24 聖女さん達、物理で殴る

 まず先陣を切ったのは私だった。

 足元に風の塊を作り出してそれを踏み抜き加速。

 接近してきていた一体の魔物に対し、こちらから急接近する。


 視界の先に居たのは、棍棒を手にした赤い体をしたオーガだ。

 具体的にどういうオーガなのかは分からないけど、こんな場所に生息しているんだから相当強い奴なのだろうと思う。

 実際動きも早いと思うよ……ある程度は。


「っらあッ!」


 だけどある程度のスピードじゃ、接近して顔面に拳を叩き込んで地面に沈めるのになんの支障も無い。

 そして加速した勢いも全て載せた拳を叩き込んだ私は滑るように地面に着地する。


「よし決まった!」


 そしてそのまま体を捻って二人の方に視線を向ける。


 まず最初に視界に入ったのは拳を握りしめて突っ込んでいくステラと、そのステラを迎撃するように棍棒を振り上げるオーガその2。

 その棍棒を……ステラは左手の甲で勢いよく叩き折った。

 そして放たれる鳩尾目掛けた右ストレート。


「っしゃあ!」


 ステラに鳩尾を殴られたオーガは凄い勢いで弾き飛ばされていく。

 まず間違いなく向うもワンパンで終わらせているだろう。

 ……で、それだけでは終わっていない。


 空中に舞っていた棍棒の残骸。

 それをキャッチしたステラはそのまま流れるように投擲モーションに入る。


「せーの!」


 そうして棍棒の残骸は轟音を流しながら、同じく接近してきていたゴーレムの胴体を貫通して完全に沈黙させる。


「よっしゃ当たった!」


「うわ、すっご……」


 ひ、人の事言えないけど戦い方がワイルドだ……でもそれが凄い似合う!


 そして次はシルヴィ。

 シルヴィの元には高速で動くドス黒い色をした球体型のスライムが接近していて、全身に結界を纏って体当たりを仕掛けている。

 速度もそうだし、端から見ただけでも中々の強度の結界を纏っている事は分かる。

 並みの冒険者なら速度に翻弄されながら、その速さと結界の硬度の乗った、力強く鈍器で殴られるような一撃でやられてしまうかもしれない。

 でもまあ、そこに居るのがシルヴィなら何の心配も無い。


「えい!」


 体当たりを仕掛けてきたスライムに合わせるように、シルヴィは棒状の結界を振り抜く。

 そして次の瞬間、スライムの結界が砕ける破砕音が響き渡り……スライムは特大アーチを描いて飛んでいった。


「あー飛び過ぎて倒せたかどうか分かんないですねこれ」


 ……飛び過ぎたから倒せていると思うよ、うん。


 だから気にせず……次に行こうよ。


「よし、ラストスパート」


 残りは目視できるのが二体。

 後姿を消してるけど、普通に居るのが分かってる奴が一体。


 楽勝!

 15秒で片付ける!




 ……とは思ったけど、そんなに時間いらなかったな。


「これで最後!」


 シルヴィとステラが一体ずつ倒し、私が姿を消しているつもりの黒いガイコツをバラバラにする。

 それまで掛かった時間は5秒。


 それだけあれば十分だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る