うんこ「いつ出るべきか・・・」

@556556

日常にある攻防

その瞬間はふと訪れる。机に向かって座っていようが、横になって携帯をいじっていようが世界を救っていようが。


そう、便意だ。

これは俺とうんこの読み合い合戦。


「ん・・・うーん、七時半・・・あと十分くらい・・・」

今日は十時半から出かける予定、彼女との久しぶりのデートだ。男である以上彼女より先についておかねば何を言われるのかわからないので十時に出るはずだったが一応のデッドラインは十時半。デートはめちゃくちゃ楽しみである、しかし睡魔の前ではその意思もむなしく散るのである。




「・・・よし、起きるか・・・やべっ!!!」

時計の針は九時二十一分を指している、一応時計の針は十分早く進めているので正確には九時十一分だがそれでも少々まずい。


(しまった・・・いや、焦るな考えろ俺。駅まで歩いて約七分、電車に乗っている時間が十七分、つまり十時三十五分にでれば待ち合わせには間に合う。ちくしょう、ここは彼女よりはやく着いて全然待ってないよのくだりをするはずだったのに・・・なんだこの違和感は・・・考えろ・・・昨日のうちに服と財布は用意したから・・・あ・・・)


核爆弾が落ちるほどの衝撃、はたから見たら線香花火程度の衝撃にしか感じられないだろうがその衝撃は無限大の威力である。



そう便意だ。しかしこの場合は出るほうではない。


(くそ!なんてことだ、便意がねぇ。昨日食った量を考えるとおおよそウナギ一匹分くらいのうんこがでる・・・出さなきゃまずい!デート中にうんこに行くことだけは避けねば!)


うんこと俺の読み合いが始まった。もはやこれはうんこではない、時限爆弾だ、俺はそれを解除する役だ。


「まず携帯で便秘改善の情報を・・・・・・・・・・・・・なるほど、運動と食物繊維とストレッチか・・・食物繊維には即効性がないから論外として、ストレッチが無難か・・・」


時計はすでに九時半を過ぎた、ストレッチの内容を読み込むうちに若干落ち着く俺。


「腰骨の上、左側の腸は詰まりやすいから両手の指で押すのか。早速やろう。」

(お・・・なんだが腸が動く感じで効果がありそうだ。この間に次の手順を考えよう。うんこした尻を奇麗にするのに次のルートは風呂確定、ドライヤーは・・・使ってる暇がなさそうだな。そして着替えて身なり整えて出れば間に合う!)


頭の中で今後の手順のイメージトレーニングをしつつ俺は腸を指で押し続けた。


その時は突然やってきた。


「来た!ざまぁみろくそやろう!」


トイレに駆け込む俺、来る便意!


少し出るまで時間がかかったが何という快便であろうか、インスタにあげたくなるレベルだ。きれいに丸々一本ウナギが出てきた。これで今日のデートは勝ったも同然である。やったぜ!


(ふふふ。一時はどうなるかと思ったが人間様のほうが上手だったようだな俺のうんこよ。俺はお前に勝った!それは必然的に今日のデートの成功、勝利を決定づけた!二度と手を煩わせるなよ)


意気揚々と風呂に入る俺、浴びるシャワーはまるで祝福の雨のようであり、今までの苦労や焦りが流れていくようであった。


「ふぅ、さっぱりした。十時十二分か。急いで準備すれば間に合いそうだな。」


寝坊した際、普段よりも頭の回転が速くなることと行動力が上がることを学んだ俺はルンルン気分でズボンを履き、シャツを着て、財布をポケットに入れ、髪の毛をセットしに行った。


「なんかいまいち決まらないな・・・」

(少し時間に余裕ができたからと言って時間はかけたくないんだよな・・・な・・・!)


恐ろしい事態が起きた、なんと形容すればいいのだろう、魔王の復活?奴隷は二度指す?それは広島に一度落とされたものが長崎にまた落とされるのと同じものだった。


「やりやがったな!くそやろう!」


便意再び、上手だったのはうんこの方であった。彼はこの時を待っていた、風呂に入り、服を着替え、髪につけるワックスが手についているタイミングでの奇襲!


「ぐおおおおおぉぉぉぉぉ!」


しかも


(下痢じゃねぇか!!!)


下痢!気分最悪、もたらしたのは災厄。彼の作戦は害悪であった。


時計の針は刻一刻と進む、すでに二十一分。


(くそっ・・・!下痢だから風呂に入らないわけにもいかねぇ・・・ワンチャン遅刻してでも・・・いやだめだ、彼女の性格上遅れたら絶対嫌われる・・・昨日食べた卵、あれのせいだろうなぁ・・・くそぅ・・・)


俺は風呂に入らず、若干不快感を覚えつつデートに向かった。

待ち合わせ時間に間に合ったが彼女は遅刻してきた。


今日のところは引き分けということにしておこうと思う、つくづく運のない話である。

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