第12話


アリサさんはまだ業務中ということ(私が掃除してた時は確実にサボっていたけどね)なので屋敷の前で別れることにした。


「後日でいいので斡旋所でアンちゃんとウンちゃんの『使役獣登録』をお願いしますね。

その時は私の名前を出していただければすぐに登録してあげますので私の名前を出して下さいね?」


ゲームの世界にも面倒臭そうな登録作業があるとは...。

アリサさんを見送りながらそんなことを考えているとフッカが私に声をかけてきた。


「そういえばお姉ちゃんって獣系の魔物とモフモフしたいから『TWO』を始めたんだよね?

これからどうするの?」


その声は少し心配そうな声で、まるで私がこのゲームをやめるのを危惧しているかのようだ。


「ん~、まずは『使役系』の才能を取り直さないといけないからアリサさんの言っていたドウって街に行ってみようかなぁ。

でもドウへの行き方なんて分からないから、まずは情報収集かな?」


ん?ていうか


「フッカはドウの街について何か知らないの?

ベータでは有名人だったんでしょ?」


「いや、有名人だったから何でも知っているとは限らないからね?

まあでも、ここからドウへ向かうルートとかは知ってるけど。」


ただ、と言ってフッカは私に向かって指を指す。


「この世界では情報っていうのはそれだけで価値なの。

『モノからドウへの行き方』っていう情報を知りたいならそれ相応のお金だったり情報と交換じゃないと。」


ええ、それってつまり?


「お姉ちゃんの『死霊術』の才能と双子の屍人ゾンビについて調べさせて。」


これはなんとも面倒くさそうなものを要求されてしまった。






_________________________________________________________



「よし、次はあの子達にしよう。」




ちょうど数10メートル先で2羽のラージットが草を食んでいるのを見つけたフッカは私、いや双子アンとウンに指示を出した。



「「ゔぉー、.....ゔぁ。」」




指示されたアンとウンは1羽づつラージットにゾンビのイメージとはかけ離れたスピードで接近していった。




私と双子アンとウンはフッカの『調査』という名目で泣く泣くラージット達を狩っていた。

『死霊術』に才能が変化したとしてもモフモフと仲良くなることを目的にこのゲームを始めた私にとってモフモフをモフリ倒すならばまだしも暴力的な行動をするなど本当は嫌だ。そこでフッカにスライムではどうか(見た目がモフモフじゃないから倒せる)と提言してみたところ


「雑魚だから実力を測れないし、金にならないから」


という理由で却下された。

まあ、ラージット達も今は仲間にすることも出来ないし、他のプレイヤーのように多少な行動をしても多めに見てくれるだろう(と祈る)



閑話休題そんなことより



「....ゔぁ!!」




バキョッ!!




アンのシュートキックで白に黒のブチ模様をしたラージットは近くにあった岩まで吹き飛び動かなくなるとアイテムに変化した




「ゔぉー!!」




コキンッ!!




一方ウンが掴んでいた黒と白のブチ模様のラージットは小気味いい音とともに首がありえない角度にねじ曲がりこれもまたアイテムに変化した。




アンとウンは、凄く強かった。


私がラージットと戦う時は初心者用ナイフを使って何度も攻撃をしてやっと倒せる(偶に自分が殺される)のに対してアンとウンは大体一発でラージットを屠ってしまう。


あの友仲間になれなかったラージット達との死闘は一体何だったのだろうか......。




私は2人が倒したラージットから出たアイテムを回収しながらしみじみと思った



「で、知りたいことは分かったの?」



「ゔぁ...?」


「ゔぉー?」



いや、君たちに聞いてないしそんな可愛らしく首を傾けられても...。



「ん~、私がベータのダンジョンで見た屍人ゾンビってもっと相手を貪り食うような感じで攻撃してくるんだけど随分違うんだよね。ラージットを蹴っ飛ばしたり首の骨を折るっていう戦い方をするしやっぱりただの屍人ゾンビよりも知能が上なんだと思う。

後は、それぞれ性格?個性?があるよね。」



双子アンとウンの戦闘の様子を撮影したビデオを眺めながらフッカは考えるように言った。

ああ、確かに。言われてみれば、

私とフッカは原っぱにポツンと一本生えている木の下で休憩しながら双子アンとウンの様子をそっと観察した。




「.....ゔぁ」




アンは飛んでいる蝶々を追いかけて木の近くをグルグルと回り続けている事からもしかしたら好奇心旺盛なのかな?それか蝶々をご飯だと……ア、食べた。


「ゔぉー」


一方ウンは私から少し離れた所に座り込んでボーっと木の枝を見つめているがたまに私の方をチラッと見てくる。もしかしたら少し人見知りでまだ出会ったばかりの私を警戒しているのかもしれない。もしくは私を捕食の対象だと思っているのかも。


他にもラージットとの闘い方もアンは力に任せた渾身の一振りでラージットを屠るのに対し、ウンの方はラージットの首を捻り骨を折って倒すのがお気に入りっぽい。なんとなく双子でも細かい所に違いがあるようだ。


「まあ、とにかくこの子たちがとっても珍しいモンスターってことは確かね。

後は『死霊術』の才能についてもっと分かれば満足ね。」


満足って、そもそもネットで調べたり他の『死霊術』の才能を持っているプレイヤーに聞いてみればいいんじゃない?と私はフッカに尋ねた(ていうか、ドウへの行き方もフッカではなくネットで調べればいいんじゃ?)


するとフッカは首を横に振った


「実はね、『死霊術』っていう才能は私でも初めて見る才能だし

多分このゲームのプレイヤーの中でお姉ちゃんが初めて手に入れた才能だと思う。」


はい?


「だってさ、この近くに屍人ゾンビみたいな不死アンデッド系のモンスターは出てこないし、『使役系』の才能を取った人って基本的にここらへんでラージットかスライムをテイムして『テイマー』に才能が成長しちゃうからモノの街では『死霊術』はどうしたって取れないんだよ。」


え、でも私は現に...あ、私テイムした双子アンとウンは『れあ』とか言っていたな


「だから誰もお姉ちゃんの才能について知らない。お姉ちゃんもまだ分からないと思う。

だけどこれから色々やっていくうちに段々分かっていくと思うからそしたら教えてね?」

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