ex 聖女くん達VS黒装束の男(影)

 ほぼ同時刻。


「……シルヴィ、気を付けろ。多分コイツはさっきまでの連中とは格が違うぞ」


「そうみたいですね。油断せずに行きましょう」


 特殊部隊を殲滅した後、止められる事無く進んでいたステラとシルヴィは、丁度開けた空間に辿り着いた所で、別の通路から飛び出してきた男と対峙していた。


 その男は明らかに今までの雑魚とは格が違う。

 それは肌で感じ取れた。

 だから。


「前衛は俺がやる。支援頼んだ」


 この手練れ相手にシルヴィを前に出すのは得策では無いと判断した。

 前のようにサポートに回ってもらう役割分担がベストだと判断した。


「わ、分かりました」


 シルヴィも納得してくれたのか僅かに距離を取る。

 それを確認しながら、ステラは一歩前に出て構えを取った。


(そういえば前もこんな感じだったな)


 先日の山での一件。

 そこで戦った黒装束の少女相手に、ステラが前へ出てシルヴィにサポートに回ってもらった。

 あの時は結果勝てはしたものの、散々な目にあったなと思う。

 だけど違う事が一つ。


(相手は間違いなくヤバい。それでもこっちだって今なら全力を出せる)


 言ってしまえばあの時は、偶然にも徹底的にメタを張られていた感じになる。

 木々に燃え移る恐れから炎属性の魔術を封じられ、エナジードレイン対策で両手を結界で覆った結界、更にあらゆる制限が加わっていた。


 だけど今は違う。

 両手はフリーで、此処なら炎属性の魔術だって使える。

 ウォーミングアップだって済んでいて、そもそもの体調も良好。


 万全。

 言い訳の効かない最高のコンディション。


 目指すは当然理想の勝ち方。


(なんかコイツ、意識飛んでるっつーか、操られてる感じがあるんだよな。だったら尚更死なせられねえ……最低限ボコボコにする程度で無力化する)


 殺さず倒す。

 理想の勝ち方。


 そのビジョンを脳裏に浮かべて、軽くステップを踏む。

 そして数秒後。


「……」


 互いに無言のまま動き出した。

 向こうが選んだ間合いは接近戦。


 ステラにとって最高の距離感。


 まず手始めに。


(早いな……だけど負けるつもりはねえぞ)


 振り下ろされた刀を最小限の動きで交わして、そしてその過程で。


 刀を側面から拳で叩き折った。

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