64 聖女さん達、エキセントリックな夜 上

 その後料理は完成させていく中で、味見部隊の二人が不定期に現れては感想を言っていく。

 二人で色々細々と作ったものの中で一番評価が高かったのは、ステラが作っていた今日のメイン料理と言っても過言ではないビーフシチュー。


「あ、これ無茶苦茶美味しいですね!」


「最高っす! エクセレント! 30点!」


「おいそれ何点満点だよ」


 多分三十点満点なんじゃないかな。

 私も味見したけど、レベルが違う感じだし。

 いや、だって店出せるよこの味。


 とまあステラの料理に完全敗北しつつも、それでも私が担当した料理も及第点には達している筈で。

 その後の夕食は普通に談笑しながら楽しく終了。

 ……うん、マジでレベルの違いを感じた。

 これが女子力って奴か。


 ……で、夕食が終わり各々シャワーを浴びて、とりあえず客室に案内する事になったんだけど、正直此処から先が皆が泊まりに来るにあたって一番心配な事となる。


「あ、昨日と部屋違うんですね?」


「昨日シルヴィに泊まってもらったのは一人部屋だから。今から案内する部屋は今日みたいに複数人来客が有った時に案内してる部屋なんだ」


「いやー、そんな部屋が当たり前にあるあたり一般住宅って感じしないっすね」


「まあ一般住宅兼、魔術の研究施設だから。来客とかも普通にあったし。といっても基本お父さんの代の話だから。私が此処を継いでからは殆ど使ってなかったんだけどね」


「なるほどな。ならそういう部屋用意されてんのも納得だわ。泊まり込みとかもありそうだしな」


「そういう事」


 うん……まあどういう風に使われていたかなんて話は本当にどうでも良いんだけど。

 ……皆、不用意にアイツの話に踏み込んでこない辺り、人間が出来てると思う。


 正直その辺はありがたいと思うよ。

 あまり人前で……あのクズの話をしたくはないから。

 恥も晒すし空気も壊れる。

 だからスルーしてもらうのが一番だよ。


 で、そんなどうでもいい事よりも、大事な事がある。


「到着。この部屋なんだけど……ステラ、シズク……気を付けてね」


「え、なんだその不穏な言葉」


「も、もしかしてなんか出るんすか?」


 うん、多分だけどとんでもないイリュージョンが見られるかもしれない。

 あれはもうなんか出たって言って良いレベルだよ。


「え、アンナさん、私は?」


 いや、だってその何かそのものだし。


「……ってもしかしてまだ寝相の話してるんですか?」


「なんだ寝相の話って」


「ああ、ステラさんは知らなかったんすか。なんかアンナさんが昨日、シルヴィさんがベッドで寝てたはずなのに本棚の上で寝てたって言ってて」


「本棚って流石にそんなやべー奴居る訳ねえだろ」


 ステラがそう言って笑う。

 ……まあいいよ、実際に見て貰えば。

 明日にはステラもシズクも私の側に立っている筈だから。

 盛大に驚くと良いよ。


 ……驚く位で住めば良いね。

 正直身の危険を感じる気がするよ。


 まあ私は自室で寝るから安全なんだけどね。


「あ、そういえばアンナさん、今日も自室の方で寝るんですか?」


「折角だしこっち来いよ。聖女やってた時の愚痴とか、話す話題尽きねえんだからさ」


「私達と寝るまでワイワイする感じでどうっすかね?」


 まずい逃げられなくなった。

 というかそれ言われたら普通にこっちに来たい……無茶苦茶愚痴とか聞いて貰いたい!

 ……よし。


「分かった。じゃあ私も今日こっちで寝ようかな」


 一緒に怪奇現象見ようか。






 ……そしてその後四人でワイワイと話して、そして皆結構疲れていたので割りと早々と就三人は眠りに付く。


「あと起きてるの……私だけか」


 頑張って起きてた。

 ……今の所シルヴィが動き出す気配は無い。

 無いんだけど……うん、このまま朝を迎えるとも思えない。

 だから何かあった時対処しないとだけど……やっば眠い。

 これはあまり長く持たな……いや、私ももう無理だ。


「うん、もうなるようになれ」 


 そして私も眠りに付いた。

 それだけ私も疲れているからね。

 限界だよおやすみ。






 そしてエキセントリックな夜が始まった。

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