ex 受付聖女、違和感に気付く

 店内に入った後は、うまくアンナ達を視界に捉える事ができ、尚且つ近すぎずバレにくいような席を確保する事が出来た。

 そして確保したならまずやるべきことをやっておく。


「とりあえず認識阻害の結界を張っとくっす」


 向こうの二人にバレにくくする為に席周辺にも認識阻害の結界を張る。

 ついでに防音機能も付与したので、観察にはもってこいの結界だ。


「これでボク達に直接掛けた魔術に重なる感じで認識阻害が掛かるっすから、そうそう気付かれないと思うっすよ」


「いやぁ、簡単に言ってくれるけど、結構とんでもない事してるよね……流石元聖女って所かな」


「……ッ!?」


 黒髪の少女が露骨に驚いたような反応を見せる。


「ああ、そりゃ驚くよね。実は……っと、シズクちゃんこれ話しても良いんだっけ?」


「ああいいっすよ。今更隠すような事でもないし」


「そっか。じゃあ改めて……こちらに居るシズクちゃんは、つい最近訳が分からない理由でお役目を解任されて国外追放喰らった元聖女でーす」


「いえーいっす」


「え、あはは…………えぇ!? そ、そうなんですね……それは……大変な目に合われたみたいで」


「そ、そうなんすよ。マジで大変な目にあっちゃって……」


 言いながら、心中で考える。


 少しだけ、違和感を感じる。


 目の前の少女は露骨に驚いていた。

 冗談を聞いたような反応じゃなく、ただ事実を受け入れて動揺して驚いていたように。


 これまで自分の素性を明かした人間は皆、最終的には信じてくれている訳だけど、まさしく聖女であるアンナやシルヴィ、そしてステラ以外の人間は皆、手放しに言われた事を信じてきた訳ではないと思う。

 信じるに至るまでの経緯に何かがある筈だ。


 例えばシエルはアンナの親友で、アンナなら聖女になってもおかしくないという事や、アンナの居た国の王ならやりかねないという認識。そして信頼感。その下地があったからこそスムーズに事を受け入れて。

 そしてそんなアンナと一緒に居たからこそ、自分達の話も理解して納得してくれているのだと思う。

 ギルドの部長や他の先輩方もそう。

 色々な事が起きて、初めて自分の言っていた事が冗談では無かったと認識してくれた。


 他のケースでも、きっと信じるに至るまでの何かがあった筈だ。

 それ位、馬鹿げた話なのだから。


「……」


 自然と、初めてアンナ達と出会った時と同じように、目の前の少女をそういう眼で見た。


 そして結論。


(……マジっすか)


 目の前の少女からは、自分達と同等の力を感じた。

 元聖女の自分達と同等の力を。

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