第10話

“ザクッザクッ・・・”


「やっぱりあいつよ・・・翔太、準備はいい?」


「ちょっと怖いけど・・・」


「じゃあわかったわ・・・あんたはここで援護して・・・」


「わかった・・・」


“ザクッザクッ”


奴の足音がだんだん近付いて来た。


“ザッ”


晴奈が先に飛び出した。


“カチャ・・・”


奴の方に銃口を向ける。


“ダララララララッッ!!”


そしてまた、別の木に隠れた。銃は、弾切れになっていた。

晴奈が撃った無数の弾は、奴に当たっていた。


「・・・ハァ・・・(やった・・・当たった・・・)」


「クッ!・・・ックソがぁ・・・そんなとこにいたか糞ガキ!!」


“ドサッ・・・”


男はその場に倒れた。


だが、まだ男は死んではいななかった。


「ハァ・・・ハァ・・・(死んだかな・・・)」


晴奈は、ゆっくりと男のもとに近寄った。その差は30mぐらいである。


“ザクッザクッ・・・”


晴奈と男とのその差が10mぐらいになった時だった。


「晴姉、そいつどう?死んじゃったぁ?」


遠くで、さっき2人が隠れていた木の後ろから、翔太が声をかけてきた。


「まだわかんない!今から調べる所でしょ!」


「僕もそっち行くよ!」


「いいの!あんたはそこで、待ってなさい!」


晴奈が翔太に、そう声をかけた瞬間だった。


「晴姉!後ろッ!危ない!」


“ガチャッ”


「!!」


男は、うつぶせになった状態から顔を上げ、晴奈に、持っていたショットガンの銃口を向けた。

男は、薄く微笑を浮かべた。そして、静かに引き金を引いた。


“カチンッ”


“ドォォォォォン!”


男の持っていたショットガンは轟音をあげ、無数の弾がいっせいに放たれた。


「キャッ・・・」


翔太の声に助けられ、晴奈はその瞬間、左に回避していた。

が、ショットガンは散弾銃であり、その弾全てをかわす事が出来ず、弾の一部が晴奈の右太ももをかすめた。


“ドサッ・・・”


晴奈はその場に倒れた。


「晴姉!大丈夫!?」


遠くから翔太が叫んだ!


「私はいいから、早く逃げなさい!!」


「無理だよ!晴姉だけ置いて行けないよ!!」


「バカ!カッコつけんなっつうの!!いいから早く行け!」


“ザッ・・・”


翔太は森の奥に走り出した。


“ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・”


男は起き上がり、晴奈のもとへ歩み寄って来た。


「残念だったなぁ・・・あいにく俺様は、タフでな。銃弾2、3発じゃあ死なねぇんだわぁ」


「あんた、一体なに者よ!・・・どうして私らを狙ってたの?」


「フフッ・・・それがこのゲームでの俺様の役目なんでな。別に、てめぇらをずっと狙ってた訳じゃねぇなぁ」


「ゲーム?」


「まぁでも、武器人(ウェポンマン)を探すって意味では、てめぇらを狙ってた意味にはなるがなぁ」


「武器人(ウェポンマン)?さっきっから、何言ってんのよ!!」


「もうすぐ死ぬ奴に、いちいち説明する義理はねぇな・・・」


「何よそれ!意味わかんないわよ!」


“ガチャッ”


「さてと、殺す前に聞くが・・・このゲーム内で銃を持っているのは、武器人(ウェポンマン)と狩人(ハントマン)だけだ。お前の持っている銃、その他にもあるはずだぁ、どこに隠した」


男は、晴奈に銃口を向け聞いた。


「さっきっから、言ってんでしょ!私は、武器人(ウェポンマン)なんかわかんないし、他の銃ってのも知らないわよ!」


「フッ・・・まぁいい・・・じゃあお前の持ってるその武器は、ドコで手にいれた?」


「拾ったのよ!」


「嘘だな!まぁ、答えねぇんなら、てめぇにはもう用はねぇ!すぐ楽にしてやる・・・」


「待って!」


「なんだぁ??」


「私を殺したら、武器の隠し場所がわかんなくなるわよ!」


「もう遅せぇ!命乞いならもっとまともなのにするんだったな」


「・・・でも、武器が欲しいんでしょ!」


「確かにそうだが、てめぇにはもう用はねぇって言ったろ?さっき逃げた小僧にでも聞けばいい事だ」


「残念だったわね!あの子は、そんな事アンタなんかには言わないわ!」


「所詮(しょせん)はガキだ、お前の切り取られた生首でも見れば、気も変わるだろう」


「!」


「それじゃあ、お別れだなぁ・・・」


男は、引き金に指をかけ、静かに引いた。


“カチンッ”


“・・・・・・”


いぜんとして森は静かで、風に揺れていた。


「・・・・・・・?」


「フッ・・・弾切れだったか・・・命拾いしたなぁ」


「・・・ふーぅ・・・・(助かったぁ)」


「だが、安心すんのはまだ早い。弾はまだある。弾を込める間だけ、寿命が延びただけだ」


男は、弾を込め始めた。

晴奈は、男に話しかけた。


「アタシを殺す前にひとつ聞かせて」


「なんだ?」


「アンタ一体・・・何者なの?」


「いいだろう。冥土の土産に教えてやろう。俺様の名前は、風戸 仁(かざと じん)聞いた事ぐらいあるだろ?」


「・・・・・!!アンタが、あの有名な大量殺人鬼ッ!」


晴奈の目の前にいる男は、昔ニュースで世間を騒がせた 大量殺人鬼、風戸 仁だったのだ。


“カチンッ”


“カチンッ”


“ガチャ・・・”


「これで、準備は出来た。そろそろ狩らせて貰うぞ」


“サッ・・・”


銃口は、ゆっくりと晴奈の額に向けられた。


「死ね!」


“ドォォォン!”


銃声が、辺りに谺(こだま)する。


「………………?」


「グハァッ・・・」


突然、仁の背中に衝撃が走り、仁は口から血を吐いた。


「・・・ハァ・・・(一体何が起こった・・・)

・・・ク、クソ!・・・だ、誰だぁ・・・」


仁は、後ろを振り向いた。

そこには一人の男が、銃をかまえて、立っていた。その銃口からは白い煙りが立ち上ぼっていた。

仁は、ショットガンをその男の方に向けたが


“ドォォォン”


男は、もう一度撃ってきた。男との距離は、50m以上も離れているのに、その弾は的確に仁をとらえていた。


「クッ・・・や、やるねぇ・・・」


“ドサッ・・・”


仁は、気を失いその場に倒れた。


「何?何が起こったの!?」


晴奈は、あまり状況を理解していなかった。


“ザッザッザッザッ”


男が、晴奈の所にやってきた。


「ねぇちゃん、大丈夫やったかぁ~!もうちょいで殺されるトコやったなぁ~(笑)」


「ぁ、ありがと・・・」


「えぇて、礼なんか言わんでも、当然の事やったまでやぁ~(笑)とりあえず早ようこっから移動せんと」


「そうね・・・」


晴奈は、立ち上がろうとした。


「・・・・痛ッ・・・」


晴奈は足の痛みで、立つ事ができなかった。


「大丈夫かいなぁ~、ちょっと傷口みしてみ」


男は、晴奈の傷口を見た。


「まぁそないに深くないけど一応、手当てせんとあかんなぁ」


男は、しゃがみ込み晴奈に背を向けた。


「・・・ぇ?」


「ほれっ、はよ乗らんかいなぁ~。このへんにあったボロ小屋ん中に治療道具があったんや、とりあえずそこまで運んだるさかい、はよ!」


「えっ・・・いいの?」


「せやから、そない言うてまっしゃろ、さぁ~遠慮せんと」


“ドサッ・・・”


晴奈はその男の背中におぶさった。


“ザッザッザッザッ”


男は、晴奈を背負って小屋を目指して、歩いていた。


「そうやぁ、自己紹介がまだやったなぁ。俺、門垣 京介(かどがき きょうすけ)いいます。今後ともよろしゅうなぁ」


「ょ、よろしく。私は、野上 晴奈っていいます。」


「晴奈ちゃんねぇ。えぇ名前やなぁ」


「アリガト。あのぅ京介さんはなんでここにいるの?」


「なんでやろなぁ。目ぇ覚めた時からここにいたしなぁ。わからん事だらけや」


「さっきの奴が、ゲームとか武器人(ウェポンマン)とか言ってたんだけど、心あたりある?」


「さっぱりやわぁ。まぁでもそないに考えんでも、いずれ分かるんとちゃうか。あと、俺のこと京って呼んでやぁ、ツレからはそない呼ばれとったさかいに」


「わかった、じゃあ私の事も晴奈って呼んでよね」


「あぁ、全然かまへんでぇ。ん?・・・あと、もうちょいで小屋に着くわぁ。これでやっと治療出来るわぁ」


「アリガト・・・」


「えぇて、気にせんで、そやけど晴奈、・・・・・ちょっと重いなぁ(笑)」


「バカっ!」


“バシッ・・・”


2人は仲良く小屋を目指した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る