5 聖女さん達、情報交換
元々ミーシャを城へと送迎する為に馬車を用意していたらしく、私達はそれに乗りあの馬鹿も居るであろう城を目指した。
そしてその道中で私達は情報交換もおこなう。
ロイとしてもシルヴィとシズクの居た国の話を聞いて情報を入れたかったんだろうし、私達としてもこの国の外務省に動いてもらう為の交渉をこの先円滑に行う為にも、間に入ってくれそうな人間にこちらの事情を伝えておきたかった。
……とはいえ交渉もなにも、私達がアクションを起こす前に、まさしく頼みたい事をやっていたみたいなんだけどね。
「……普通占い信用してそこまで人とお金動かす?」
「俺も同じ事言ったんですよ。それでもグラン様は何も無ければそれで良いだろって」
「流石グラン。良くも悪くも思い切りが良いですわ!」
どうやら既にこの国の外務省が動いて、世界各地で起きている事について。
正確に言えば、何かが起きているのかを調べているらしい。
まだ動き始めたばかりで分かっている事は何も無いらしいけど、実質的に何もせずとも、私達の目的は達成出来ちゃったわけだ。
こうなったら私達に直接情報を回してくれなかったとしてもミーシャが、そして多分ロイ辺りは回してくれそうだしね。
だから……正直行く意味ある? って感じになりつつもある訳だよ。
まあ直接この国の外務省と協力関係を結べた方が良いに決まっているから、行く意味はあるんだろうけど。
「……とにかく、その思い切りの良さに今回は救われそうですね。アンナさん達から聞いた話を考えるに、少しでも早く事を進めた方が良いのは間違いないでしょうから」
情報交換の過程で、当然こちらからの情報も提供した。
話した範囲についてはミーシャに伝えた事と同じ位。
つまりほぼフルオープン。
流石に国に動いてもらうってなったら変な隠し事は出来ないしね。
「……しかし、そういう事か」
ふと納得したようにロイがそう呟く。
「そういう事って、何がっすか?」
「ええ、腑に落ちたんですよ。自分の占いの結果に」
「占いの結果……ですか?」
シルヴィの問いに追ロイは答える。
「グラン様がアンナさんを追放すると言い出した時、当然の事ながら内心何考えてんだこの馬鹿と俺は思いましたよ」
「アンタ腰巾着みたいなポジションの割に、内心かなり口悪いじゃん」
「あ……い、いや今のはうっかりです。うっかり」
「凄いスラスラと口に出てたっすけどね」
「気を付けないと本人の前で言っちゃいますよ」
「アンタの場合そうなったら大変でしょ。立場的にも物理的にも首吹っ飛びかねなくない?」
「いやグラン様に限ってそれは無いですね。もう実際に何度か口を滑らせてますけど、俺には良いけど他国のお偉いさんの前とかは気を付けろよって注意はされましたけど……ていうか振り返るとそれ以前も結構余計な事言っちゃってる気がする。良くクビになってないな俺……」
「……なんかアンナさんから聞いてイメージしてた王様からだいぶかけ離れて来たっすね」
「まあお友達人事で選ばれたのがロイって訳だから。身内には優しいって事なんじゃないかな」
「はははそうかもしれませんね。だとしたらその分頑張って支えないとなって思うんですけど」
そう言って笑うロイ。
……なんかこう、それでお咎めなしで窘められてるって事は、文字通り本当にお友達人事なんだろうね。
だから多分聖女のポジションがその【お友達】に入っていたら、追放とかにはさせずに穏便に事を進めたんじゃないかなって思う。
私は入っていないから、こうなった訳だ。
…………それだけか?
いやそれだけでしょ、うん。
私に過失は無いし。
「で、アンタが内心暴言吐いてたところの続きは?」
「ああ、そうですね。話が脱線してました」
そう言ってロイは軽く咳払いをしてから続ける。
「まあ俺がそう思う位なんで、あの時のグラン様の行動は中々に滅茶苦茶でした。普通ならそれは止めるべきだ。だから俺は占ったんです。その選択が吉と出るか凶と出るか。答えは分かり切ってましたが……説得材料にする為にも、何よりも自分の背を押す為にも」
ですが、とロイは言う。
「結果としては、アンナさんを追放した方がこの国どころか世界的が良い方に向かうとのものでした。こうなったら俺にはもう止める事は出来ません。背中を押してもらうはずだった占いにアームロックを掛けられた気分でしたよ」
「だから止めなかったんすか?」
「ええ。そして結果それは正しかった」
ロイはどこか安堵した表情を浮かべて言う。
「その後、俺はこの占いを元にこの世界の事を占いました。その結果グラン様が外務省の人間を動かしている訳ですが……俺の占いが正しければ、こうして動き出すより前に、この世界は大変な事になっているかもしれなかった。その起きていたかもしれなかった日が先程話して貰った、アンナさん達が解決した事件の日です」
「……確かに私が追放された方が、世界的にいい結果になるって訳か」
「結果的にそうなった訳です」
あの日私が追放された結果、皆と出会ってあの事件にも巻き込まれる事になった。
それは皆も同じなのかもしれない。
私がシルヴィと出会ったからその後ステラと出会ったし、ステラと出会っていなかったらルカ達と遭遇したあの依頼を受けていないし、それを受けて居なかったらシズクと組む事も無かったと思う。
その後も言わずもがな。
そんな感じに私だけじゃなく、私達があの一件に関わる切っ掛けになったのは、多分私があの日追放されたからだ。
……此処でもロイの占いは当たっていた訳だね。ちょっと気持ち悪い位に。
「まああんな意味分からない形で追放してきた行為は絶対肯定しないけどね」
「それで良いですよ。何度も言いますが、それは俺達が全面的に悪いんです」
そう言って苦笑いを浮かべたロイは、一拍空けてから言う。
「まあとにかく、アンナさん達はそんな世界規模の問題に今だ向き合っている最中な訳で。当然俺達が得た情報は流しますよ。仮にグラン様が駄目だと言っても……まあ言わないと思いますがね」
「……」
……なんかこうして話している内に、あの馬鹿でも流石に情報回してくれるかって思えて来たのがなんか嫌だな。普通に嫌だ。
拒否られて裏から誰かに情報流してもらう方が精神衛生上良い気がする。
……あんまりアイツのまともな部分の話を、見たく無いし聞きたく無いのかもしれない。
とにかくあの馬鹿は嫌いだからね。
周りが何言おうと。
と、そうやって情報交換とかをしている内に。
「そうこうしている内に見えてきましたね。あれがドルドット城です」
なんか色々と因縁がある古巣が見えて来た。
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