2 占い大臣、怪しまれる
私が向こうに気付いたのとほぼ同時に腰巾着もこっちに気付いたようで、驚いたような表情を浮かべた後、複雑な表情を浮かべた。
そりゃそうだよね、追放した筈の元聖女が国に戻ってきてるんだから。
そんな腰巾着にミーシャが声を掛ける。
「ただいま戻りましたわ」
「お、お帰りなさいミーシャさん」
と、ミーシャにそう言った後、こちらに視線を向ける。
「……えっと、アンナさんも」
「なんか腫れ物に触るみたいなテンションじゃん」
「い、いやぁ……そんな事無いですよハハハ……」
そう言って苦笑いする腰巾着。
「気まずさの極みって感じですね」
「まあ立場逆ならボクもああなるっすよ」
「経緯が経緯なんで同情はしませんけどね」
「そうっすね……って言いたいのは山々なんすけど、大臣って言わば王様とその下の人達との中間管理職みたいなポジションっすよね。だったら普段色々見て来たからなんかこう……大変そうだなぁって気も……」
「大臣ってそういうポジションでしたっけ?」
少し後ろでシルヴィとシズクがそんな議論を交わしているのを聞きながら、私は腰巾着に問いかける。
「で、アンタはなんでこんな所にいるの?」
「確かに。私戻って来るタイミングも何も伝えてませんのに」
「……なんかアンタ達相手だと何でも怪しく見えて来るね。なんか企んでる?」
「いや企んでない! 企んでませんよぉ! ほら、アレです。そろそろミーシャさんが戻って来るかなって占ってみたら今日のこの位の時間帯にって感じに出たんで」
「占い?」
なんか訳分かんない事言い出したよ腰巾着。
「いやいや占いって、こんなピンポイントで物事的中させられる占いなんて無いでしょ。なんか余計に怪しくなってきたんだけど! 絶対何か企んでる!」
「いや! いやいやいや! ……いやまあおっしゃる通り怪しさしか無いのは自分が一番よく分かってるんですけど……」
苦笑いを浮かべながら視線を泳がせる腰巾着から視線をミーシャに移して問いかける。
「ミーシャもそう思うよね?」
「……アンナさん。正直に申し上げると、彼の話は普通にあり得る話ですわ」
「……え?」
なんだろう、ミーシャがこの腰巾着の肩を無理矢理持つタイプだとは思えないし……マジで言ってる?
「え? ってなるのも分かりますが……一つ可能性として聞いてくださいませ」
ミーシャは思い返すように言う。
「私がアンナさんに謝りに行こうと思った時、私はあなたの位置情報を一切把握していなかった。そんな中、私に一番アンナさんが居る可能性が高い場所として挙げたのがあの国でした。移民の受け入れも盛んだからと」
「う、うん……」
まあ確かにあの国は冒険者になれば簡単に滞在する為のビザとして機能する身分証明書が手に入っちゃうちょと滅茶苦茶さがある国だし、可能性として挙げるのは分かるね。
「でもそれと占いにどんな関係が?」
「あの時彼自身にそういう意思が有ったかは分かりませんが、推測したアンナさんの居場所を口にする時よりも、移民の受け入れが盛んという根拠を述べる時の方が露骨に自信が無さげでした。その理由は根拠をその場の思い付きの後付けで用意したからではないかと思っています」
「……え、俺そんなに声のトーンとか変わってました?」
「変わってましたわ」
「えっとつまりどういう事?」
「彼は占いでアンナさんの居場所を事前に把握していたのではないか、という事です」
「……」
「……」
「……」
私はシルヴィとシズクと顔を合わせて首を傾げる。
……そんな事あるぅ?
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