その日の名は……

飯沼孝行 ペンネーム 篁石碁

第1話 その日の名は……



 太夫の独特な節回し、三味線による義太夫が、シーンと水を打った会場に響いている。舞台では、文楽、即ち人形浄瑠璃が催されていた。だが此処は東京の国立劇場でも、大坂の国立文楽劇場でもない。観客は殆ど日本人……ではなく、大半が外国人である。そう此処は何と太平洋を航海中の豪華客船内の特設ホールだった。

 舞台で演じられている演目は「伽羅先代萩」。通称「先代萩」と呼ばれる時代物である。松貫四、吉田角丸らの合作で、初演は天明五年(一七八五)江戸結城座。九段続きの時代物であり、江戸寛文年間に起きた奥州仙台六十二万石の伊達藩のお家騒動をモチーフにしたものである。

 人形浄瑠璃、文楽は、物語を語る『太夫』と『三味線』、そして『人形』と三つの要素で構成される。現在では国・大阪府・大阪市・日本放送協会の助成金で運営される「財団法人文楽協会」に帰属する技芸員によって文楽が演じられ、人形浄瑠璃を演じる技芸員の最高位を『紋下』、『櫓下』と云う。今、この豪華客船内の舞台で演じているのは文楽界の重鎮で、最高位を許された技芸員達である。

 「先代萩」は吉原の傾城けいせい高尾にぞっこんの奥州の大臣「冠者太郎義綱」が隠居させられ、その名跡を継いだ幼君鶴千代の命を奪いお家乗っ取りを企む一派と、鶴千代を護ろうとする乳母の正岡との争いを中心として展開してゆくが、その最高の見せ場、即ち文楽の用語で「切場」が、今舞台で演じられていた。

 傾城とか傾国の美女とは、王や権力者が国を傾けさせる程愛した美女の事を言う。

 美女へ入れあげ、国民を顧みなくなった王を打倒するのが革命だった時代。

 美女を集めたハーレムを乗っ取ろうと、革命の首謀者が王権を打倒しようとする場合がある。

 キリスト教が一夫一婦制度を王室に齎した後、王権打倒をする存在を抑える事が出来た事は、王権がヨーロッパ各国で長く維持出来た理由でもあるだろう。

 徳川時代の仙台藩。

 乗っ取り派の差し金でやってきた栄御前の持ってきた毒入り菓子を鶴千代が食べる前に食べた千松(正岡の子)が毒で死ぬ。だが我が子の死を目にしても、正岡は栄御前の前で涙も見せない。我が子よりも幼君の方が大事! 気丈に正岡は振舞ったが、栄御前が帰ると正岡は、一人最愛の我が子の痛ましい体を抱き、慟哭し、嘆き悲しむのである……。

 太夫の悲愴なまでの切り語り……。そして三味線による義太夫……。そして主遣い、左遣い、足遣いの三人に命を吹き込まれ、泣き崩れる正岡の人形……。その三業が見事なまでのハーモニーを醸しだす時、観客は自らの心までを人形に投影させ、演ずる者、それを見る者を一体化させ、文楽の舞台は人間劇以上の高みまで達するのである……。


「やっぱりすごいや……。おじいちゃんの人形は、まるで生きてるみたいだ……」

 袴姿の一人の少年が感嘆の声を上げた。その少年の視線の先には、今舞台で鬼気迫る顔をして正岡を操る、既に八十、いや九十近いと思われる主遣いの姿があった。


「ワンダフル……」


 日本語がわからないにも関らず、最前列に座る金髪の少女がそう呟いて、一粒の涙を流す。いや、その列に座って涙を流している少女は彼女一人だけではない。蛍光色のレオタードに身を包んだスラリとしたモデルの様な長身の少女が、何と三十名以上もである! 文楽を一際美しく輝く金髪の少女達が見物している?しかもレオタード姿で!?何と奇妙な組み合わせだろう。だが、目線を舞台上方に向ければ、それも納得できる事だろう。


「SUPER MODEL LOOK ’31」という文字が、そこには踊っていた。


 心地よい潮風が少女の栗毛色の長い髪を揺らしていた。

 イルカの図柄の真っ白なTシャツに、インディゴのEDWINのジーンズ。ミニマムなストラップにコサージュが幾つかあしらわれたヌメ皮のK.JAQUESのサンダル。涼しげなシンプルな格好だが、モデルの様なスタイルの彼女にはそれさえ様になるのだがら、例え、取り分け顔が美人でなくても、スタイルが良い女性は得である。

 しかしこの少女が美人でないと云う訳ではない。昔風に云えば混血児、当世流に云えば、日本人の母、ユダヤ系アメリカ人のハーフの父を持っているクォーターである。

 美男美女のハーフやクォーターを見て全豹を卜す事は出来ないが、例に洩れずにこの少女もまた美人、いや、今まだ十八歳だから、後二、三年もしたらモデルとして大成し、ランウエイーを歩き、スーパーモデルとして華やかなパリ・コレのステージに立つ事が出来る女性になるに違いないと云える程の、十八歳なりの可憐な美しさを持っていた。

 少女の目の前には、沖縄の大海原が泰然と横たわっている。

 その東シナ海を豪華客船サン・ファン・バウティスタ号が、これも悠然として煌く真夏の太陽の日差しを受けながら、その少女を乗せ順調に航行していた。

 カモメの鳴き声、前部デッキの室外プールでは、派手な水着が百花繚乱咲き乱れ、嬉々とした女性達の声がさんざめいていた。

 通路を他の船客達が通り過ぎてゆく中、少女は手摺に頬杖をつき、その光景を眼下に見下ろすと、今度は遥か前方の水平線の彼方を見つめ呟いた。


「お父さん……」


 そして少女はジーンズのポケットからゴソゴソとある物を取り出す。小瓶である。そのガラスの小瓶の中には、水? いや、水ではないが、何か透明な液体らしきものが中程まで入っている。少女は、その小瓶を自分の肌に当てた。すると不思議な事に小瓶の中の液体が肌色に変化した。そして、今度はジーンズに当てるとインディゴに変色し、次いでホワイトのTシャツに当てると、その液体は白に変色したのだ。

 少女は大きな瞳でその小瓶の中の液体を覗きながら、クススッ、と微笑んだ。

 そして少女がその小瓶を太陽に翳すと、その液体は再び透明に戻った。


「ベベルゥ=モード……。もうすぐ、会えるね」

 少女が、淡い笑みを口唇に閃かす。と、その時である。


「お~い! 美々ちゅちゅ! そこに居たのか」

 幅広の通路の後方、船内から船外に出る為の扉から出て来た一人の少年がそう叫んだ。

「な、何だ、小次郎か」

 美々と呼ばれた少女は、その少年の顔を見ると慌てて小瓶をポケットに押し込んだ。 

 そう、その少女の名は明王美々。獅子座の十八歳。


 そして、美々の幼なじみの、観世小次郎政宗。十八歳の同じく高校三年生である。

「何だはないだろ。どうしたのさ? 乙女チックに感傷に耽ってるなんてらしくないな」

「そんなんじゃないよ。……ヘ~ッ」

「……な、何だよ!? ジロジロ見やがって。おいらの顔に何か付いてるか?」

「ウフフッ。別に……。孫にも衣装だと思ってね」

 小次郎の格好は、黒の小袖に格子模様の半袴、人形浄瑠璃の舞台衣装のままである。背はヒノナより5cm程低い。一年ちょっと前まで小学生だった、その幼さが顔に出ていた。

「馬鹿にすんない! おいらはこう見えても……」

「若干十三歳にして、人形操りの天才とまで云われているのよ、ね~」

「へへんッ! そうさ! 何せおいらのじっちゃんは……」

「観世小次郎時宗。芸名桐竹団十郎。人間国宝(重要無形文化財保持者)なんでしょ」

「そう! そしておいらには……」

「人形浄瑠璃にロボット工学の技術を使って、世界初の機械人形浄瑠璃の一座を創る事。もう耳にタコが出来る程聞いたわよ。だけど人形を機械仕掛けにしたら操る人間なんていらなくなるんじゃない?」

 美々は小首を傾げ、小次郎の顔を覗き込んだ。栗毛色の長い髪がサラーッと垂れる。

「バカッ! わかってないなあ。世の中には多くの身体障害者達がいるんだ。手元のコンピューターを操作したり、音声の命令でそんな人達の手となり足となって動く事が出来る機械人形がいれば、それは盲導人形にもなるし、寝たきり老人の介護人形にもなるんだ。そうした可能性のアピールとして、おいらは、世界を機械人形一座で巡業したいんだよ」

 そう云って、小次郎はまだあどけない横顔を美々に見せ、手摺に背中を凭れ掛けた。

「だけどさ……」の二の句を美々は継がなかった。機械人形などに世話して貰い、その人は本当に幸福だろうか?盲人の世話をする犬や小型の猿、老人介護のホームヘルパー、そうした命ある存在との触れ合いの中で、障害者や老人達は自分が今生きている事に感謝出来るのではないか? 美々はそう思ったが、機械弄りが好きで、単なるHゲームオタク故の夢としか思ってなかった小次郎の夢が、彼なりに自分がこの世で果たすべき役割を考えてのものだったのだと知り、その小次郎の熱き想いを否定してはならないと感じた。

「まッ、実現はもう少し先だけどな。だけどその為に父さんはカリフォルニア工科大学で研究してる。美々の父さんはたしか琉球大学で海底遺跡の調査をしてるんだったよな。一週間前のTVで、『遂にムー大陸の遺跡、発見か?!』って、特集やってたよ。お前の父さん、一躍有名人だ」

「うん」と云って、美々は髪を掻き上げて、青と青が交わる境界の方を見つめた。

「石垣島で暫く振りに会ってきたんだよな。いいなぁ……。い、いけねッ! じゃ、おいら行くから!」と小次郎が云って背を向けるや否や、


「チョイ待ち!」という声と共に、美々の右手が飛び小次郎の肩をグワシッ! と掴む。

「あ、あにすんだよ!」と、小次郎が美々に叫んだ。


「小次郎ちゃん、アンタ何処行くつもり……」との、美々の声はドスがきいている。

「ヘッ!? い、いや~」と、小次郎の顔がニヤけた。

「このスケベ! アンタ、未来のスーパーモデルの水着姿を拝みに行くつもりでしょッ!」

 美々は小次郎の胸倉を掴んで、鬼婆の様な形相をしている。小次郎は、涙をチョチョ切らせながら、首をフリフリ絶叫した。

「お前だって、許婚の男が、コンテストのステージに出るんだろ?! 愛しのベベルゥ皇子様に会いにいかなくていいのかよ!」

「アンタは私と一緒に潜水遊覧艇に乗るのよ! コンテストの最中なら、楽に乗れるわ」

 そう云って美々はジタバタもがく小次郎を引き摺る様にして、後部デッキにある潜水遊覧艇の発着場に怒り肩をして、プンプンとした顔付きで足を向かわせた。

 

 その一カ月前の事……。丁度、極楽の夏休みを前に、中学生達が地獄の学期末試験の底から這い出してきた頃、ぶっちゃけた話、テストが終わったその日の午後の事だった。

 宮城県仙台市。孤高の猛将、あの独眼龍伊達政宗が、慶長六年(1601)四月十四日に、まだ未完成だった仙台城に入城し、仙台開府が為されてから四百三十周年と云う2031年の事。その記念博覧会開催の各種工事や何やらで県内の各界全てが活気だっていた。

 此処に来て政界に再燃してきたのが、仙台首都機能移転論である。昭和六一年九月に打ち出された第四次全国総合開発計画は、仙台に第二国会議事堂、松島に第二迎賓館、山形に最高裁判所を建設するといった内容を盛り込んで一役注目されたが、国民的コンセンサスが充分に得られるかが一番のネックだった。

 そして、仙台開府四百三十周年を目前に控え、仙台重都構想が政界で再燃させる為、その国民的同意を得る為の意図を含め、全国に仙台をアピールする為に、宮城県では県内や東北の各企業の協力(いや、勿論そこに東北出身の大物政治家による働きもあったが……)によって、大型豪華客船サン・ファン・バウティスタ号が建造された。 そのスペックは、LoA(全長)×Lpp(垂線間長さ)×B(型幅)=301.20m×272.00m×38.00m。GT(総トン数)=約100,000T。主機ディーゼル4機に電動2軸プロペラで、航海速力18.6節(ノット)。客室1,200室。十万トンにも関らずにも、旅客定員は2,150名と、一人当りのスペースにも余裕がある。 サン・ファン・バウティスタ号……。伊達仙台藩が江戸初期に太平洋横断の為に造船したガレオン船の名前である。遠藤周作の小説『侍』で、独眼龍に次いで宮城県が誇る有名人、悲劇の使節として広く人口に膾炙されるようになった、あの慶長遣欧使節の正使、支倉六右衛門長経(『常長』という名は誤りだと松田毅一博士は云っている)が、イスパニア人のフランシスコ会司祭のルイス・ソテロと共に乗船、於勝郡(現石巻市)月ノ浦を出航し、ノヴァ・イスパニア(メキシコ)のアカプルコまで二往復したこの黒船。復元された500tのガレオン船が、今も石巻港に係留されているが、先日進水式が行われ、やはりサン・ファン・バウティスタ号と名付けられた豪華客船は、ざっとその二百倍の総トン十万tという大型客船だ。まさに仙台遷都アピールに相応しく、海に浮かぶ仙台城とでも表現出来る、雄々しい姿だった。

 当初、仙台藩六二万石の数字に因み、六万二千トンの計画だったが、徳川家康と交わされ、結局反古にされた百万石のお墨付きを今こそ! と、一桁足りないが十万トンになったと云う。だが、実際伊達仙台藩は表高六二万石どころでなく、実高は祐に百万石を超え、帆足万里は『東潜夫論』で二五0万石、安井息軒は『読書余滴』で二00万石論を唱えている。正に本邦第一の藩こそ伊達仙台藩だったのだ。それに相応しく、世界最大の豪華クルージング客船こそ、サン・ファン・バウティスタ号だった。

 しかしながら、1999年12月に、国会等移転審議会は、「栃木県那須・福島県阿武隈」と「岐阜県東濃・愛知県西三河北部」を移転正式候補地、「三重・畿央(三重、滋賀、京都、奈良の四府県境)」を準候補地にすると答申。ここに仙台重都構想は立ち消えになった。

 それに伴い、サン・ファン・バウティスタ号の建造も資金繰りが上手く行かず、一時中断になっていたが、その造船会社に仏蘭西王家のある一族を総帥とするコングロマリットが資本参加するに至って、2063年に漸く就航の運びとなった。

(その資本参加の裏には、その一族の総帥の孫と、天皇家よりも由緒ある日本のある一族の血を引く、仙台在住のある少女との縁組があった事は、あまり知られていない)その豪華客船の処女航海を記念して、アンダー19、即ち十九歳以下で、未来のスーパーモデルとして活躍しそうな少女を選考する「SUPER MODEL LOOK ’31」が、その航海中に、太平洋上で行われる予定。そして人間国宝観世小次郎時宗氏も乗船し、そのコンテストの前に演出として文楽が催されるとの事。出航は七月十九日、などといった文字が華やかに踊る新聞の一面広告を捲ると、国際面の隅に小さな記事があった。「お母さんッ! 見てこの新聞! お父さんの記事が出てるわ!」


 新聞を持ち、叫びながら畳を蹴る様に道場に入ってきたのは制服姿の明王美々である。

 道場には美々の母、夏菜が袴姿に襷掛け、一人で掃除をしていた。

 此処は、薙刀術の道場である。美々の母(旧姓は庵野)は、直心影流薙刀術の相伝者で、仙台市支倉町(筆者が仙台市観光課に尋ねたところ支倉常長とは無関係だという)にあるこの道場も、仙台藩認可の江戸中期よりある由緒正しき道場である。

 因みに、仙台藩の武術については不明な点が多く、実際『伊達家文書』で確認されている薙刀術の流派は、穴沢流、鈴鹿流、静流の三流派だと云う事を一応付記しておく。

「あ、本当?」

 額の汗を軽く拭い、夏菜は態とらしく驚いて見せた。実は夏菜は既に読んでいたのだ。

「いい? 読むわよ。え~とね……、『……七月四日から、琉球大学の明王玲司教授を中心とする国際海洋調査団が、沖縄県石垣島北々西一00kmの地点で深海調査を行っている。同教授によれば、一万五千年程前に沈降した『琉球古陸』こそ伝説のムー大陸であり、ムー帝国の首都とされるヒラニプラこそ、沖縄の伝承で海底にあるとされる理想郷、ニライカナイであると言う。近年沖縄沿岸で海底遺跡らしき構造物が立て続けに発見されており、学会でもその調査結果に注目している。尚、その深海調査で採取された生命体らしき物体は、新種である事が判明した。その新種の生命体は、無色のゼリー状の形態を有している事から、海月の変種ではないかとの見方も出ているが、太古から生き続ける原始生命体の可能性も有るとの事で、生命誕生の謎を開示する為の貴重な発見だと、海外の研究機関からも、そのDNAサンプルを求める声が寄せられている……』、だって」

 美々はそう読み終ると、道場の端の方に雑巾を滑らす夏菜の方に視線を向けた。

「お父さんも頑張ってるわね。で、あなたの方は今日のテストは頑張ったのかしら?」


 道場にペタンと座り、新聞を広げる美々に夏菜がそう言うと、新聞を投げ出し、美々は道場の床に大の字に寝転んだ。そして、江戸時代からある道場の古びた天井を仰ぎ、

「お父さん仕込みの英語と理科は多分満点よ。だけど……」


 と、言うなり美々はハンドスプリングで跳ね起きた。スカートがフワッと舞い、その中から長いスラッとした足が覗く。そして、着地成功!予期される母親の叱責が飛ぶ前に、美々は逃げる様にして道場と母屋を繋ぐ渡り廊下の方へ掛け出し、振り向きざまに、

「あたし四分の一は外人よ。国語や漢字なんて四分の一出来れば、い・い・の・さ」

 と言って、ペロリと舌を出した。だが、そんな美々の後ろ姿に向かって、

「あら、そんな事云ってると、いいものあげないもんね~」

 と、夏菜がおどけて云うと、美々の耳がピクピクッと動き、その足がビタッと止まる。

「いいものって、もしかしてお父さんからの誕生日プレゼントッ!?」

 再び振り向きざまにそう声を出した美々。今度はそこにはとびきりの笑顔があった。

「あなたのお部屋に行ってみたら?」と、夏菜がそう云うや否や、美々の姿は道場から消えていた。そして「今度のテストは頑張りま~す」という声だけが夏菜の耳に届いた。「もう、あの娘ったら!」と云って、夏菜は困った顔をしながらも、半分微笑んでいる。


「フーッ。だけどあなた……。あなたが沖縄の海に出ていても、美々は立派に育ちましたよ。何せこの仙台の父親、伊達政宗公に優しく見守られているのですからね……」


 夏菜は、秋になれば美々の様に可愛らしい白い花を咲かせる県花のミヤギノハギが一面に植えられている庭先の方に歩を進めると、そこから嘗ての青葉城の方を眺望した。初夏の日差しに新緑が映え眩しい位である。時代が流れても、青葉山はやはり青葉に覆われ、それを眺めるだけで仙台の歴史を感じさせ、見る者の心を霽月にするのだった。

 支倉町から眺めると、仙台二高、東北大学、仙台博物館、その先に青葉城(仙台城)跡がある。四百ッ六十年前と同様そこには、独眼龍伊達政宗公が仙台城の懸造の眺瀛閣で仙台の民を見守ったが如く、今は伊達政宗公の銅像が、美々を、そして仙台の民全てを厳しく、そして暖かく見守っていた……。

 ただ一つ違うのは、政宗公の『儂の死後は、全ての画、像には右目を入れよ』との遺言通り、その銅像の政宗公の尊顔に、失われた右目が入れられている事だけだった……。

 夏菜は目頭を熱くし、手に持っていたもので涙を拭く。が……、


「いやだ~! 雑巾じゃないの~」


 まだ三十一歳の夏菜が顔を真っ黒にして、オチがついたところで一段落。


「うわ~ッ! やっぱりお父さんからだッ!」


 美々は、十代の少女の感性で飾られた可愛らしい内装の自室のベッドに腰掛けて、父、沖縄にいる玲司からの手紙を広げていた。


『Dear CHU2』で始まる英文の手紙だが、訳して書く事にする。読者の為にも、いや! 何より筆者の為でもあるが……。ま、それはさておき、



『私の愛する美々。元気にしてるかい? 少し早いが、十八歳の誕生日おめでとう! この手紙と一緒に、あるものをそちらに送ったが、もう見てくれたかな?』


 美々は机の上に置かれていた、リボンが掛けられプレゼント用の包装がされた小箱を手に取り、それを開けた。そこには、これもリボンが掛けられた小瓶が入っていた。小瓶の中には、透明の液体が満たされている。

 美々は小首を傾げ、「……水、かな……」と呟き、そして「!」と閃いた。


『感がいいヒノナの事だから云わなくてもわかった事だろう。そう、これは、一週間前に父さんがミッドウェー海域の深海調査で発見した新種の生命体の一部なんだ』


「やっぱり!」と叫び、ヒノナは右手でその小瓶を持ち、まじまじとその液体を眺めた。

『色々な意味で面白いものだから、可愛がって欲しい。その面白さはヒノナが自分で発見するんだよ。それと、同封したチケットを見てくれ』


「えッ? ……あッ! これね」と云って、美々は、ベッドの上に置いた便箋を取りその中を覗き込むと、一枚のチケットが入っていた。それは、サン・ファン・バウティスタ号の乗船チケットだった。仙台港出港予定日が七月十九日とある。

 世界に仙台をアピールする為、巨額の宣伝費を投じてバウティスタ号は宣伝され、チケットは全世界で同時発売。が、それは定員数に対する五0%で、あとは世界の政界、財界の大物が招待客として乗船する事になっており、千人の一般客用のチケットの内日本で発売されたのは三五0枚。しかしそれも、実情はその他の政財界関係者や報道関係者に配られたも同然だった。つまり、この船の航海が深く政治的意味合いを持っている事を如実に示していたと云える。何せ、嘗て伊達政宗がその遠望達識で西欧に使節を派遣した船に準えた客船を建造し、日本国民にその政宗公の偉業を再認識させ、仙台重都構想が国民的コンセンサスを得る為の基盤を固めたいという政治的意図と共に、世界に仙台をアピールする為の航海である。内外の要人の乗船に備え、乗船に当ってのチェック、警備態勢も当然厳しくなる事が予想され、一般客にチケットがなるべく渡らない様にされたのも、テロリスト等が一般客として紛れ込む可能性を抑える為の措置でもあった訳だ。


 だから、普通でいけば、美々などには手に入る事のないチケットである。


 烏枢沙摩の明皇一族の当主、明王玲司の一人娘、美々。彼女は、まだ自分の家が天皇家さえも凌ぐ高貴な家柄である事を知らない。


「お父さん、よくこんなプラチナチケット手に入ったわねぇ」


『……と、思ってるだろう? 実はこのチケットは、お前の愛しの君、ベベルゥ君から、誕生日のプレゼントとしてお前に渡してくれと頼まれたものなんだ』


「えっ?! ベベルゥ君から?! だったら納得。でもどうして直接私に送ってくれなかったんだろ」


『……と、思ってるだろう? 恥ずかしがりやで思いやりのある、そういう男なのさ、彼は……。美々も知っての通り、彼は十歳まで辛い少年期を過ごしてきたからね。だからこそ、彼は人一倍優しい青年になった。彼との縁組はお祖父さん同士が決めた事だが、そんな事は関係なく、そんなベベルゥ君を愛してあげて欲しい……』


「お父さん……」


『お前はこのチケットで仙台から船に乗りなさい。ベベルゥ君は、彼の母上の石垣島の実家に寄ってから、那覇から船に乗る予定になっている。いよいよ、実際に会えるね』


 美々は、ベベルゥがプレゼントしてくれたそのチケットを胸に抱き締めると、口をヘの字にして歯を食い縛った。涙を流さない為に。何年も文通していた運命の人に、漸く会える! その想いが、とうとう一筋の雫に変わり、美々の薄いピンク色のリップを塗った唇に、甘い感傷と、ほろ苦い涙を与えるのだった。



『(中略)……七月二八日、美々の誕生日は三人で沖縄で祝おうね。それでは美々。美しくなった姿を父さんに見せておくれ。会えるのを楽しみしているよ。マリンスノーが舞い散る沖縄の海、ドルフィンより、我が娘ヒノナに愛を込めて……。父より』



 ー七月二二日(水曜日)二一四0Z(グリニッジ標準時)北緯二五度・東経一二九度


 丁度、美々を乗せ同月十九日に予定通り仙台港を出港したサン・ファン・バウティスタ号が航行する海域の近く、沖縄石垣島北々西約一00数㎞の海域は物々しい様子だった。六八八級SSN、即ちアメリカ海軍所属のロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦三隻、そしてロス級に囲まれる様に、その中心にロス級より一回り以上も大きな新型のSSNが浮上していた。そして、その四隻の攻撃型原潜より少し離れ、DSRV(ディープ・サブマージェンス・レスキュー・ヴィークル)、即ち深海救助潜水艇アヴァロンを搭載した海軍所属の潜水艦救助船と太平洋第三艦隊所属のフリデート艦が三隻停船している。 上空から見ると、三隻のロス級は正三角形を描き、その重心に新型SSNという配置。 浮上したロス級は、ESM(エレクトロニック・サポート・メジャーズ)アンテナ及び、UHF(極超短波)用アンテナと、潜水艦専用通信衛星からの信号の受信用レーザー発信機を伸ばしている。だが、奇妙にも前方と後方の甲板に、通常ではある筈のない装置が取り付けられているのだ。至る所で機器が露出し、アンテナ類の伸びる部位の前にある艦首ハッチから太いコードが無数に伸び、その装置に接続している。見た目では解らないが、これは、発熱量六七00kcalの石炭を三000t燃焼して得られるのと同等のエネルルギーが得られる、一kgのウラン二三五の核分裂を利用する原子力エンジンの膨大な電力を使った磁力線発生装置だった。

 そして、前方甲板にはテスラコイルが一基備えつけられている。テスラコイルとは、変圧器のの昇圧現象と巻線の共振現象を組み合わせ、減衰高周波高電圧を得る為の装置である。これらは浮上中に取り付けられたものらしい。

 ロス級三隻全てに、同様の磁力線発生装置とテスラコイル一基が波がかからぬように組まれた台場の上に備えられており、三角形の重心にある新型原潜の方には、前部ハッチと後部ハッチの近くに、各二基ずつ、四つのテスラコイル装置のみが装備されていた。

 全ての原潜に小型船が横付けされ、その甲板では技術者達が忙しく動き回っている。

「司令! 作戦開始時刻二0分前であります」

 原潜から三00ヤード離れて停船するフリゲート艦『カーツ』のブリッジで、太平洋潜水艦隊司令官ロナルド=ヘイズ中将が、双眼鏡で原潜の停船海域の状況を把握していた。「司令!」という通信士の声に、いかにも軍将校らしいイカツイ顔をしたヘイズ中将は、「何だッ!」と、双眼鏡を覗いたままブリッジ中に響く程に居丈高に怒鳴った。だがそれは彼の性格から来ているものではない。今現在の緊迫とした状況が、ヘイズ中将にそうさせたのだ。汗で中将の体はベタつき、軍服の脇の下、背中がビッショリと濡れている。

 ブリッジ中が緊迫の空気に包まれ、この艦の艦長や士官達もひどく緊張した面持ちだ。「ホワイトハウスより入電! 大統領からメッセージです! 『作戦が成功し、このアメリカが、現代が維持される事を切に願う』、ですッ!」

 通信士のその言葉に、ヘイズ中将は双眼鏡を下ろし、

「そうか……。よし! モード博士を呼び出せッ!」

「アイッ! サーッ!」


「モード博士! 『カーツ』のヘイズ中将から通信です!」

 フリゲート艦『カーツ』の前方、新型原潜に接舷する小型船の甲板から、原潜甲板で、ある装置の最終チェックに入っている中肉中背、白髪の老人に声が飛んだ。

 タイゾー=モード博士。物理学の世界的権威で、フリーエネルギー研究の泰斗だ。

「何だッ! こちらは手が離せない! ……バカモノ! その入力値は1.56だッ!」

 小型船ブリッジでマイクを持つ助手の方を振り返らず、博士は原潜の甲板に設置されたコンピューターのモニターを凝視し、キーボードを叩く助手に激昂している。

「作戦開始時刻二0分前だが、準備は大丈夫なのか、との事ですッ!」

「あとは微調整だけだ! 準備は万端! 軍人は黙って見とれとでも云っておけッ!」

 と叫び、眼鏡をクイッと上げたモード博士は、更にこう呟いた。

「……エルドリッジ号の様に、大事な部下のドルフィン(潜水艦乗り)を原潜のチタニウム合金の中に埋もれさせたくはなかろうが……」


 エルドリッジ号……。今より丁度五五年前、一九四三年七月二二日の事、アメリカのフィラデルフィア港で行われた、所謂『フィラデルフィア実験』と呼ばれる軍事実験で使われた軍艦である。それも大惨事を引き起こした……。

 フィラデルフィア実験とは、電子計算機の考案者として高名なJ・L・フォン・ノイマン博士がプロジェクト・リーダーとなり、艦船がレーダーで捕捉させないようにする目的で行われた一連の軍事実験である。

 実験は、『エルドリッジ号』に搭載された四基のテスラコイルに向けて、地上から磁力線を放射し、レーダー上からその艦影を消そうというものだったが、実験開始七0秒後、テスラコイルがスパークし始め、『エルドリッジ』全体が青白い光に包まれたその瞬間! 『エルドリッジ』はレーダー上から消えた。そして更に! 発生した強電界内の『エルドリッジ』の空間が歪み、そして! 『エルドリッジ』はフィラデルフィアから四00km近く離れたノーフォーク港まで瞬時にテレポートした後、再びフィラデルフィア港に戻ってきたのだ。しかも、戻ってきた『エルドリッジ』に救急医療隊が到着した時、彼等が見たのは、エルドリッジの船員達の多くの焼死体だった。その中には、無残にも鋼鉄の壁や機械に体が埋め込まれた様になっている者もいたのである。

 そして、医療隊と共に駆けつけ、その惨状を目の当たりにした研究チームの中に、若き日のタイゾー=モード博士の姿もあった……。

 この実験については、マイケル・パレ主演、映画「フィラデルフィア・エクスペリメント」として映像化されているが、長い間この実験及び結果については極秘事項とされ続けた。そう、テレポーテーション技術、そしてそれを発展させたタイム・テレポート技術の実現の可能性を、軍が一般に公表する訳がなかった。極秘裏に研究を継続する為に……。

「艦長! 高速巡視艇より通信ッ! 未確認船舶がこの海域に接近していますッ!」

「何だとッ!」と叫んだのは、ロバート=クランシー艦長でなくヘイズ中将である。

「何故レーダーに……。くそッ! 博士の指示で、実験への影響を考えてレーダーを止めておいた事が仇になったな」



「明王教授。何でしょうね、あれ?」と、水平線を指差す青年。

「ん? 三枝君、どれ……」と言って、明王教授と呼ばれたその男は双眼鏡を覗いた。三十七、八歳位だろうか。船乗りの様に赤銅色に日焼けした肌に不精髭。侍の様な総髪。ガッシリとした長身の男。琉球大学理学部海洋学科教授、明王玲司だ。

 深海潜水調査艇支援母船『MーU』のブリッジである。この『MーU』、通称「ムー」は、日米共同開発の深海潜水調査艇支援母船である。ボルチモアのメリーランド造船所で建造された『Atlantis Ⅱ』よりも一回り大きく、最新装備を搭載した日米のハイテクの塊の如き船だ。『Atlantis Ⅱ』が、アメリカのウッズホール海洋研究所が所有する深海潜水艇『Alvin』の支援母船の様に、『MーU』は、潜航深度一万mを誇る有人深海潜水艇『しんかい10000』の支援母船である。

 現在「MーU」は、先頃新種の生命体を採取した調査海域に再び向かっていた。調査期間は既に終了していたが、新種の生命体発見という事で調査期間延長が認められたのだ。「フリゲート艦が三隻……。それにあれはサブマリンだな」と明王玲司は呟いた。

「この海域での軍事演習など聞いてないぞ」と云ったのは、船長のレイウッドである。

 レイウッド=武雄=仲間。日系のハワイアンで、以前『Atlantis Ⅱ』の船長であった経験を買われてこの『MーU』の船長に抜擢された男だ。

「この艦数で演習などやる訳ない。まいったな。もしかして……」

「おい玲司! 秘密軍事実験なんて云うなよ!」と言ったのは、そのレイウッドである。「いきなりハープーンを叩き込まれて、ドカーンッ! なんてね! ハハハッ!」

 と、熊のようなレイウッドの隣にいる宮城一真が両手を広げておどけると、皆が笑った。「おいおい冗談はよせよ」と三枝誠一郎が笑いながら手をパタパタと振った。

 宮城一真は、『しんかい10000』の電機員、三枝誠一郎は、琉球大学の研究チームの一員で、二人とも明王玲司教授の子飼いのライトスタッフである。

「……まんざら冗談でもなさそうだ……」と、双眼鏡を覗く明王教授が呟いた。

 軍の三0m型高速巡視艇二隻が猛スピードで、『MーU』に接近して来ている。

「レイウッド。念の為、私達の置かれている状況をハワイに通信してくれないか。軍というのは、こういう時には一般人を不当に扱うものと相場が決まっているからな」


「了解!」


「ほらッ! 小次郎急がないと発進時刻に間に合わないよッ!」

「わーッてるよ! ッたくッ! 何でおいらが……」とブツブツ。「折角未来のスーパーモデルとお友達になれると思ったのに……」と、またブツブツ。小次郎は重たい足を引き摺る様にして美々に従い、船内の通路を後部甲板にある潜水遊覧艇の発着場へと走る。

 今彼等が走っている通路は、美々が見つけた近道である。ここを真っ直ぐ行き、つき当たりにあるエレベーターを降りると、そこに潜水遊覧艇の発着場があった。

 潜水遊覧艇とは、船の航海中、船客に海中の神秘を堪能して貰おうとの配慮から、このサン・ファン・バウティスタ号に世界で初めて装備されたものである。二0人乗りの小型潜水艇で、最高潜水深度も僅か五0m程だった。


「フーッ、フーッ!」と小次郎が息を荒げてエレベーターに駆け込むと、美々は一言、「だらしない!」という言葉を小次郎に浴びせて、下降のボタンを押した。

 ガラス張りのエレーベーターである。少し降りると、そのガラスの向こうに巨大な特設ホールを眼下に見下ろす事が出来た。その舞台では、既に「SUPER MODEL LOOK ’63」の審査が始まり、レオタード姿の金髪少女達がズラリと舞台上に勢ぞろいしている。


「アーッ! アーッ! アーッ!」と、小次郎はガラスに顔をへばり付かせて叫ぶ。


「見苦しいぞ小次郎! 政宗公の名前を付けときながら! おまえも仙台の男だろッ!」


 という美々の叱咤も耳に入らぬのか、小次郎はなおも叫んでいるが、そんな小次郎の叫びも虚しくエレベーターは下降し続け、反対に小次郎は目線を上昇させる。

 もう呆れ顔の美々が「だめだこりゃ……」と呟くが、自分もステージ中央にいるエスコート役の男達の中に、愛しの君らしき青年を発見すると、ガラスにへばり付く。

(……ベベルゥ君。もうすぐ会えるね)

 そうこうしている間にエレベーターは到着。扉が開き、目の前に広がる光景に、美々は思わず感嘆の声を上げていた。



「中将! 琉球大学の研究チームを中心とした国際海洋調査団の乗船する深海潜水調査艇支援母船『MーU』です!」

「ヒラニプラ遺跡と新種の生命体を発見したというレイジ=アキオ教授のチームか……」

「どうしますか中将」と、クランシー艦長が指示を仰いだ。

 ヘイズ中将は、ブリッジから『MーU』が強制停船させられている海域に目を向けた。

「作戦開始時刻の変更は認められない。……実験を目にしない様に、『MーU』の船室にでも軟禁しておけ。ま、見たところで、それを話しても誰も信じないだろうがな。どうせ、彼等が今目にしている原潜は、あと数分後にはいなくなるのだ……」

「タイゾー=モード博士の船です」

 下士官が叫んだ。実験海域では全ての作業が終了したようだ。各原潜に接舷していた小型船は全て離れ、タイゾー=モード博士の乗る船が、今フリゲート艦『カーツ』に横付けされた。

「何か問題ですか」と云ったのは、今『カーツ』のブリッジに上がって来た博士の助手のマクスウェル=ラガーとレイモンド=タイラーだ。


「何でもない。イルカが迷いこんだけだ。それより作戦は予定通り……」

「当たり前だッ!」と、遅れてブリッジに上がって来たタイゾー=モード博士が叫んだ。顔を紅潮させての激しいその口調に、博士の白髪の頭が前後に揺れる。

 その時、「作戦開始時刻十分前!」という声がブリッジに響きわたった。

 その声を聞いた博士は冷静さを取り戻すと、タイラーに命じて太平洋の海図を海図台に広げさせた。左端にはユーラシア大陸と日本、右端には北米・南米大陸。下にはオーストラリア大陸。そして、その三つの大陸に囲まれるようにして、もう一つの巨大な大陸がその海図に点線で書き込まれていた。その大陸の真ん中に赤く大きく書かれた文字……。


 それは、『MU』。


 そして、最終的なブリーフィングが行われると、

「こちら『カーツ』のヘイズである。『リーブス』『ファイフ』は指定位置に付けッ!」

 ヘイズ中将はマイクを持ち、他のミサイルフリゲート艦に通信を送った。そして更に、

「ロサンゼルス級『シカゴ』『カンサス』『デンバー』。現在状況を知らせッ!」

と通信を送ると、各原潜より「異常無し」との報告が入った。

「……サターン級一番艦『サタネル』。……トワイニンング大佐、異常ないか」

「こちら『サタネル』艦長マーク=トワイニング。異常無し」

 というその声を聞いたヘイズ中将は、今までとはうって変わった表情で、


「マーク……」と呟いた。


「何でしょうか、司令」


「……生きて、現代に戻って来い。……貴様のワイフを、我が娘を泣かせる様な事はするな。以上だ……」


「……アイッ! サーッ!」


 通信機を通じて聞こえるトワイニング艦長の声は掠れていた。そして、潜水艦乗り達に鬼と呼ばれたヘイズ中将もまた……。だが、ヘイズは帽子を目深に被り直して、

「各員が無事帰還する事を、太平洋潜水艦隊司令として強く願う……。健闘を祈る!」

 と、毅然とした口調で言い放った。

「カウント入りますッ! 作戦開始時刻一000Z、五分前ッ!」

 このブリッジにいる全ての士官、ロス級、サターン級原潜全てのサブマリナーは、この作戦の危険性を充分に知っていた。彼等はあの『エルドリッジ号』での惨劇の一部始終をフィルムで見ているのだ。だが、彼等にこの作戦への参加に対する拒否権はなかった。



 『エルドリッジ号』での透明化実験で偶然起こったテレポート。それを、アメリカは極秘に研究をし続け、終にタイム・テレポートの技術を得た。有人実験をする前に、軍は色々な物体を過去に送り込んだが、それが現在オーパーツ、即ち、その当時では技術的に絶対製造不可能とされる太古の遺物として発見されているのだ。

 だが、それは過去に送っただけで決して未来に戻って来ない。そして、一人の人間を過去に送っても、その人間は過去から未来には戻っては来れないのだ。だから! そのタイム・テレポート装置ごと過去に送ればいい。そうすれば、現在⇔過去、両方通行のタイム・テレポートが可能になる。

 しかし、一番のネックはそのエネルギー問題だった。即ち、過去に行った時に現在に戻る為のエネルギー、即ち磁力線を発生させたり、テスラコイルに流す膨大な電気をどう供給すればいいのか?それを解決したのが、原子力潜水艦である。

 原子力エンジンで得られる豊富な電力。過去に行き、そこでウランを補給しなくとも現在に戻って来られるだけの電力は充分供給出来る。何より、原潜は原子力船と共に今現在原子力で可動する乗り物である。然も、潜水艦は海に潜水していれば、過去の人間、過去の事象への干渉の恐れが殆どないと云っても過言ではない。だからこそカフィー博士も今回の作戦に協力した。過去への干渉は絶対しない。これが軍との絶対の約定だった。

 タイム・ワープ・マシン、即ちタイムマシンを、空想的産物としてその実現性を否定する学者が殆どだったのはつい最近の事までだ。相対論研究の泰斗、カリフォルニア工科大学のキップ・ソーン博士が一九八八年に「タイムマシンは可能」という論文を発表してから、プリンストン大学の天体物理学者リチャード・ゴット博士を始め、あの車椅子の物理学者、スティーブン・ホーキング博士が「クロノロジープロテクション・コンジェクチャー(年代保護局仮説)」なる理論を構築し、独特のタイムマシン理論を展開している。

 では、タイムマシンなど出来ないという学者の主張はどうかと云うと、因果律の破壊をもたらす現象は絶対に起きない、という事だ。即ち、タイムパラドックスの問題である。

 これはタイムマシンを題材にしたSF小説のポピュラーな例だが、ある男がタイムマシンを使い過去に生き、未来に自分の祖父となる少年を殺害してしまう。となると、そのある男はその瞬間に消滅してしまうのか?

 また、例えば、戦国時代の田楽狭間の今川義元の陣中にタイムトリップし、織田信長の奇襲の情報を教え、それにより信長が討死したら、今現在の日本史から突如として、所謂桶狭間の戦い以降の織田信長の名は消えるのか?

 そういったタイムパラドックスの問題が起きる可能性がある以上、タイムマシンは現実的に可能ではない。これがタイムワープに否定的な学者の論理である。

 この因果律違反から生じる古典的パラドックスに関して、SF小説家は次のような解決方法を提示して、自分の小説を書いている。即ち、因果律破壊を取り締まるタイムパトロール。平行宇宙(パラレルユニバース)が存在し、過去で起こした事象が、元の世界での因果関係を破壊せしめるようなものでも、元の世界はそのままであり、変えられた過去から始まる別の歴史が平行的に存在し続ける。これなどは、鳥山明原作の『ドラゴンボール』でもお馴染みの、SFではオーソドックスなパラドックス解決方法である。

 また、『ザ・タイムトンネル』の著者マレイ=ラインスターの手法は、タイムワープして過去を変える事も、云うなればアカシックレコード(全宇宙の過去から未来全てを記録しているというもの)に記録されており、過去が変えられたとしても、それは運命だったとしてパラドックスを解消しようとし、J=S=ドーキャンプなどは、歴史の網は全体に強固だが、局所的に弱い部分がある為、そこから世紀間のすべりが生じるとしている。

 やはりこの問題は一筋縄ではいかない。過去や未来に自由に移動出来るというのは、過去・現在・未来の三世が同時性を持って存在しているという事なのか? また、超心理学者コリン=ウィルソンの言葉を借りれば、全ての人間が無限個の自分に細分化された宇宙なるものの存在が許されるのか? やはり、これは難問と云わざるをえない。

 しかし、そうしたタイムパラドックス問題の哲学的な妥当的な解消方法の確立を待たずして、リークされた情報を信ずればという条件付きだが、米軍はタイムワープの技術を百年前に得ていると云う。その鍵となるのが、ハッチソン効果と云われる現象である。

 ハッチソン効果とは、カナダの物理学者ジョン=ハッチソンが、一九七九年二基のテスラコイルとヴァン・デ・グラフ発電機などで強電界を発生させる実験中に偶然発見した現象で、物体浮揚、破壊、テレポーテション等のを引き起こすというものだ。 

その現象を引き起こすものがフリーエネルギーと云われ、0点エネルギーとも云われる。

 だが、この分野の研究において云えば、ハッチソンより八十年も前に同様の実験を行なったニコラ・テスラの名を挙げねばなるまい。おわかりだと思うが、テスラコイルはこのテスラが考案者である。あの、発明王とされるエジソンをも屈服させた事があり、交流モーター、交流発電機、高周波コイル、遠隔無線操縦、高周波治療システム、X線装置を発明。無線通信やラジオも本当は彼の発明だとも云われ、果ては殺人光線、粒子ビーム兵器、地震兵器、無限エネルギーの理論も完成させたと云い、その偉業からか金星人の子供などという風評もある、クロアチアの生んだ孤高の天才科学者ニコラ・テスラ……。生涯独身だったテスラの死後、彼の論文は行方不明だと云う。

 テスラの生前より、初代FBI長官、J・エドガー・フーバーの命で、FBI捜査官がテスラの論文を保管してある倉庫に立ち入り論文をマイクロフィルムに収めたと、倉庫管理人が証言している事から、FBIがそれを盗んだと主張する者もいたが、事実は判明していない。

 しかし陸軍弾道研究所がテスラの論文を借りた事もあり、軍がテスラの研究に必要以上の関心を持っていた事は明かだろう。

 そして、多くの謎を残してテスラの考案した秘密兵器は闇に消える……。

 テラレベル周波数は、地球を二つに割る程のエネルギーを持つ。

 縦に周回する衛星と自転と一緒に周回する静止衛星。

 もし地球の自転と一緒に静止衛星として周回するのではなく、地球が自転しても一定の空間で停止している衛星があったとして、その衛星の時間軸は未来に置いていかれる事で過去にベクトルを取る衛星となってしまうだろう。

 地球の自転と同じ運動速度と月の運動。

 月は月の表側だけ地球に見せる。

 五芒星。のぎ。360度の5等分、72度。ラグランジュポイントは運動を静止した重力均衡点。運動するエネルギーと質量エネルギーの関係から、静止し続ける運動が運動し続けるエネルギーに対する斥力であり続ける角度が72度である時、元素番号72のハフニウムが中性子を吸収する元素で、原子炉を緊急停止=スクラムさせる時の元素がハフニウムであり、72×5=360である事が、元素番号5のホウ素も同じように中性子を吸収する元素として原子力発電に必要な元素である事実。

 原爆が中性子分裂反応によるエネルギーであり、その中性子分裂を未熟爆発で不発弾にしておく方法を、日本の物理学者の菅原寛孝博士が考案していた事実がある。

 ニュートリノを集束し、エネルギーを高めた状態で核兵器に未然に放射しておく事で発射した時には既に不発弾になっているという。

 どこの地下サイロに核兵器が隠されていても、ニュートリノを地球の何処かから放射しておけば、核戦争になった時に、その原爆や原爆を起爆装置で使う水爆でさえも不発弾におけるので、核兵器そのものをこの世に存在する意義を失わせる事になるのだそうだ。

 嘗てアメリカでは南氷洋でニュートリノ捕捉実験を行っていた。

 日本のカミオカンデの場合は太陽光とニュートリノを分離させ地下タンクの水で捕捉する施設だが、水深400m以下の海底では太陽光が届かず、400m以下の水深の深海世界ではニュートリノだけが捕捉されるという。

 ニュートリノで核兵器の未熟爆発を誘発させる時、ボトム警戒が出来るデイーゼル艦が海底に留まり警戒作戦している間、ニュートリノは核兵器を無力化させてしまう可能性がある。

 原子力潜水艦の場合、水で冷却する為に海水を取水口から取り入れる必要がある。だから鮫のように航行し続けなければならない。

 鱶鰭。鮫の鰭が常に海水から酸素を吸収する。

 鱶鰭の栄養。

 酸素を取り入れる為の襞襞。

 万能細胞としてもし哺乳類の鮫の鰭の細胞が生きた状態で培養出来るなら……。

 海水の塩分濃度の3.5%。生理食塩水濃度は100ml中に0.85から0.95gの塩分。

 海水から酸素を取り入れる魚類や海の哺乳類。もし人間の血液や細胞液を鮫の鰭細胞から作成したフィルターを通した場合、その血液がリフレッシュする可能性もある。

 緑色に蛍光する万能細胞。

 昆布などの海産物が緑色に変色する事と、海面近くで赤い周波数の光が消えてしまう事実と、青い周波数の光だけが400m付近まで届く事。

 赤と黄色を足すと緑色。

 緑-赤=黄色。夕焼けの赤い周波数で緑色の葉が紅葉する時、黄色に変色するメープル。

 千葉県柏市にある国立がんセンターと研究所がある。近赤外線で癌治療を行う最新医療があるが、紫外線で癌化する細胞を戻す為に、紫外線とは反対のベクトルである長い周波数でエネルギーが少ない赤外線を使って、相対的にエネルギーを中間に戻すのだそうだ。

 七色の光全てを合成すると太陽光の1ヘルツとなる。

 中間の1ヘルツである時、-のベクトルへ周波数があっても、同じ量のエネルギーを相対的な反対のベクトルへ与える事でその中和を図る事が出来る。

 重力と斥力。

 反発する力が同じ量である時に、その点は静止する。

 ゼノンの逆理。運動する矢の一瞬一瞬が静止しているのか。

 アニメの世界では小間切れの映像を移し、それを連続した流れにする。

 まるで観測者がいる時に電子運動が静止し、観測出来るが、見ていない時には雲の中にあるという、不確定性原理を壊す量子チップで形成する量子コンピューターが、ファジーな未来を予測する事が出来るように、関数グラフの4つの領域をオンとオフ、オフとオン、オンとオン、オフとオフ。まるでナーガルジュナの四句分別テトッレンマのように、空である一切。空ではない一切。一切が空であり、空でなく、空でもなく、空ででないでもない。

 四つの領域をグランドクロスとして関数が設定する原点が、地球を1999年の8月で座標固定した太陽系で、地球が原点Oとしての天動説となったのだ。

 地動説を唱えたガリレオと、地球がグランドクロスで天動説となる事を、ガリレオと同時代のノストラダムスがカトランで示した。

 4つの文章。

 4行の詩。

 肯定と否定のパターンを並列計算する量子ビットが可能性を提示する時、我々が選択する事象がどうアウトプットされるのか。

 インプットする要素に対してのアウトプット。

 常温核融合の場合、インプットしたエネルギーが等比級数的に漸増する速度が瞬間である時、そのインフレーション的な空間拡大は虚数時間を作る事は、一点を基準に、そこを完全停止状態として斥力が働かないように時空を固定しなければ、爆発的なエネルギーは周囲に均等に広がるだろうが、その時空の広がりが爆発的ではない事である程度の時空の広がりでしかない事は、元々の宇宙開闢のエネルギーがそれほど必要ではなかった事を示すだろう。

 ある一点を支点にしないとエネルギーは作用しない。

 虚数時間として時空間の運動を静止させる為に、タイムテレポートでは微分係数がもたらす次元引き下げ=微分した世界として、12次元宇宙論=ポアンカレ12面体宇宙から11次元紐理論→10次元膜理論へと微分した次元引き下げを行う時、12面体が11次元の角度欠損故に、時間が固定するつまり、時空の歪としての時空の裂け目がある時、時空が固定するなら、光が直線運動たりえる電磁波は、サイン波としての直角三角形の2分の1の微分係数を持つ時、3次元世界の微分が乗数3から1を引いた二次元の膜の上をまるで光の波動が下へ向かわないように事象平面を作るのだろう。おそらくサイン波の2分の1の微分係数は、角度欠損を生み出す領域。関数グラフでのⅹ軸マイナスで、y軸プラス領域を虚数時間としてx軸マイナス方向へ伸ばす時、スカラー電磁波としての縦型の波形をy軸に求める為に、そのイマジナリー数の虚数iの2乗が-1であるのは、直角三角形のサイン波2分の1に対する直角90度と角度60度の辺の比が1であって、その2分の1の波形が光の波動として直進する為に空間を静止させる為のセグメントとして一瞬を固定し、また波形を伸ばし、また一瞬を固定しながらその運動エネルギ-を失わないように等速運動を繰り返す波動が、フォトンエネルギーなのだろうと筆者は推測する。

 虚数時間を孕み、斥力を作りながら、そのスプリンターのクラウンチングスタートする為の器具を使ってスプリントするようにだ……。

 誰かの為のストッパー。

 暴走を止めるストッパーが火消し役だ。

 二死満塁で登場するピッチャーが打線の火を消せるのか。

 数球でいい。

 全力で投げる球か。

 魔球か。

 打線が慣れていない球種を持つピッチャー。

 速球でも落下しながら進む中、殆ど落下しないように投げる角度と球をリリースする角度と空気抵抗に逆らって上向きに回転する球筋。

 近鉄バッファローの牛と赤ヘル軍団の広島東洋カープ。

 牛が興奮する赤い色。

 赤い夕陽の西の世界。ワイン色の海がメロヴィングだが、地中海が赤い夕陽に沈む時、マグダラのマリア達が小舟で暴走政治を行う悪王から逃げる為にアフロデイーテは子供のエロスと共に海に逃げ込んだのだ。

 魚座がアフロデイーテとエロスがピンクのリボンで結ばれながら、テユポーンから逃げる為に海に飛び込んだ姿だと言う。

 美女を奪おうとする悪王から逃げた美女が、地中海を西進し、メロヴィング族の祖を生んだ。

 牛のたんぱく質と人間のたんぱく質は酷似している。

 紫外線が高エネルギーで短波としての波形で、縦に短く振動する周波数に対して、長波が赤い周波数として波形が横に延びる事。

 短い波形の電磁波が支点となって、時空が遡源しないように静止させているなら、長波から短波へ波長を変調させる時。

 太陽光が東から南天し、西へ沈む。長く、短く、長く・・・・・・。

 太平洋が海原として、ナギの状態。水面が穏やかなパシフィック・オーシャンである時、此処から日本の方向へ赤く呈色する海面を見渡し、ヘイズ中将は帽子を被り直す。


「三分前ッ!」という声がブリッジに響き渡った後で、ヘイズは、イシス碑文を脳裏に過らせた。


「過去にあるもの、今あるもの、これからあるであろうものの全て……」


 あってなきが如しの後で作り直す。

 現象の実体化……。

 電磁波が作り出すイリュウージョンは、過去に存在し、空間の狭間に残った残像のように隠れていただけ。

 その次元を引き下げられた事象を積分した時、過去の存在が実体として現出する。

 実体だった存在の周囲が亜空間と化し、その時空を未来で観測する事は、まるで未来から過去世を監視するかのように、檻の中に閉じ込めた存在を管理するかのように、カレはカレの前世を皆に知らしめないまま、自分自身の過去であると知りながら、カレを監視し続けているのだろう……。


『サタネル』と言う原子力潜水艦を送り込むヘイズ中将とUSネイビーの部下。

 この太平洋第七艦隊が行う実験が、

 過去にあったモノを確認し、

 破壊し、

 未来でその現象を実体化させようとしていたのだ……。

 過去にあったモノが実体化する事を確認する為の静止衛星と、北極から南極軸を縦型に周回する衛星。

 地軸が傾いている事で角度欠損した時空の割れ目を周回する衛星は、磁力線に沿って北上する時と、南下する時に、時空を反転させて観測するのだ。

 此岸にあって、彼岸にないモノ。

 此岸になくて、彼岸にあるモノ。

 太平洋に存在する質量は、その体積として自重を海底に掛けているのだ。

 圧力で発電する石英。水晶。

 クリスタルピラミッドとも呼ぶべき、ケイ素岩石の海底がシリコンとしての半導体が、絶縁体を挟んだ上下の半導体で高速スイッチング作用からジョセフソン素子として量子チップのようになる時、地層そのものが、隕石落下時代の地層のイリジウムを含む地層を挟む時、大地そのものが過去の堆積物、化石として存在する前に存在していたモノを実体化させる意思=石となるかもしれない。

 生きた化石がシーラカンスのように、深海でニュートリノだけを浴びて、時間を永遠に揺蕩う存在になっていたように……。








第一話 了



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