5 聖女さん、飛行免許
それから私達は受付嬢さんの所に赴いて、依頼を受ける手続きをする。
細かい依頼の詳細を聞いて、そしてそれから。
「それじゃあシズクちゃんをよろしくお願いします」
受付嬢さんにそんな事を言われた後、私達はギルドを後にする。
よろしく頼まれたからちゃんと頑張らないと。
……しっかし良い職場だよねここ。
それと反比例する位、上の人が酷くて中間管理職の部長さんが死にそうになってるけど。
……で、ギルドを出た私達は、目的地へ足取りを向ける事になった訳だけど。
「ところでシズク、一つ聞いておきたい事があるんだけど」
「ん? なんすか?」
「しばらくこの国で生活してると、偶に街中をデカイ鳥とかに乗っている人とかを見たりするんだけど、小型だったら街中で飛竜に乗ったりしても大丈夫な感じ? 前回は離れた所まで移動してから乗ってたんだけど、結構その移動も煩わしいなって」
「ああ、多分リュウ君に乗ればすぐに移動できるっすからね」
シズクもここ数日のお休みの間にリュウ君と対面済みだ。
ものすごいじゃれ付いてた。やっぱり私達じゃないと死ぬかもしれない。
……まあとにかく、そんなリュウ君にこの辺から乗れれば目的地までの移動時間が一気に短くなるよねって話。
「で、どう?」
「まあ乗れる事には乗れるっすけど、その為には免許がいるっすね。普通に乗るのは緊急時以外だと取り締まりの対象になるっす」
「へぇ、免許制なんだ」
聞く前に乗ったりしなくて良かった。
「それって簡単に取れたりする?」
「んーまあ通常だと二、三週間程学校に通ってから免許センターで学科試験と実地試験を受けてって感じになるんすけど、多分アンナさんなら実技は問題ないと思うんで、いきなり免許センターで実地試験と学科試験を受けて大丈夫だと思うっす。それで受かればすぐっすよ」
「へぇ、なら今度暇なときに取りに行こうかな」
「そうしとけよ。何かと便利だろ」
「やる前から合格確実みたいなものですからね。ささっと取っちゃいましょう」
「おっと、甘く見てると足元すくわれるっすよ。軽く勉強はしといた方が良いと思うっす」
「いや大丈夫じゃね?」
「駄目っすよ。ほら、各国それぞれ交通ルールとかあるっすから」
「あーそうだ。確かにその辺は事前にしっかり確認しとかないとね」
「それに聞いた話によると、あの手の試験は結構厄介な問題がでるんすよ」
「へーどんな? 良かったら試しに出してみてよ」
「良いっすよ……じゃあ」
シズクは軽く咳払いしてから言う。
「夜間は気を付けて乗らなければならない。〇か×か」
「……厄介じゃなくない? 普通に○でしょ」
「×な訳ねえだろ危ねえし」
「暗いから気を付けて乗らないと駄目ですよね」
「さて正解は……×っす」
「「「はぁッ!?」」」
三人してそんな声を上げる。
「い、いや×な訳無いでしょ。危ないじゃん!」
「正解は夜だけでは無く昼も気を付けて乗らなければならないので×です」
「……なあ今、夜の話してたよな?」
「昼の話なんて全くしてないですよね?」
「してないっす……」
「……これ悪質な冗談って訳じゃないよね?」
「悪質な冗談みたいな厄介な事実っす……」
「えぇ……マジかぁ……」
こ、これは思った以上にちゃんと対策しないといけない気がする。
へ、屁理屈大会に打ち勝つ為の。
……まあそれは後日やる話で。
その後私達は前回の時と同じように、リュウ君に乗れる場所まで移動したのだった。
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