3 聖女さんと飛竜
王国を出た私が向かう事にしたのは、隣国の王都だ。
その隣国が貿易が盛んな国で人の出入りも多く移民の受け入れも比較的寛大なので、追放された私が最初の目的地として設定するのは無難で間違ってはいないだろう。
そして……まあ移民でも勤めやすいからという理由もあるのだろうけど、冒険者という職業が盛んなのだから、冒険者でもやろうと考えた私にとっては絶好な場所なんだ。
そんな訳で陸路徒歩になるけれど目指せ隣国……なんてやってられる訳がなくて。
流石に徒歩では遠い。
だけど馬車などを利用するのはお金が勿体ない。
だから私は飛んで行こうと思う。
「リュウ君おいで!」
私は自宅の前でポンと手を叩く。
すると頭上に魔方陣が展開され……出現したのは人数人を乗せられる程度の小型の黒い飛竜のリュウ君。
召喚獣……私の家族である。
「よーしよしよし。あんまり激しくじゃれ付かないの。私じゃなきゃ死んでるぞー」
出て来て早々じゃれ付いて来るリュウ君を撫でながらそう言う。
……うん、やっぱり人前で出せないなリュウ君。
冗談抜きで死人が出るよ……それこそ私と同じかそれ以上の強さの人の前じゃないと出せない。
「さてさてリュウ君。早速だけどちょっと隣の国まで乗せてって欲しいんだ」
「……?」
リュウ君はそれまたどうしてという風に首を傾げる。
「いやあ、あの馬鹿な王様にこの国を追放されちゃってさ私……ってストップストップリュウ君! 王様殺しに行こうとしないの!」
明らかに城に向かって飛び立とうとするリュウ君を必死に宥める。
これでリュウ君が王様ぶっ殺したら私が人殺しになるじゃん!
でも私の事考えて動こうとしてくれた! 嬉しい! そういう所ほんと好き!
……と、とにかく。
「リュウ君とりあえずさ! とりあえず今は隣国へ飛んでよ……多分態々リュウ君が手を下さなくてもさ、馬鹿な事してる報いはちゃんと受けるから」
「……」
リュウ君は一応納得してくれたようで、私を背中に乗せる為に体勢を低くしてくれる。
私はそんなリュウ君の背中に乗った。
「じゃあよろしく頼むよ、リュウ君」
私がそう言うとリュウ君は翼を羽ばたかせ、空へと舞い上がった。
馬車よりも何よりも、多分これが一番早いと思います。
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