31 聖女さん、ドラゴンスレイヤー
此処から先、やる事は大して変わらない。
飛ぶのでは無く、跳ぶだけ。
「っと」
こちらに対し体当たりを仕掛けて来たドラゴンに対し、スレスレの高さに飛んで躱す。
そしてドラゴンの背に蹴りを入れ、その勢いで跳躍。
蹴りを入れたドラゴンに対し風の塊を打ち込み、そして同時に私の進行方向に再び板状の結界を展開。
飛んできた数発の炎の塊を、結界を蹴って軌道を変えて躱す。
そして近くに再び足場を作り、次の標的目掛けて跳び、状況に応じて適切な攻撃を放つ。
後はこれに必要最低限、風の力を使って飛ぶ。
そんな足場から足場へ乗り継ぎながら戦う、不定期に地に(結界に)足を付けて戦うスタイル。
……うん、これなら比較的酔わない気がする。
視界はほぼ常にグルグル回ってる気はするけど、飛んでる時よりは少ないしね。
そしてそうこうしている内にもう一体。
「っらあ!」
次のドラゴンに接近し、私の足とドラゴンの間に風の塊を作り出しそしてそれを踏み抜いた。
その一撃でドラゴンは地面に向けて急落下し、私は推進力を得て急上昇。
向かう先に居たドラゴンのあごに全力のアッパーを叩き込む。
そんな感じに、順調にドラゴン達にダメージを与え数を減らしていく。
そしてドラゴンの数が減れば攻撃の密度も緩和され……結果、私がより好きに動けるようになって。
私が空に飛び立ってから大体三分程経過した頃だろうか。
「ラストオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
最後は全力で加速した状態でドラゴンの側頭部に飛び蹴りをぶちかましてフィニッシュ。
側頭部を蹴られて回転しながら落下していく最後の一体のドラゴンを、新たに作り出した結界に着地して見下ろし、倒せたと確信を持てた所で腕で汗をぬぐった。
「……とりあえず快勝だね」
多少酔って気持ち悪い以外は無傷で大勝利だ。
「お、そっちも終わったみたいだな」
声がした方を振り向くと、ステラが炎を噴出させて生まれる推進力で空を飛びこちらへと向かって来ていた。
「お疲れステラ。怪我は無い?」
「おう、無傷無傷……って、そういうアンナはなんか顔色少し悪くねえか? なんか攻撃喰らったか?」
「ちょ、ちょっと三半規管を自分で攻撃しちゃってた感じで」
「まあ遠目から見てたけど、酔ってもおかしくねえ動きしてたもんな」
言いながらステラも足元に結界を作り出し着地する。
多分だけど地上を飛び立ってから初めて飛ぶ事を止めたんじゃないかな。
「ステラはその辺大丈夫なの? 正直端から見ると私よりアクロバティックな動きしてたけど」
それも最後までずっと。
「ああ大丈夫。俺三半規管強いんだ」
「凄いなぁ……ステラの三半規管」
いや、本当に……ステラの三半規管凄いや。
「で、どうする? いつまでもこんな所にいる必要もねえ訳だし、アンナの調子が大丈夫そうならもう下りるか?」
「あ、私は大丈夫。ほんと軽く酔っただけだしもうほぼ治ってるから」
というか動けない程重症になってたらまともに戦えてないし、そもそもこんな戦い方してない。
「じゃあ行こう。シルヴィ達が待ってるしな」
「そうだね」
と、その場から飛び立とうとした所で私もステラもギリギリになって踏み止まる。
「ちょ、ちょっと慎重に下りようか」
「だ、だな。今俺達結構な自殺行為しようとしてたよな」
私達二人は苦笑いを浮かべて慎重に。
一応ある程度の距離を取ってゆっくりと地上へ降りていく。
……私の風の魔術とステラの炎の魔術。
お互いしっかりコントロールしてるつもりだから大丈夫だと思うけど……まあ、万が一干渉でもしようものなら、今日一番のシャレにならないダメージを負うかもしれなかった。
三人で魔物の群と戦った時に発生した火災旋風の地獄絵図はまだ脳裏に焼き付いてるし……いや、ほんと危ないね。
……まあとにかく、無事ドラゴン退治は終了だ。
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