると、立ち並ぶ食料品店や、飲食店を始めとした店が、ことごとく壊され、打ち破られて、通りにはガラスが散乱していた。

 一晩をなんとかやり過ごし、虚ろな目をした貧民たちがあたりを歩き回り、普段そこにいるはずの王都の民は、誰一人外に出ていない。


 一晩で、王都の様相はすっかり変わってしまっていた。


「王宮は門を固く閉ざし、王宮の前の広場には、食糧難を抗議する貧民たちで溢れている」


 様子を見に出たアイザックが、戻って来て言った。


「そんな…」


 レリッサたちは顔を見合わせる。


 昨日は早くから雪が降り出していた。

 先日の雪で、屋根のない暮らしの厳しさを感じていた貧民たちが、飢えと寒さを凌ごうと、一斉に行動を起こしたのは、なんとなく想像ができた。


 周辺に様子を見に出ていた使用人たちが、次々と悲惨な状況を告げてくる。


 どこかの伯爵家では、家の中が荒らされ、金品食料を洗いざらい持って行かれてしまい、家人もまた怪我をしたこと。

 どこかの侯爵家では、貧民たちと激しい争いになり、双方にけが人が多く出たこと。

 護衛を多く抱える公爵家は、朝になっても門を固く閉じて、家の中に立てこもっているようだとも。


「こうなると、昨日のお前の判断が正しかったということになるな」


 アイザックがレリッサを見下ろして言った。

 ラローザ邸は貧民たちを受け入れたことで、結果的に被害を免れたのだ。


「そうね…だけど、これからが問題だわ」


 貴族は家の扉を締め切り、出てくる様子はない。

 通りを闊歩するのは貧民たちで、彼らは食料を求めて練り歩いている。

 肝心の王宮もまた、固く扉を閉ざし、この問題から目を逸らしている。


 この問題は、貧民たちの食料事情をどうにかしないことには、解決しない。


 問題の大きさに、思わず黙り込んでしまう。

 不意に、声が響いた。


「お姉ちゃん!」


 門の前で顔を突き合わせていたレリッサたちは、呼びかける声に振り返った。

 先ほど、礼を言いながら出ていったはずの、あの少年が、肩に人を担いでこちらへ向かってきていた。


「どうしたの!?」


 ごろん、と少年が肩に担いでいた人物をレリッサたちの前に転がした。

 貧しい身なりの男だった。


「ひどい怪我…!」

「昨日、別の家に行ったらしいんだ。そこで切られたって…! ねぇ、助けて!」


 男は脇腹を切られていた。

 唇は血色が悪く、顔は蒼白だった。


「まずいな」


 傷口を検分したアイザックが顔をしかめた。


「傷自体は深くないが、血が流れ過ぎている」

「助かる?」

「…わからない」


 アイザックが傷口にハンカチを押し当てる。白いハンカチが瞬時に朱色に染まった。


 これは、ダメかもしれない。

 レリッサたちがお互いに顔を見合わせた時、ふわりと視界の端で白いローブの裾が揺れた。


「どいて」

「ディートル様」


 ディートルがアイザックと代わって、けが人の隣に座り込む。

 傷の上に手を当てると、患部が青白く光輝き始めた。


「…血色が良くなってきたわ」


 ディートルの肩越しに、様子を見に出てきたサマンサが安堵を滲ませて言った。

 傷が少しずつ塞がっていく。傷を中心に、血が通うように光が指先、足先、頭の先へと流れていく。


「安心するのは早いよ」


 ディートルが片手を患部に当てながら、すっと門の外を指差した。

 その指の先を視線で追って、レリッサたちは顔を引きつらせた。


 次々と、人々がこちらへ向かってやってくる。

 誰もが、少年と同じようにけが人を背負っていた。


「お嬢様! 頼む!」

「助けてくれ!」


 昨日、ラローザ邸を訪れた貧民たちだった。

 彼らは皆、郊外の元いた貧民街に戻り、そこでけが人を見つけて、ここに戻ってきたのだ。


 レリッサたちなら、なんとかしてくれると思って。


「お嬢様…」


 騒ぎを聞きつけて出てきたダンが、レリッサの表情をうかがうように見てくる。

 それは、単純な心配なようにも、だから言ったでしょうと言う非難のようにも思えた。


「レリッサ…」

「どうする?」


 パトリスにアイザック、ホーリィ、サマンサとライアンが、レリッサに判断を仰ぐようにこちらを見てくる。


(どうしたら…)


 迷っている間にも、人がどんどん増えていく。

 中には、昨晩ラローザ邸で施しを受けたことを聞きつけたのか、怪我をしている様子でない者も混じっている。


 王宮はあてにできない。

 他の貴族も出てこない。


 彼らが頼るものは他になく、今、なんとかできるのはレリッサたちしかいない。


(でも…)


 これだけの人数だ。

 怪我の手当てだけではない。食料も必要になる。


「レリッサ!」


 迷うレリッサの耳に、強く名を呼ぶディートルの声が飛び込んで来た。

 ディートルは額に汗を浮かべ、患部に視線を保ちながら言った。


「君が決めるんだ。君の言葉は力を持つ。今、ここにいる人間を動かせるのは、君だけなんだよ!」


 レリッサはハッとして顔を上げた。

 パトリスたちが、レリッサを見ている。


「レリッサ」

「お姉様…」

「大丈夫よ」

「指示してくれたら、僕ら、動くから」


 とんと肩に手が乗った。アイザックだった。


「俺たちは、お前に従う」


 レリッサは、最後にダンを見た。

 ダンの後ろには、いつの間にか、ラローザ邸の使用人たちが並んでいた。


「ダン…。私の我儘を許してくれる?」

「…お仕えして十八年。お嬢様が今まで我儘をおっしゃったことが、一体どれだけあったでしょう?」


 ダンが柔らかく微笑んだ。


「十八年分の我儘と思えば、この程度、さしたる物ではございません」


 何より、とダンは言った。


「昨夜の時点で、こうなることはすでに分かっておりました。お嬢様が、彼らを放っておけないことくらい、屋敷の者は、皆分かっておりましたよ」


 ダンの後ろに立つ、マリアが、ハンナが、リズが…使用人たちが優しく微笑んでいる。


「ありがとう。…彼らを、受け入れます!」


 その言葉を合図に、使用人たちが散らばって忙しく動き回り始めた。

 けが人を一箇所に集める者、怪我はしていないが食料を求めている者と振り分けていく。

 料理人は厨房に取って返し、侍女は暖をとるためにありったけの毛布を取りに行った。

 もちろん使用人たちだけに任せるわけにはいかない。


「ディーロン様。引き続き、けが人の治療をお願いできますか?」

「当然。でも僕一人じゃ無理だ」


 そう言うと、ディートルは懐から本を出して、サマンサに向かって放り投げた。


「わっ。なに!?」

「今すぐ治癒魔法覚えて。初級のでいいから」

「今すぐ!?」

「十四もある魔色を持て余してんじゃないよ。だいたい、僕の専門は本来は攻撃魔法なの! 治癒魔法は君の方が適任だから! ほら、さっさと覚える!」

「…っ分かったわよ!」


 サマンサが本をめくり始めた。


「お兄様とライアンは、近くの家を回って毛布を借りてきてください。うちにあるだけじゃ足りません」

「分かった。いくぞ、ライアン」

「うん!」


 続いて、レリッサはホーリィを見た。


「昨日だいぶ使ってしまったから、食材が足りないわ。ホーリィは、提供してもらえる食材がないか、貴女の交友関係を使って当たって欲しいのだけど…」

「あ! ちょっと待ってて!」


 ホーリィが慌てて屋敷の中へと駆け込んで行く。

 まもなく戻ってきたホーリィは、手に紙切れを握っていた。


「これ! 役に立たないかしら!?」

「これは何?」

「今年、不作だった領のリスト! これって、裏を返せば、ここに書いていない領は、今年豊作だったってことじゃない!?」


 どうしてそんな物がホーリィの手元にあるかは謎だったが、今はどうでも良かった。


「これで闇雲に食材の提供をお願いしなくてよくなるわね」

「アイザック様! 行くわよ」


 ホーリィがアイザックを引き連れて、門の外へと駆け出していく。

 爵位の上から下まで、広い交友関係を築くホーリィに加えて、筆頭公爵家の嫡男であるアイザックがいれば、より多くの家が食材を提供してくれることだろう。


 こうして皆がそれぞれに動き始めた。

 レリッサは人々の間を縫い、重症度の高い人間からディートルの元へと案内していく。サマンサは、時折失敗しながらも擦り傷程度ならすぐに治せるようになった。


 パトリスとライアンが何度も往復しながら、毛布を一人一人に配っていく。

 ホーリィとアイザックは荷車に少しずつ、提供された食材を集めては厨房へと運び入れた。

 毛布や食材を提供するくらいなら、と応じてくれる家は、意外と多かった。


「ほら、並んで並んで! パンはこっち! スープはあっちだ!」


 料理長が玄関の外に机を運び出して、パンとスープを配っていく。

 その前には、長い列ができた。


 噂が噂を呼び、貧民たちが増えていく。

 その列は絶える間がなく、スープが作ってはなくなり、作ってはなくなり、料理人たちが慌ただしく玄関と厨房とを往復している。


 料理人たちに疲れが見え始めた頃、開け放ったラローザ邸の門を、見覚えのある金髪と赤茶の髪がくぐった。


「お嬢様!」

「まぁ。貴方たち…」

木偶でくの坊じゃない!」


 何しにきたの? と、サマンサが訝しげな顔をした。


「相変わらず、口の悪いお嬢ちゃんだな〜」

「まぁ良い。デレク」

「はいよ」


『黒鹿亭』のデレクと、彼が兄貴と呼ぶハンスだった。

 二人は肩に担いでいた麻袋を、どんっと料理長の前に下ろした。


「俺らも手伝うよ。平民に出す料理ならお手の物だ」

「食材もほら、この通り」


 麻袋には新鮮な野菜がたくさん入っていた。


「お宅ら、あちこちで噂になってますぜ。ラローザ伯爵家のお嬢様は、天使か女神かってね」

「えぇ…?」

「だから俺たちも、女神様のお力になろうと思ってさんじた訳ですわ」


 天使だの女神だのはともかく、人の手は多いに越したことはなかった。

 料理長が早速ハンスを厨房に案内し、デレクがスープを配膳する役回りに回る。


 スープやパンを提供し、一人一人に毛布を配る。

 けが人の治療に一番時間がかかり、ディートルとサマンサは時折休憩を挟みながら、けが人の間を回っていく。


 飢えを満たした者たちが、何度も礼を言いながら去っていく。

 だが入れ替わりに、また別の飢えた者たちがやってくる。


 スープとパンの前に並ぶ列は終わらない。

 昼が過ぎ、夕方になり、陽が落ちて、またお腹を空かせた人々がラローザ邸の門をくぐった。

 一杯のスープとパン一つでは、長く飢えていた人々が十分腹を満たすのには足りないのだ。


 使用人たちも、レリッサたちもだんだんと疲労が蓄積してくる。

 提供された食材もそろそろ底を尽きようとしていた。


「お嬢様。これが最後の鍋です」


 料理長が大鍋をレリッサに見せた。

 陽はとっくに沈み、街灯のオレンジの光と、ディートルが所々に放ってくれた魔法の光が辺りを照らしている。


「…分かったわ」


 レリッサはいまだに門の外まで続く列を見た。

 期待を込めて並ぶ子供。お腹の大きな妊婦もいる。

 夜が深くなれば、また冷え込むだろう。今ここにいる全ての人間を受け入れるのは、不可能だった。


「みなさん!」


 レリッサは、できるだけ遠くまで届くように、声を張り上げた。


「スープを提供できるのは、これが最後です! まず、まだ一度もスープを受け取っていない人から――」

「おい、どけ!」


 並んでいた子供が列から弾き飛ばされた。

 その途端、列が大きく乱れた。


「俺が先だ!」

「待て、ずっと並んでたんだぞ!」

「ちょっと、押さないで! 子供がいるのよ!」


 一列に保たれていた列が崩れる。

 力の弱い子供や女が弾き飛ばされ、我先にと男たちが順番を無視してレリッサたちの方に突進してくる。順番を守らせようとする者。順番を無視して、残り少ないスープを得ようとする者が入り混じり、やがて掴み合い、殴り合いになる。


「待ってください! 落ち着いて!」


 レリッサは声を張り上げる。


「みなさん! 聞いてください!」


 使用人たちが、殴り合う人々を抑えに駆けつける。

 だがその使用人たちも、飢えた人々の食料を求める欲求には勝てずに弾き飛ばされ、殴られる。


 人々が喚き、吠え、怒号が響く。

 レリッサの声は届かない。


 暴動が止まらない。


(どうしたら…)


 脳裏に、リオネルの言葉が響いた。


『…これだけの人数だと、個人ではなかなか支援もしづらい。下手に手を差し伸べると、支援を受けられた者と受けられない者とで争いになってしまう』


 間違っていたのかもしれない。

 レリッサたちだけで、施しを与えようだなんて。


「お願いですから! やめて!」


 ――その時、馬のいななきが聞こえた。

 人々の怒号に混じり、馬の駆ける蹄の音がだんだんと近づいてくる。


 門をくぐって、馬が二頭、ラローザ邸に入ってきた。


「レリッサ!」


 馬上にいたのは、リオネルだった。


「リオン様!」


 リオネルは辺りを見回すと、馬上から声を張り上げた。


「静まれ!」


 リオネルの近くにいた貧民たちが、その迫力にびくりと肩を震わせ、一瞬動きを止めた。

 それで十分だった。

 その一瞬が、円を描くように波及していく。

 人々は動きを止め、いつの間にか、辺りはシン…と静まり返っていた。


「レリッサ」


 いいよ、とレリッサはリオネルに促されて、おずおずと口を開いた。


「みなさん。確かに、今ここで提供できるスープはこれでおしまいです。でも、明日にはまたなんとかします。もう一度、他の家を回って、食材を提供してもらえないか、お願いしてきますから」


 だから、とレリッサは声を張り上げた。

 全員に、声が届くように。


「だから、まずは、まだ一度もスープを受け取っていない人。そして、妊婦さん、子供、赤ちゃんを抱えたお母さんに譲ってあげてください。お願いします」


 お互いに胸ぐらを掴みあっていた手が落ちる。

 そして列から多くの人々が離れていった。


「お嬢様。これなら足りそうです」


 料理長は圧倒的に短くなった列に、ほっと息を吐きながら笑みを漏らした。


「さ、並んで並んで。今ここに並んでる人の分はあるからな! ゆっくりとな!」


 料理長が列に並ぶ人々をさばいていく。


 けが人はディートルとサマンサが最後の一人を治療しているところだった。

 庭園には、ダンたちが、妊婦や子供、赤子連れの母親を優先的に案内していく。


(良かった…。なんとかなりそう)


 レリッサはほっと息を吐いた。


「レリッサ」


 馬からひらりと飛び降りて、リオネルがレリッサに駆け寄った。


「リオン様。ミルドランド領は…」

「大丈夫だよ。こっちが勝った。国境軍の支部も今頃マルセル中将が奪還している頃だ」


 勝った。

 その言葉に、安堵のため息が漏れる。


「レリッサ」

「お父様…!」


 もう一頭の馬には、父が乗っていた。その後ろではエドが手を振っている。

 父は馬から降りると、レリッサに手を伸ばして抱きしめた。


「事情は分かっている。よく頑張った」

「…お父様」


 暖かい腕の中で気が緩む。

 目頭に涙が浮かんで、レリッサはそれを瞬きをして誤魔化した。


「エド!」

「ぅわっ!? ホーリィ!?」


 横からホーリィが駆け込んで、エドに抱きついた。

 エドが受け止めきれずに、二人して地面に倒れこむ。


「良かった…。もうっ心配したじゃないっ」

「えー? ちょっと、待って? なんで泣いてんの? ちょっとちょっと?」

「エド様、雰囲気ぶち壊し」

「そういう時は、黙って抱きしめるのがいい男だよ」


 双子が呆れた顔でエドを見下ろしている。


「リオン」

「パトリス」


 リオネルとパトリスが、それ以上は無言で、パンッと互いに手を打ち合わせた。

 頷き合い笑い合うその表情で、言葉以上の物が二人の間で交わされたのだとわかる。


 続いて、リオネルが少し離れたところで見守っていたアイザックを見た。


「君も。よくやってくれた」


 アイザックが無言で臣下の礼を取る。

 それにリオネルは頷いてから、王宮のある方へと視線を向けた。


「あと少しだけ頼む。…ディートル」

「ここだよ」


 ディートルは、やれやれと頭を振りながらこちらへとやってきた。

 さすがの天才魔術師も、ぶっ通しで治癒魔法を使って疲れたのか、顔には疲労の色が濃い。小さくあくびをしながらやって来て、その珊瑚色の赤い瞳を細めた。


「それで? 国王の書状は手に入ったの?」

「ほれ、この通り」


 エドが胸元から書状を取り出す。

 それをさっとディートルは取り上げて、「はい」とリオネルに差し出した。


「王サマ。もう待ったなしだ。分かってるでしょ?」

「ああ」


 リオネルは書状を受け取ると、強く握りしめた。


「国王に責を問い、国庫を開かせる。彼らの明日からの食料を引き出してくるよ」

「リオン様…」


 国庫を開かせるだけではない。

 リオネルはこのまま、王に退位を迫ろうとしている。


「リオン。まだシンプトン公爵を降ろすだけの材料が揃ってない」


 パトリスが思案げに言った。


「分かってる。でも、今は仕方ない。彼らのことをどうにかしないと」


 レリッサたち貴族が備蓄しているのは、あくまでもしばらくの間、自分たちと使用人たちが過ごせるだけの食料だ。

 ずっと貧民たちに食材を提供し続けるわけにはいかない。


「リオン様」

「レリッサ」


 リオネルはレリッサの手を握ると、さっと手の甲に口付けた。


「行ってくる。必ず戻るから」


 本当は抱きしめたい。

 顔にそう書いてある。

 けれど父の手前遠慮したのか、リオネルはきゅっとレリッサの手を握って、そして離した。


「閣下、お伴します」


 リオネルと父が、再び馬上の人となる。

 二人は、闇の中へと馬を繰り出して行った。


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