6 聖女さんと聖女ちゃん

 私が思わずその女の子の事をまじまじと見つめてしまっていると、その子は私の視線に気付いたようで、歩み寄り話しかけてきた。


「あの……どうかしましたか?」


「あ、いや! なんでもないよなんでも!」


 思わず慌ててそんな事を言う私。

 冷静に考えれば私のやっていた事は人によっては結構不快だ。

 少なくとも私はジロジロ見られたくない。


「な、なんでもない事無いですよね……お姉さん、さっき凄い顔してましたよ」


「それは……」


「お、教えてください! おかしい所あったら直しますから!」


 ……あ、何でもないんですねって感じに終わらないんだ。

 無茶苦茶ぐいぐい追及してくるこの子……。


 ……結構露骨に。

 どこか必死に。


 なんだろう……なんか心配になってきた。


「えーっと、質問を質問で返すような事言って悪いんだけどさ……なんかあった?」


「いや、えーっと……何も……」


 私から目を反らして彼女はそう言う。

 あーこれ完全に何かある奴だ。


 でも教えてくれそうな雰囲気ではなくて。

 明らかにこれはトラブル抱え込んじゃってるような。

 気付いた誰かが何とかしてあげないと駄目な奴な気がして。


 ……とはいえ、無理に聞き出すのもちょっとね。

 だからとにかく、話を聞きだすのは断念。


「あーまあ話しにくいんだったら別に言わなくても良いよ」


「あ、ありがとうございます……」


 なんか感謝された。


「それで、その……さっきは何で私の事ジロジロと見てたんですか?」


 ……その話は続けるんだ。

 まあ別に隠すような話でもないかな。

 このまま誤魔化して去ると、この子の中でジロジロ見てきたヤバイ人扱いで終わっちゃう気がするし、うん、話そう。


「いや、ただあなた明らかにFランクの冒険者の強さじゃないなって思って。気になってさ」


「分かるんですか? 戦いを見た訳じゃないのに」


「その反応は当たりだね。うん、分かるんだ。まあ冒険者としては駆け出しのFランクだけど、私数時間前まで隣の国で聖女やってたからね。色々オーバースペックなんだ」


 自画自賛。

 若干ドヤる私。

 そんな私に彼女は聞いて来る。


「数時間前までって……や、止めちゃったんですか?」


 まあ至極当然の疑問だと思う。

 そしてその疑問の答えも隠すような事じゃない。

 私に過失があった訳でもないし……正直初対面の誰かと打ち解けるには丁度良い位の笑い話だと思う。

 だから私は笑い話をする事にした訳だが――


「いや、あの馬鹿……いや、ウチの国の王様に無理矢理クビにされて国外追放喰らっちゃってね。いやーもう無茶苦茶だよウチの所の馬鹿は――」


「お、同じです!」


「……はい?」


「わ、私もお昼まで別の国で聖女をやってて……色々あって追放されて此処に……」


「え、えぇ……」


 ――笑い話にとんでもない食い付き方をしてきた。

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