ウツくんが教えてくれたこと
大宮 りつ
第1話 プロローグ
いつからだろう。家族が家族でなくなったのは……。
皆で食卓を囲んで笑いあった日々が、遠い遠い昔のことのように思える。いつだったかはもう思い出せないが、そんな私たちの日常はある日を境にドミノ倒しのようにあっけなく崩れ去っていった。
「お前のせいで俺の人生めちゃくちゃだ。もう二度とその顔を見せるな!」
それが私の記憶に残る父の最後の言葉だった。
あれから3年のときが経ち、あの日のことがもう随分昔のことのように思われるようになった。父の元を離れて自由な生活を手に入れてから、少なくともあの頃よりは幸せな日々を送れているはずだ。それなのに、どうしてまだ何かに囚われている気がするのだろう。どうしてまだ心が満たされないままなのだろう。最近は同じ悪夢にうなされて最悪な朝を迎えるようにまでなった。まるで何かに取り憑かれているような感覚すら覚えている。
帰宅途中にふと顔を上げると、星たちがキラキラと夜空を輝かせている。腕時計に目をやると、もうすぐ日付を跨ぐ時間になっていた。家の近くの大きな橋を渡りながら、遥か彼方に続く星空を見て思わず呟いた。
「私、なんで生きてるんだろう?」
ウツくんが教えてくれたこと 大宮 りつ @yun05
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